26日最終日、ごみ処理手数料の有料化案を賛成多数で可決
可燃ごみ袋1㍑当たり1円の値上げ、来年10月から
30㍑袋10枚が100円から400円に |
ゴミ減量、有料化の前にできることはないのか!?
成り行きが注目されていた家庭ごみ有料化制度導入に伴う条例改正案は賛成多数で可決され、来年(H21)の10月からの有料化実施が決まりました。
現在一世帯200枚まで実費で販売する可燃ごみと不燃ごみの指定袋に1㍑当たり1円の手数料を上乗せするもので、30㍑10枚ひと組の袋は店頭での実費販売価格100円程度から一挙に400円程度になります。粗大ごみに貼るシールも無料から1枚40円になります。資源物は無料で、プラスチック製容器包装も現行通り指定袋の実費購入となります。
《新しいごみ処理手数料》 袋の流通価格を10円に想定
ごみの種類 |
指定袋の種類 |
現行(袋の実費) |
新制度・手数料1㍑1円 |
可燃ごみ |
10㍑(新設) |
- |
20円(手数料分10円) |
20㍑ |
10円 |
30円(同20円) |
30㍑ |
10円 |
40円(同30円) |
40㍑(新設) |
- |
50円(同40円) |
不燃ごみ |
20㍑ |
10円 |
30円 |
30㍑ |
10円 |
40円 |
ブラ容器包装 |
20㍑(新設) |
- |
10円(実費のみ) |
30㍑ |
10円 |
10円(現行通り実費のみ) |
粗大ごみ |
シール |
無料 |
40円(手数料分40円) |
私は、有料化の前に長野市ごみ処理基本計画で定めたゴミ減量目標を達成するための一大市民運動を提起すべきであること、市民への説明の前に議会が議決することは市民自治に反すること、税負担等が重くのしかかる中、一世帯約2900円の負担は重いことから、「有料化ありきの提案」で時期尚早であるとして議案反対し、反対討論も行いました。
市は、「ごみの排出者としての自覚と責任を明確に意識できる家庭ごみ処理の有料化制度を構築すべき」としたH19年3月の廃棄物減量等推進審議会の答申を踏まえ、有料化で10%程度のごみ減量を図ることができるとし、有料化に踏み切ったものです。
有料化の効果として①ごみの減量・発生抑制と再資源化の促進、意識改革につながる、②ごみ処理手費用の削減と手数料収入の還元、③ごみ処理費用負担の公平性の確保の3点をあげました。
また、有料化にあたっての負担額の設定について次の4点を目安としましたが、有料化ありきの都合のいい目安であり合点がいきません。
「有料化はごみの減量・再資源化促進の原動力」?
環境省の統計調査から、長野市の場合で10%程度の排出抑制効果が見られ、この数字は、長野市ごみ処理基本計画に定める減量目標数値の「-10%」に合致するとしています。ごみの減量は大事な取り組みです。基本計画では家庭ごみの一人当たり排出量でH15年の179kgに対しH22年に「-10%の160kg」との目標を定めていますが、実際はブラ分別で一時は161kgまで減量したものの、現在は166kgと増えています。あと6kgの削減は、有料化でなければ実現できないのでしょうか。私は、市民の意識改革を信じ、ごみ減量運動を市民をあげて取り組むことが優先されるべきだと考えます。少なくとも有料化の導入の是非は、今のごみ処理基本計画の年次であるH22年までの取り組みと推移を見て判断すべきでしょう。
「家計から見て有料化の負担感は大きすぎず分別努力に結びつく」?
市の試算によると次のようになります。使用枚数Aは、H18年度1年間に家庭から出されたごみ量を30㍑袋の枚数に換算したもので、指定袋の流通価格を1枚10円として算定しています。当然、世帯の構成により負担額は異なってきます。
種類 |
使用枚数A |
現行 |
有料化導入後 |
袋実費負担額B |
処理手数料・有料分 |
市民の負担額 |
(10円×A) |
(30㍑×1円×A) |
(B+C) |
可燃ごみ |
84枚 |
¥840 |
¥2,520 |
¥3,360 |
不燃ごみ |
6枚 |
¥60 |
¥180 |
¥240 |
ブラ製容器包装 |
25枚 |
¥250 |
¥0 |
¥250 |
粗大ごみシール |
5枚 |
¥0 |
¥200 |
¥200 |
年間負担想定額 |
|
¥1,150 |
¥2,900 |
¥4,050 |
月額負担想定額 |
|
¥96 |
¥242 |
¥338 |
年間2,900円の負担は大きずぎないのでしょうか。市民が負担することになる計3億5千万円のお金はごみ減量にどのように有効に使われるのでしょうか。
なお、市では生活保護世帯や紙おむつを使う3歳未満の乳幼児がいる世帯(約10,100世帯)や要介護認定の人が世帯等(約7,400世帯)に対しては、ごみ袋の現物支給による負担軽減策を講じることにしています。
「市全体のごみ処理経費から見て、負担割合は妥当」?
長野市の場合、ごみ処理経費は36億4000万円(H18)で、1世帯当たりの経費は約2万5000円。2900円の市民負担分は11.6%となるとしています。全国の有料化(排出量単純比例型の制度)を導入する中核市や特例市における負担割合が5%~33%で、長野市の負担割合は妥当であるとの結論ですが、余りにも幅のある割合を基準にしています。
「全国で有料化は973自治体、処理手数料も平均価格に位置する」?
