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08年11月18日
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まちづくり対策特別委員会で行政視察…報告その1・青森市編

 12日から3日間、市議会まちづくり対策特別委員会の行政視察で東北地方の3市を訪問しました。初日は北上し青森市で「コンパクトシティの形成と中心市街地活性化への取り組み」と「青森新幹線開通に伴う並行在来線の対策と課題」を、2日目は南下し盛岡市では「盛岡駅西口地区土地区画整理事業・西口再開発の状況」、そして3日目は仙台市で「公共交通アクセス30分構想」と「仙台駅周辺の地区の交通環境づくり」をテーマに勉強してきました。
 歩いて暮らせるコンパクトなまちづくり、地域公共交通の維持活性化、駅前再開発、新幹線に伴う並行在来線の維持存続など、長野市にとっても喫緊の課題となっている事柄がテーマで、都市規模が違うものの、それぞれ大いに参考となる視察となりました。3回にわたって視察の報告をします。まずは青森市編です。11/15付の徒然日記も参考までに。

■コンパクトシティの国土交通省・先進モデルである青森市
人口31万の中核市となった青森市の、毎年20億円を超える除排雪経費の圧縮に端を発したコンパクトシティづくりと中心市街地活性化は国交省のモデルとされ広く紹介されている。

市街地が郊外へ低密度に拡大し、市街地のドーナツ化が進む中、これを転換、抑制するために、市内をインナー地区(2,000ha、既存ストックを活用し市街地を再構築する地域)・ミッド地区(3,000ha、良質な宅地供給を行う地域)・アウター地区(64,000ha、原則として開発を認めず、自然環境・営農環境の保全を進める地域)と3つのゾーンに分け、居住地空間の再集積を図るとする都市整備の理念は、「青森方式」といえる。自然に左右される除排雪経費の圧縮や居住地の再集積はまだまだ途上の様だ。住宅地を再集積するための対応は、土地利用を柱とする都市計画上のコントロールのみで、住宅整備に向けた具体的な誘導策は未確立とされる。無秩序な宅地開発の拡大をコントロールするには、住宅の移転・集中に対する誘導策(例えば富山市のJR駅周辺への住宅建設補助金制度など)が必要であると考えるところだ。【写真上は青森駅前の様子、総合交通ターミナルとして整備を予定する。今は青森市営バスとタクシーの単純なプールとなっている】

■目玉の再開発ビル・アウガで、市が借金肩代わり…厳しい経営

中心市街地活性化計画の目玉、拠点施設として、図書館や男女共同参画プラザなど公共施設を移転させ、建設された「駅前再開発ビル・アウガ」(9階建て)は、総事業費185億円(市費85億)を投入した施設である。年間600万人以上が訪問し、街の活性化に大きく貢献しているものの、商業テナント部門が不振で、ビルを経営する第三セクターが債務超過に陥る恐れから、市が約8億5千万円を投入し、借金を肩代わりする事業再建を図ることになったそうだ。活性化のもう一つの目玉であり「まちなか居住の推進策」として整備された、ケアハウス併設の高齢者マンション・ミッドライフタワーは、1年を経たずに107戸すべて完売したそうである。【写真右・青森駅前で、手前のビルが高齢者マンション、中央奥にアウガ(わかりづらいですが)】中心市街地での「まちなか居住」は進んだものの、郊外の大型ショッピングセンター進出で商店街再興の兆しはかなり厳しいものがあるようだ。メインの駅前通りではシャッターを閉めた店舗が目につく。また、新規商業者の育成や賑わいの回復を目的とした「パサージュ広場」を見学。空き地の活用策の一つで、隣接してホテルが開業したことから、当初の狙いは進んでいるようだ。市街地商店街の活性化、拠点施設の賑わいの回復、新たな市費投入の問題は、長野市のトイーゴやパティオ大門に共通する課題だ。【写真下はパサージュ広場】
   

■「街なか住み替え支援事業」は注目していい事業

新しい活性化計画のもとで、注目する施策は「まちなかホット・ぶらっと推進事業」(撤退したホテルを活用して、立体駐車場に温浴施設を併設、居住者の交流拠点化を図るもので2010年開業を目指す)と「街なか住み替え支援事業」(高齢者が郊外に所有する住宅を借り上げ、子育て世帯などに安価で貸し出すシステムづくり)だ。私としては後者の事業に関心がある。国の「居住住み替え推進機構」の協力を得て、行政としてマッチングを考えようというものだ。事業化はこれからだそうで、具体化の様子をフォローしたい施策である。

■並行在来線「青い森鉄道」の将来は?

H22年12月の八戸駅から新青森駅までの新幹線開通に伴う並行在来線対策は、まさに青森方式で「上下分離方式」(レールは県がJRから取得・保守をし、電車の運行管理は三セクが行うとするもの)にある。しかも新幹線駅は「新青森駅」で現在の青森駅から4キロ離れていて、この間はJRの運行となる。問題は八戸~青森間のJRからの鉄道資産の取得で、県は無償譲渡を求めているが、JRは簿価での引き渡しを想定しているようだ。長野以北問題を抱える長野県・長野市にとっては、自治体にとって財政負担の少ない良い前例を作ってもらいたいと願うところだ。

青森県や沿線市町村が主体となって三セク「青い森鉄道株式会社」(現在、岩手県境にある「目時駅」から「八戸駅」間26キロを営業、実質的に岩手県の三セク・いわて銀河鉄道線が乗り入れ)をすでに立ち上げているが、県が80%近く出資し、全線開通後(八戸~青森間96キロ)も三セクの鉄道使用料を減免し、今の試算では約16億円を毎年見込む形の基本スキームを作っている。将来輸送密度では開業時で1915人、開業30年後で1097人と極めて厳しい状況で、基本スキームも運賃を1.39倍に値上げすることを見込んでいる。三つの新駅設置や青森駅におけるJR接続列車との対面ホーム乗り換え、路線バスネットワークとのシームレス化などを経営計画に盛り込んでいるが、どれだけの収支改善につながるかは未知数と言える。

■在来線存続…県の存在感が鍵

長野県は103億円の債権を放棄し、「しなの鉄道」への実質的な財政支援を行っているが、「上下分離方式」でスタートしている「青い森鉄道」に対する青森県の「上」「下」それぞれの出資率は80%近いものがある。いずれにせよ、JRの鉄道資産の譲渡方法がキーポイントだ。しなの鉄道を抱える長野県・長野市にとってはターニングポイントとなるのが「青森方式」であろう。青森県の三セク会社への支援は、長野県にも見習ってもらいたいところでもある。これはこれからの課題だ。 (次回は盛岡市編)

    


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