2008年11月17日
長野県知事 村 井 仁 様
県危機管理部長 松 本 有 司 様
長野県憲法擁護連合[県護憲連合]
代表委員 清 水 勇
国及び長野市と共同で実施する
国民保護実動訓練の中止を求める申し入れ
国民保護法第42条及び長野県国民保護計画に基づき、国及び長野市と共同で、国民保護実動訓練が26日に予定されています。
武装グループ・テロリストによる化学剤散布という「緊急対処事態」を想定した訓練は、「武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する行為が発生した事態」(国民保護法)に対応する訓練であり、国民保護法の根拠法である「武力攻撃事態対処法」に照らせば、住民の避難・誘導を主たる目的としているといえども、「戦争」または「戦争に準ずる事態」に対応する「軍事訓練」に他ならないと考えます。
そもそも「テロ」は犯罪であり武力行使及び戦争行為ではないとされる国際法上の常識を逸脱し、「9.11テロ」を戦争行為とみなし「対テロ戦争」を正当化し戦争を継続する米国の世界軍事戦略に追随し制定されてきた一連の有事法制を根拠とする「訓練」です。「対テロ戦争」時代における人為的な戦争被害を「武力攻撃災害」または「テロ災害」と読み替え、あたかも自然災害に対する防災訓練と同義語であるかのように県民に周知し、軍事訓練であることの本質を覆い隠すことは許されないといわなければなりません。
災害対策基本法における自治体の役割・責務とは異なり、基本的に国の判断が最優先される「国民保護法」のもとでは、一連の有事法制の基本法である武力攻撃事態対処法が「武力攻撃が発生した場合には、これを排除しつつ、その速やかな終結を図ること」(法3条)を目的とする以上、侵害排除が優先され、国民の生命及び身体、財産の保護はないがしろにされかねない、基本的人権の侵害に及ぶ深刻な矛盾をはらんでいることは、日弁連をはじめとする法専門家からも指摘されているところです。住民の生命及び身体、財産の保護に責務を持つ自治体としては、国民保護法がその名称とは裏腹に「国家の安全」を「国民の安全」に原理的に優先させるように制度設計されていることに無頓着であってはならないと考えます。
「対テロ戦争」下にあるイラクやアフガニスタンの今日の現実が、このことを明白に証左しています。
私たちは、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とした我が国の最高法規である日本国憲法の理念に照らし、今次の「国民保護実動訓練」は「対テロ戦争」を想定した「軍事訓練」に他ならず、武力の行使、県民の安全を真に確保し保障するものとならないことから、訓練は必要ないと考えます。
県及び長野市が公募した参加住民は、最大規模を意図したものの予想を大きく下回ることになりました。県民・市民の良識の現れであると思います。県民の声なき声、静かなる「拒否」に謙虚に向かわれ、民意に基づいた行政執行に心を砕かれることを切に求めつつ、国民保護実動訓練について、下記事項により誠意ある対応をとられるよう要請します。
記
1.「県国民保護計画」の基本理念に盛り込まれた「…武力攻撃事態等について、わが国の平和と国民の安全を確保するには、政府の平常時からの不断の外交努力により、これらの発生を未然に防ぐことが何よりも重要である…」との認識に基づき、「国家の安全」を優先する「軍事訓練」となる国民保護実動訓練を中止されたい。
2.「訓練」参加住民の予想を下回る結果について、その要因及び評価、いかなる民意の表れと考えるかを明らかにされたい。
3.「大規模テロ」「対テロ戦争」を想定する「緊急対処事態」において、県知事が要請する自衛隊出動は、治安出動にあたるのか、警護出動にあたるのか、自衛隊法に基づき、その根拠を明らかにされたい。
4.自発的意思のもとに参加するとされる住民の安全、指定地方公共機関等における業務上の安全をどのように確保されるのかを明らかにされるともに、自発的意思の名のもとに基本的人権が侵害されることのないよう厳格に対応されたい。
5.JR長野駅周辺300メートルを立ち入り禁止区域とする設定の実効性はどのように確保されるのか、通勤・通学をはじめとする市民の安全確保はどのように行われるのか、明らかにされたい。
以 上
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