市は、ごみ処理手数料の有料化は全国の趨勢であり、処理手数料も全国の平均価格だから、有料化も負担額も妥当であるとしています。しかし、名古屋市のように細かな分別収集に取り組み、有料化によらずにごみ減量を確実に達成している自治体もあります。
反対討論をしました。内容は次のとおりです。
いずれにせよ、条例は賛成多数で「改正」され、今年の7月中旬から市民への説明会が各地で1200回近く行われることになります。市長は閉会あいさつで「理解を得るようしっかり説明責任を果たしていく」と述べましたが、負担度合いの適正度、ごみ減量への確実な取り組みという観点から、市民の討論に参加し、厳しくチェックしていきたいと考えます。議会の決定をひっくり返すことができるのも市民ですから…。
《ごみ有料化に対する反対討論》
議案第84号「長野市廃棄物の処理及び清掃に関する条例の一部を改正する条例」について、これを採択するとした福祉環境委員会・委員長報告に反対の立場で意見を申し上げる。
私はかねてより、有料化は将来やむを得ないとの立場を表明しつつも、「有料化ありき」で拙速に市民に負担増を強いるのではなく、新しい減量目標を設定して、ごみの減量・再資源化を促進する一大運動に取り組むべきだと提案してきました。今もなおその想いに変わりはありません。
今回のごみ収集の有料化は、更なるごみの減量・再資源化を推進するためであるとされています。「有料化制度導入に関する基本的考え方」では、家庭系一般廃棄物の可燃ごみ量に着目し、H15年の一人あたり排出量176kgに対して、H22年には160kg、10%の削減目標を設定した「長野市ごみ処理基本計画」の目標数値達成のためには、ごみ減量のための新たな施策が必要であるとしました。この新たな施策が有料化制度であるというのです。
本当にそうでしょうか。有料化を導入した自治体では、一旦は減ったものの今やリバウンドが課題となっています。不法投棄も一概に減少しているという状況にはありません。
H16年のプラスチック製容器包装の分別収集で、可燃ごみ量は161kgまで大きく減少しました。ブラ分別が市民への新しいインパクト、意識改革となり、ごみ減量につながったものです。しかし、その後増加傾向が続いているのは事実です。基本計画に定めた一人あたりの排出量160kgを達成するために、市民に負担を求める有料化という方法しかないのでしょうか。
現在のチケット制度の課題は、少人数世帯が増えているのであれば、枚数配分の見直しや、指定袋の容量の種類の拡大で解決の糸口を見つけることができます。本来、税で賄うべき事業であることを考えると、減量・リサイクルに積極的に取り組む世帯と無関心の世帯との差や不公平感は、継続的な意識啓発、意識改革にゆだね、底上げを図っていくしかないのです。
福祉環境委員会では、「市民の意識啓発・意識改革には限界があるから有料化なのだ」と理事者が答弁していますが、市民の意識改革の可能性を否定してしまっては、市民自治も市民との協働も成り立ちません。市では、夏以降の住民説明会のために「ごみ減量ガイドブック」を準備しています。大事なことです。ブラ分別の実施以降、こうした市民啓発に継続的に取り組まれてきたのでしょうか。担当部署では大変ご苦労をいただいていることは承知していますが、「継続は力なり」です。有料化を決める前に「ごみ減量ガイドブック」を作成し、ゴミをめぐる現状と減量に向けた課題をすべての市民と共有し、それこそ市民をあげて160kgを達成しようとする取り組みが優先されるべきであると考えます。基本計画で定めた成果指標では、H19年度実績で、リサイクル率や事業系の可燃ごみ量では確実に目標に近づきつつあり、集団資源回収量や生ごみの家庭系可燃ごみに占める割合では目標をクリアーしています。確実に前進している面もあるではありませんか。そして今日、マイバッグの取り組みをはじめ、ごみ焼却による地球温暖化への影響を危惧した市民の自発的な行動が広がっているではありませんか。
審議会の答申をもって、粛々と進めるのではなく、ここはいったん立ち止まって、有料化ありきではない方策を再構築すべきです。
さらに市民の合意形成について申し上げたい。まず、議会で有料化を議決してから市民に説明するというのは、順序が違うということです。これでは1200回にも及ぶ説明会は「有料化報告会」となってしまい、市民に選択の余地はなくなってしまいます。ごみ減量に向けた市民の自発的な意識改革と行動を呼び起こす本来の趣旨に反するのではないでしょうか。1リットル当たり1円という具体的な負担案を示し、負担の是非、ごみ減量の必要性について白紙から議論し、合意形成を図ることが求められていると考えます。
このように申し上げると、市民代表も参加している審議会の答申を尊重し、パブコメも行い、大方の理解を得てきているとの答えが返ってきます。本当にそうでしょうか。昨年10月に行われたパブコメは、「ごみ処理手数料の有料化制度導入に関する基本的な考え方」についてであり、具体的な市民負担額1リットル当たり1円の負担をお願いするもので、一世帯当たり年間2900円の負担となること、3億5千万円に上る新たな市民負担分は生ごみ処理の推進や再資源化の経費に充てるとするようなごみ減量の展望、さらには、ごみをこれだけ減らすことができれば、ごみ処理経費を削減でき、有料化の導入は回避できるとする計画などを具体的に示して意見を求めたものではありませんでした。市民に身近な問題として考えてもらうには、総論だけでなく具体的な各論も示して意見を求めるべきです。こうした議論を市民を挙げて行うことにより、市民の自覚と行動が醸成されるのではありませんか。
今日、市民にとって税負担が重くのしかかってきています。国民健康保険料の値上げに始まり、さらには受益者負担の見直しで利用料・使用料の値上げが今後提案されるであろうことを考えると、1世帯当たり年間で2900円とはいえ、ごみ有料化の負担はなお重いという市民の暮らし向きにしっかりと目を向けた議会としての取り組みが必要であることを訴え、反対討論とします。
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