12月議会では、公の施設の管理を民間に開放する指定管理者制度に関して、新たに制度を導入する「長野市フルネットセンター」をはじめ、指定期間が終了する「豊野温泉りんごの湯」など、22施設の指定管理者を決めました。
■「りんごの湯」指定管理者が県外企業に
今議会の論点の一つで、所属する経済文教委員会の議論の焦点となったのが、「豊野温泉りんごの湯」の指定管理者の変更です。りんごの湯の指定管理者は、旧豊野町時代に選定した「ジェイエイながのサービス」で、今年の2月末で指定期間が満了となることから、市が新たに公募。同社を含む6団体が申請し、選定委員会は東京に本社を置く株式会社オーチューとファンスペースの2社でつくる「“りんごの郷”運営企業体」を新しい指定管理者に選定、議案となったものです。この企業共同体は、ビルメンテンスが本業ですが全国に指定管理者として進出、すでに戸隠にあるそば博物館「とんくるりん」の指定管理者の他、大町市の「ぽかぽかランド美麻」の指定管理者にもなっています。
「りんごの湯」のケースは、指定管理者制度において地元の企業体から県外の企業体に変更される初めてのケースです。地域のつながりが強く、施設利用者も順調に伸びていた中、なぜ変更する必要があったのか、地元でも驚きと落胆の声が広がりました。市は、「りんごの湯は公募方式で競争原理に基づき選定を行う典型的な公の施設。選定結果は事業提案の内容や経営姿勢で優れていたため」とし、割引時間帯の延長(午後8時から10時までを400円から250円に割り引いていたものを午後6時からに拡大)や館内レストランを直営とし地元食材を活かした独自のメニュー提供、350万円余の経費削減などが決め手になったとしました。
■地域振興の観点から地元企業の活用、雇用の継続を求める
当該の県外企業の事業提案が優れているとはいえ、指定管理者が地元企業から県外企業に変わっていくことに大きな危惧を抱きます。何故なら、指定管理者への参入にあたり、地元企業のやる気をそいでしまう結果になりかねないからです。指定管理者としてのスキルとノウハウに優れる県外企業に、地元企業体はまだまだかなわない現実があります。市は「地元民間企業には勉強してもらうしかない」としますが、地元企業の育成・活用という視点がなければ、地域振興につながりません。
私は、指定管理者の選定にあたり、地域振興に鑑み、指定管理者の実績や地元事業者の育成の観点を加味した選定基準を設け、地元民間事業者の活用を図ること。地元民間事業者に対し、指定管理者としてのノウハウ、スキルアップに向け、指導・育成を行うこと。指定管理者の変更にあたり従業員の皆さんの雇用の継続が図られるよう指導・監督することを強く求め、最終的に議案に賛成しました。
来年度の終わりには多くの施設で指定管理者の更新の時期を迎えます。地域振興の観点から地元企業の活用をいかに図るか、課題が残ります。
■委員会審議での反省点
話は変わりますが、委員会の審議で反省点があります。一つは、指定管理者選定委員会が非公開となっている点で、行政改革推進局長を委員会に参考人として出席を求め、「りんごの湯」に関わる選定委員会のあり方について質す必要があったこと。二つは、議案の可決に伴い「附帯決議」を準備したのですが、市議会には「附帯決議」のルールが確立されていないことから見送らざるをえなかったことです。「附帯決議」は国会や県議会ではよく耳にしますが、「法案・議案の可決にあたり、特に留意が必要な事項について行政に執行努力を求める決議」です。拘束力はないとされていますが、議会の意思として行政に留意させる事柄となります。議事運営委委員会でのルール作りが急がれます。
■市民参加の施設管理運営委員会へ
「りんごの湯」では年末から引き継ぎが始まり、地域の皆さんとの協議の場である「運営委員会」が設置され、雇用も10人のうち9人が継続となったとの報告を地元の議員から伺いました。指定管理者制度は始まったばかり、施設によって市民との関わりは多様ですが、地域とのつながりを強めていくという点でいろいろな試行錯誤が求められます。「りんごの湯」のケースが新しいルールづくりの糧となるように取り組みたいと思います。
■「市民監査」など指定管理者の管理運営をチェックする仕組みが必要
指定管理者制度は、H18年4月1日から市民会館(コンベンション・リンケージ)や市民病院(市保健医療公社)、老人福祉センターや児童館・児童センター(いずれも市社協)、勤労青少年ホームや鬼無里の湯(いずれもアクティオ)長野運動公園や市民プール(いずれもシンコースポーツ)など、既に295の施設で導入されています。今のところ大方の施設では市民サービスが向上していると受け止められているものの、一部には管理が行き届かず問題となった施設もあります。また、指定管理者の皆さんからは、経費削減について行政側の対応が非常に厳しいとの声も聞こえてきます。経費削減のしわ寄せが人件費の抑制、非正規雇用の常態化、社会保険・雇用保険等への未加入という状況を加速し、結果、市民サービスが低下するという事態を招かないよう、「市民による監査機関」など厳しくチェックできる制度をつくっていくことが求められています。
■行政のモニタリング評価では…
指定管理者のモニタリング評価結果がH19年9月に発表されました。67協定・178施設を対象に、年度協定や仕様書に沿った管理運営が適切に行われているか、経営の努力等により公の施設としての目的を全うしつつ、サービスの向上と経費等の削減を実現できているかを担当課(施設所管課)で評価したもの。総合評価では66協定が「良好」のA評価、1協定が「改善が必要だがおおむね良好」のB評価、「指導必要」とするC評価はゼロでした。経費では指定管理者導入により約9,700万円の削減効果があっとしています。因みに「りんごの湯」の評価は「オールA」でした。
行政自身が課題であるとしていることが二つあります。一つは、協定や仕様に基づく評価であり、市民の視点を反映できる評価方法の検討が必要なこと、二つは、施設ごとの目的や利用形態、施設の特性に応じた評価方法の確立が必要だということです。
施設利用者アンケートの取り組みを充実させ、前述した「市民による監査機関」の設置などで、利用者・市民の視点を指定管理者の管理運営に反映していくことが大切です。
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