利用者の減少から維持困難とされている長野電鉄屋代線の存続を考えようと7月4日、「公共交通を考える市民の集い~屋代線の将来を考える~」を松代文化ホールで開きました。沿線の住民の皆さんをはじめ、予想を越える420人の市民の皆さんに集まっていただきました。関心の高さを改めて実感しました。会場からも発言が相次ぎ、この1週間、沿線住民アンケートのまとめやシンポジウムの段取り、そして資料作りを担当してきた主催者側の一人として大変うれしく思います。関係者の皆さん、ご苦労さまでした。そして、若穂や松代の皆さん、ありがとうございました。
茅野實実行委員長(長野県環境保全協会会長)は、「課題は山積しているが、まずは地域の人が屋代線を利用することが解決に向けた第一歩」と呼びかけました。
集いの第1部では、東北大学社会学研究室の研究員で、5月に設置された「長野電鉄活性化協議会」に学識委員として参画している古平浩さんが、「地方鉄道の今を考える、ローカル鉄道を地域で支えるために」と題して講演。富山県高岡市の万葉線や和歌山市の貴志川線での住民の主体的な取り組みや、兵庫県加西市の北条鉄道のボランティア駅長の取り組みなどを紹介しながら、屋代線の存続に向けては「沿線に住んでいる人たちが屋代線の価値を再認識して、自分たちの鉄道であるということを考えながら行動を起こす必要がある」と訴えました。
第2部は、鷲澤正一・長野市長、笠原甲一・長野電鉄社長、古平浩・長電活性化協議会委員、茅野實・実行委員長をパネラーに、信濃毎日新聞論説委員の小林孝さんがコーディネーターを務め、「屋代線の将来を考える」をテーマにシンポジウム。
笠原・長野電鉄社長は、地域に支えられた河東線の歴史を振り返りながら「線路や車両の交換などで今後も多額の投資が必要。定期利用など安定した乗客が増加しないと路線維持は難しい」と経営の窮状を説明しました。
鷲澤・長野市長は、国の支援を受けるため設置した法定協議会の取り組みを紹介しながら、この法定協議会が立ち上がっていることから「私見は差し控えたい」と断ったうえで「公共交通は社会のインフラであるとの基本認識を大事にしたい」とし、「線路と道路を走行できるデュアル・モード・ビークルの導入とか、市街地への乗用車の乗入れ規制など、将来的に検討していく必要があるだろう」と述べました。
会場からは、自転車の車内への持ち込み(サイクルトレイン)や運行本数や運賃の改善、パークアンドライドの駐車場の整備、ICカードの導入などを求める意見や提案が出されました。
茅野さんは「沿線で屋代線を愛する会などをつくって、皆さんが会員になって盛り上げていくことが大事。沿線から須坂市や中野市にある企業に勤めるサラリーマンにマイカーから電車に乗り換える取り組みが重要、環境保全会長としても企業に働きかけを強めたい」としました。古平さんは、「今日は“屋代線の将来を考える”がテーマだが、考えているだけでは事態は変わらない。今度は皆さんが中心なって“屋代線の将来をつくる”をテーマにした集いにしたい」と述べました。
シンポジウムは第一歩です。古平さんが指摘するように、シンポジウムを契機に沿線住民の皆さんに存続に向けた取り組みが始まることを期待したいものです。
●シンポジウムでの配布資料(PDF版で3分割しています・実際の配布資料は白黒印刷)
その1|その2|その3|沿線住民アンケート結果