廃止を決めた長野電鉄屋代線のH22年度の利用者数は49万8,397人で、H21年度の45万3,752人に比べ、4万4,645人が増加しました。対前年度比109.8%でおよそ1割の利用者増が図れたことになります。今日開かれた市議会の公共交通対策特別委員会で明らかになりました。
昨年7月から9月の実証実験による増加に加え、沿線の7つの高校の生徒が92人増えたこと、信州デスティネーションキャンペーンによる観光客の増(松代駅では119.1%、約2割の増加となっています)、大雪等による天候が増加の要因と考えられるとしています。
屋代線の再生をめざした総合連携計画ではH24年度までの3年間で60万人の目標を設定していました。今後、高校生の利用増、屋代線を利用した観光誘客などサービス水準の向上と利用促進施策の展開によって、60万人を達成する可能性は否定できません。簡単に達成できるとは思いませんが、鉄路存続の可能性を検討する余地は大いに残っていると考えるものです。
今日の特別委は、4月28日に開かれた「長野電鉄活性化協議会」で決めた総合連携計画の変更、すなわちバス代替の運行を具体的に検討する「長野電鉄屋代線沿線地域総合連携計画」の説明でしたが、今なお鉄路としての存続を考える余地はないのかとする沿線住民との溝、さらには特別委員会の議論との隔たりをどのように認識しどのように解消するのか、入り口の議論にほとんどを費やすことになりました。
行政側はバス代替の検討にあたり「沿線住民との溝は浅くなっており、バス代替について基本的に賛同を得ている」との認識を示すとともに「廃止決定をした法定協議会の議論を遡って議論することはできない。バス代替運行に向け、前に進むしかない」と強調しました。また、協議の進め方については「強引に進めるつもりはない。沿線住民の意見を十分に聞き対応したい」とし、5月中の立ち上げをめざす4地区ごとの「作業部会」、それらを取りまとめる「沿線地域連絡調整部会」の協議に臨みたいとしました。
「沿線住民との溝は浅くなっている」との認識で協議に臨むこと自体が「甘い」といわなければなりません。確かに沿線住民の間では「もうバス代替でも仕方がない」との諦めが広がっていることは否定しません。とはいえ、行政への根深い不信感はくすぶり続けています。沿線住民とひざを突き合わせて十分協議する、その本気度が鋭く問われています。作業部会という限られたメンバーの協議だけでなく、沿線住民、利用者を対象とする説明会や意見交換会にしっかり取り組むことが不可欠です。
特別委員会の全体的な空気は、廃止に至る経過で十分な検証・検討が行われたのかという疑念が一向に晴れない中、沿線住民の3万2500人の存続署名を重く受け止め、鉄路の存続に向けなお検討すべきとの意見が根強く残っているとともに、バス代替の具体な検討に入るにしても、沿線住民との合意形成に行政はもっと心を砕くべきであるとの意見が支配的です。キーワードは「住民合意」です。
28日のブログにも記しましたが、バス代替の運行計画の検討は、避けて通れないでしょう。だからと言って、議会側も粛々とバス代替の議論に入っていくことには抵抗があります。ほぼ50万人の利用者達成という実績をどう評価し、どう次につなげていくのか、まだまだ検討する価値があると思うからです。
鉄路を残す道を考えると、三セクであれ別会社であれ、長野電鉄が保有する鉄道資産を無償で継承することが必須の条件となります。この点をクリアーする道を模索する必要があります。同時に、住民ニーズに応えられる代替バスによる公共交通網の在り方も考えざるを得ない局面を迎えていると思います。
ところで、長野電鉄の屋代線廃止届に伴い、沿線住民など利害関係者の意見聴取が告示されたことを受け、松代・若穂両住民自治協では意見聴取を申し出ました。長野市も「廃止までの期間を短縮しない」よう申し出たとのことです。国交省北陸信越運輸局は5月24日に長野市内で意見聴取を行います。
この意見聴取については、来年4月1日の廃止日が短縮されないよう、私からも両住民自治協に意見聴取を申し出るよう働きかけてきました。これで廃止日が繰り上げられることはほぼありません。これからの1年間、鉄道・バスを活用した持続可能な公共交通の存続・再生・活性化を多角的に考え、住民の足を守る1年にしたいものです。
コメント
今から3セクの設立は困難でしょうが、和歌山市みたいに引き受け会社を公募されてはいかがですか?