 長野県の消防広域化方針に沿って、東北信レベルの広域化が検討されてきましたが、事実上、これを断念し、「できる地域から広域化を」との方針のもと、現在、北信地域の５つの消防本部の広域化が検討されています。
広域化にあたっての基本的な考え方では、「住民サービスの向上が図れる広域化」「住民の理解が得られる広域化」「職員の士気の高揚が図れる広域化」をめざすとされています。
８月には検討結果がまとめられ、１１月にも一定の結論を得たいとのことです。住民の生命・財産の擁護に直結する第一線の消防・救急活動の広域化であるにもかかわらず、その計画の全容は明らかになっていません。
このテーマは、質問時間がなくなり割愛した質問ですが、質問の趣旨と行政側の所見（聞き取り等によるもの）を報告します。
「住民サービスの向上」について、長野市消防局は「住民サービスを低下させない広域化」を主張されたと聞く。「広域化でサービスの向上を図ることは困難なのでは」との問題意識と思われるが、本意と所見は？
【消防局】現状の長野市消防体制を維持することに主眼を置き、最低限、現行の住民サービスを低下させることのない広域化をと考えたもの。住民サービスに重点をおいた考え方に変わりはない。長野市としては、財政負担、意思決定の迅速性、職員の士気高揚などを検討した結果、事務委託方式による広域化が最も妥当と判断、過日、事務段階で他の消防本部に伝え協議中。１１月を目途に首長間で一定の方向性が得られるよう協議を進める。
「住民の理解が得られる」こともポイントになっているわけだが、議会にも市民にも公式な情報提供は全く行われていない。今後の対応は？
【消防局】他の消防本部の意見が集約された段階で、庁内会議に諮り、長野市としての考え方を議会や市民に説明したい。
消防と救急の兼務を図るとされた中山間地域の３分署、鬼無里・飯綱・七二会での人員削減問題は、住民の生命と安全にかかわる重大な問題で、現在も「棚上げ状態」となっている。北信地域の他の４つの消防本部は兼務制を既にひいているが、長野市としては専任制を維持し住民の生命と財産の安全に尽力することが不可欠であると考える。今後の方向性、考え方は？
【消防局】消防広域化では、消防業務の専門性、専任制をとることが重要な目的の一つとなっているが、将来的には兼務制も検討しなければならない。市内中山間地域の３分署の体制は現在の体制を基本的に維持していきたい。
専任制と関連し、救急体制の充実について。何処に住んでいようと命の重さに変わりはない。救急車の現場到達時間目標５分、病院への搬送時間の短縮を図るとともに、早期に全救急隊に高規格救急車及び救急救命士を配備・配置することを最優先すべき。計画は？
【消防局】山間地域においては、ドクターヘリやドクターカーの運用で、患者を迅速に医師の管理下に置く体制で臨んでいる。高規格救急車の配置は、今年１１月に鬼無里分署に、Ｈ２３年度には飯綱分署に配置する予定、救急高度化計画に基づき、救急救命士の養成や高規格救急車の導入を図っていきたい。
北信地域での広域化は、現状として消防本部毎に運営方式や勤務体制が異なり、大きな温度差があることから、拙速に進めず、住民の声を聞き、慎重に対応することを求める。見解は？
【消防局】消防救急無線のデジタル化は東北信で一本化して整備するが、消防組織の広域化は、運営組織が異なり、北信地域でも意思統一ができている状況にはない。全国の消防本部や中核市の動向を見据え、かつ、消防が市町村の責務であることを踏まえながら、慎重に対応していきたい。
「幻の質問」となったテーマですが、市民の生命・財産にかかわる重要な問題です。１１月には基本的な方針がまとめられることになります。北信地域での広域化は、上田市との関係から千曲・坂城消防本部が事実上降りることになりそうな気配もあります。長野市側の「来る者は拒まず、この指とまれ」式で、事務委託方式、職員２交代制の維持による広域化を進めようとする姿勢に、他の消防本部からは厳しい意見もあるようです。「消防は市町村事務」との基本を見据えた対応が問われそうです。
 関連記事、こちらも参照ください。
 10.07.27 北信地域で検討進む消防の広域化…住民の安全は守られるか
|
本会議での質問をインターネット中継放送で見ることができます。