17日、長野市議会の最終日、第一庁舎と市民会館の建て替えの賛否を問う住民投票条例案の採択が行われ、私たちが議員提案してきた住民投票条例案は起立投票の結果、反対21票、賛成18票の3票差の僅差で否決されました。直接請求された条例案は、反対31、賛成8でともに否決されました。
極めて残念な結果です。僅差での否決には悔しい想いが募ります。しかし、これで「終わり」にしてはなりません。民意に基づく市政の実現に向け、議会が負わなければならない責任は、今まで以上に重くなっているということです。議会への厳しい視線に向き合い、市民の信頼を取り戻していかなければなりません。
否決されたものの、私たちの条例案に賛同いただいた、共産党、公明党、無所属議員の皆さんに心から感謝します。
議員提案の住民投票条例案を不採択とした総務委員長報告に反対討論をしました。最大会派である新友会の議員の心を動かしたかったのですが、適いませんでした。発言内容を掲載します。
《反対討論》
23番、市民ネットの布目裕喜雄です。
議会第14号「第一庁舎・長野市民会館建設基本計画に基づく建て替えに関する住民投票条例案」を不採択とした総務委員長報告に、かかる条例案を発議し議員提案した一人として、「反対」の立場で討論します。
さて、議案第75号、市民から直接請求された「市役所第一庁舎・長野市民会館の建て替えの是非を問う住民投票条例案」について、これを不採択とする委員長報告に賛成はしました。しかし、住民投票は必要ないとの考えに与するものではありません。
住民投票案を実施し、市民の市政参画を促進するという基本的な考えに立ち、今日的な民意の集約または反映という観点から、一つに、それぞれ役割の違う施設である第一庁舎と市民会館を、別々に賛否を問う形が望ましいこと、二つに、市民に対し十分な周知期間を設定すること、三つに成立要件を定めるとともに、不成立の場合でも開票し結果を告示することなど、新たな視点から、別議案として提案したものです。
直接請求条例に対し、修正も考えました。修正は議会の権能として可能ではありますが、事の発端が市民の直接請求運動であることに鑑み、条例の骨格の修正は議会の越権行為となるのではないかとの判断から、議員提案に至ったことを申し添えておきます。
さて、委員長報告では、不採択とする理由として、「両施設の建て替えは3年間議論し、市民の意見を聞き、議会で決めてきたこと。二度も議決していることを否定することになる」「住民投票を行う基盤整備ができているのか不安、自治基本条例の制定を検討する中で慎重に考える必要がある」「合併特例債は予定通り交付されるはずで、景気対策からも必要」などの意見があったとされました。
まず申し上げたい。不採択とされる議員には、市民の権利行使である直接請求、そして住民投票にマイナス志向の予断と偏見があるのではないでしょうか。「直接請求は建て替え反対のために行われた運動である」とか、「議会の議決を否定することになる」とかの間違った認識を持ってはいないかということです。
住民投票を求める直接請求の運動は、「130億円もの巨額な資金を投入する大規模事業に対し、行政や議会からの情報提供がなお不十分であり、しっかりとした情報提供の元に市民が判断し、政策決定に参画させてもらいたい」というのが主旨です。建て替えに反対するための住民投票ではありません。
住民投票を実施するか否かは、住民投票という市民参画の手法を用いて、市民の意見を聞くか否かにあります。この単純明快な市民の求めに、議会は真摯に誠実に向き合うことがまず必要であると思います。
「議会で既に決めたことだから、もう市民の意見を聞く必要はない」とする姿勢は、余りに傲慢なのではないでしょうか。市民の議会に対する信頼を自ら瓦解させることにつながってしまうことを憂慮します。
総務委員会では、事実誤認に基づく発言が撤回、取り消され、発言者から謝罪があったとされます。発言そのものがなかったと言うことになるため、ここでは、これ以上言及しませんが、事実誤認に基づく間違った認識で、住民投票への態度をミスリードされているということはないのでしょうか。最大会派を構成する所属議員の皆さんに問いたいと思うのです。
なぜなら、発言を撤回することになった当該議員は、「住民投票制度は否定しない。常設型住民投票条例の検討は必要」と発言する一方で、「住民投票は大衆迎合」とも発言しました。ダブルスタンダード、二枚舌ともいうべき不見識な姿勢・発言は、一議員の発言にとどまらず、市議会全体の資質が問われる問題発言といっても過言ではないでしょう。
改めるべきは改める、考え直すべきは考え直す、ここから出発しようではありませんか。
次に、「議会で決めたことだから」との不採択趣旨について申し上げたいと思います。議会で一度決めたことは絶対であるとの認識は共有できません。3月11日の大震災を受けて、今後の巨額な復興財源の有り様を考え、「見直すべきは見直す」とすることが、行政を監視・チェックする議会の役割であると考えるからです。3.11は市民にとって、この国の形、地方自治体の形について、見つめなおし考え直す、ターニングポイントとなっています。私たちにとっても同様です。
合併特例債は制限がかからないかもしれません。しかし、向こう10年間で8つの大規模プロジェクトに950億円もの巨額資金の投入が必要とされる中、限りある財源を有効に活用することを考えざるを得なくなることは、自明の理ではないでしょうか。
社会保障をはじめ市民生活に直結する行政サービスは守らなければなりません。将来を見据え、市民にとっての必要度・優先度を吟味し直し、臨機応変に、かつ柔軟に対応することこそ、市民が求めている議会の姿ではないでしょうか。既定方針の見直しに取り掛かる度量の深さを持ち合いたいと思います。
住民投票は、市民合意を形成、確認する観点から、市長と議会の二元代表制を補完するものです。そして、議会としては、直接請求による市民の政策決定への直接参画の機会を保障する責務があります。「市民が主役となるまちづくり」を体現するために、市民の市政参画を促進し、市民の信頼に裏打ちされた安定性の高い政策の決定や実施につなげていこうではありませんか。
以上、議員の良識ある判断を心から願い、議会第14号の住民投票条例案を不採択とした総務委員長報告に反対討論とします。ぜひとも住民投票を実現しましょうと訴え、討論を終わります。