阿部県知事に、地震災害対応と原発災害対応について社民党として要請を行いました。知事は原発災害に対して「想定外の災害であり、体制的に弱い部分がある」としたうえで「国と連携し、できることはすべて実施したい」と述べました。また防災計画に原発事故災害対応を盛り込む点については、「課題を洗い出し、検討する必要がある」としました。要請は以下の通りです。
長野県知事 阿 部 守 一 様
社会民主党長野県連合 代表 竹 内 久 幸
東北関東大震災、県北部地震災害への復興支援及び緊急の放射能対策と原子力防災対策の拡充について
未曽有の東北関東大地震から丸1週間、犠牲者の方々に心からの哀悼の意を表するとともに被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。既に県においては、東北関東大地震及び県北部地震にあたり、住民の生命と安全を守るため、緊急支援及び災害復興など災害対策に尽力されていることに敬意を表します。
私たちも、12日に県連合内に「東日本大震災対策本部」を設置し、県北部地震に際し現地対策本部での被災状況の調査をはじめ、緊急に必要とされる支援活動に取り組んでいるところです。
ついては、東北関東大地震災害及び県北部地震災害に対する喫緊の課題、とりわけ緊急の放射能被害対策等について、下記事項を要請します。貴職の速やかな対応と尽力を求めるものです。
記
1.県北部地震災害に対する支援について
(1)ライフラインの復旧及び水・食料・衣類・医薬品・暖房・燃料など被災地住民が必要とする生活必需品の供給に全力をあげること。
(2)余震が終息しない中、長期にわたる避難生活を強いられる住民の健康維持のため、医療スタッフ等を派遣し、健康管理・維持に万全の態勢をつくること。
(3)避難住民の安息のため、安全な地区への一時的な集団「避難」を早期に具体化すること。
2.東北関東大震災に対する支援について
(1)政府及び関係機関、県内自治体及び県内企業、さらに中部電力等と一体となった災害支援、復興支援に最大限の取り組みを具体化されること。
(2)緊急支援物資の確保と輸送、災害ボランティアの派遣等について、県が窓口となり一体的な取り組みを促進すること。
(3)高齢者及び疾病者、生活困難な被災者に、公営住宅、雇用促進住宅等を提供し、早期に県内受け入れを開始すること。その際、県内医療機関との連携を十分に行うこと。
(4)東北地方への集中支援、また県民の生活物資買い置き行動の自粛を促すことを前提にしつつも、県民生活の安定に向け、食料や燃料等をはじめとする生活必需品の安定供給について、十分な情報伝達を行うとともに、政府に対し必要な措置を求めること。
(5)被災地域内の県内企業関連事業所の被災現況に対する調査を実施し、操業停止・閉鎖の場合の失業給付について、県内職安で開始できるよう労働局に求めること。
3.緊急の放射能対策と原子力防災対策の拡充について
東北関東大震災の巨大な地震エネルギーと津波に襲われた福島第一原子力発電所では現在、冷却装置の機能や電源、冷却水などが失われ、放射性物質が大気中に放出され続けている。最悪の事態に至らないようにあらゆる対策が強力にすすめられ、沈静化することを祈るばかりである。
この原発事故は、想定していた地震をはるかに超え、巨大津波が原発施設を襲ったため、万が一でも起こらないとしてきた事態が現実となってしまった。今後の日本の原発や原子力防災のあり方について根源的な課題を投げかけたものと言える。
今回のような大規模な原発事故の場合、きわめて広範囲に影響がでることが証明された。長野県には原子力関連施設は存在しないが、新潟県の柏崎・刈羽原発から長野県境まで約40km、静岡県の浜岡原発から約70kmしかなく、いったん大事故が生じれば、その被害は確実に長野県までおよぶことは明白である。
当面する緊急対策と、“万が一”の事態に備えた県行政としての原子力防災対策の確立が求められている。よって、以下の点について対応されたい。
(1)福島第一原発で進行している事故が最悪の事態となり、県内に放射性物質が大量に飛散するケースを想定して緊急の対策を取られたい。
① 県として緊急にヨウ素剤を大量購入し、関係市町村、保育所・幼稚園、小中学校、高校、 大学などの関係機関へ配布すること。
② 大気中の放射線量のモニタリングはすでに実施されているところであるが、長野市の県環境保全研究所を中心に、より広域的なモニタリングへ拡大するとともに、常時、情報を県民に提供できる体制を緊急につくること。
③ 県内の市町村、住民への緊急連絡体制を確立すること。また、東京電力と協議のうえ、東電から県担当部局への直接の連絡体制をつくること。新潟県・静岡県など、近隣の地方自治体とも緊急の連絡体制を確立すること。
④ 放射能による被ばくを避けるための対処方法を県民に周知徹底すること。
⑤ 県民の退避計画の立案、被ばくした人々へのスクリーニング・除染などの救急・医療体制を確立すること。
⑥ 原子力発電に詳しい県内の学者・知識人との協議・連携体制をつくること。
(2)原子力防災対策は、国の基準では原子力発電から8~10kmに限定しているが、今回の事態を受け、県の地域防災計画の中に、現行の「放射性物質事故災害等対策指針」を「原子力編」として組み入れること。その際、近県での原子力発電の大規模事故を想定した内容に変更すること。