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06年8月15日記
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7月豪雨・岡谷市災害調査の報告


 8月8日、社民党長野県連合として森田恒雄県議(県連合副代表)を団長に岡谷市大雨災害調査を実施しました。私も県連合副代表として同行調査しました。
 被災された皆さん、犠牲となられた皆さんに心からお見舞い申し上げます。ボランティアの皆さんの尽力で、被災地の大方は片付いたものの、平穏な日常生活を取り戻すには、まだまだ時間がかかります。通常はせせらぎ程度の沢で、予想を超える雨量によって一変し土石流が襲った現実に、改めて災害の怖さと日常からの備えの重要性を痛感しました。岡谷市でも災害ハザードマップは全戸に配布されていたそうですが、家庭の中で周知されていたケースは稀だとか。長野市内でも防災訓練を通して、自分の家がどれだけ安全なのか、あるいはどれだけ危険なのか、避難はどのようにすればよいのかなど、日常的に地域全体で確認しておく必要性も改めて痛感しました。
 概要を報告します。今回の被災を県全体はもとより、長野市の災害対策への教訓にしなければなりません。

 

1.日時 8月8日(火)9:30~16:00

 

2.場所 岡谷市内

 

3.災害見舞い

9:30 調査団代表で、岡谷市市役所へ災害見舞いに訪問。林新一郎市長は公務のため、玄関口で挨拶し、竹澤幸男助役が対応。森田団長から災害のお見舞いを申し上げ、見舞金10万円を手渡した。

 

4.結団式並びに概況説明

10:00~10:30 間下区民センターにおいて、結団式とかねて岡谷市の災害概況説明を受けた。森田調査団長から「先ず、災害に会われた皆様に心からお見舞いを申し上げます。社民党県連合として綿密に調査し、県や関係省庁へ働きかけていきたい」と挨拶。地元浜代表からも「7月19日の雨で、死者が8人も出た。観測史上最大の雨量だった。岡谷においては、100年近くこんな災害はなかったと言われている」。

この後、武居・岡谷市議と岡谷市都市計画課長から概況説明を受けた。

 

5.岡谷市における災害の概況

(1)豪雨の状況

中国大陸から上陸した台風から、湿った空気が流れ込み、梅雨前線の活動が活発になり、15日以降雨が降り続いた。7月17日3:00から降り始めた大雨が、7月19日15:00までに、総雨量400ミリ(時間雨量最大31ミリ)に達する記録的な大雨となった。

 

(2)主な災害箇所

①岡谷市湊3丁目久保寺南地区 小田井沢川(おたいざわがわ)、八重場沢川(やえばざわがわ) 死者7名

②岡谷市川岸東2丁目橋原志平地区 志平川(しびらがわ) 死者1名


③岡谷市長地出早(おさちいずはや) 上の原小学校付近


④岡谷市川岸東3丁目鮎沢地区 本沢川(ほんざわがわ)

⑤岡谷市川岸東4丁目的場川(まとばがわ)

 

(3)主な災害の経過 7月19日

時間

災害及び避難勧告の状況

4:30

湊3丁目 土石流発生住宅倒壊 5名行方不明

4:43

川岸東2丁目 土石流発生住宅4棟倒壊 2名救出 1名行方不明

4:43

川岸東3丁目 土石流発生 住宅倒壊 11名救出

5:31

湊3丁目火災発生

5:40

岡谷市災害対策本部設置

6:15

橋原志平地区 避難勧告

6:20

久保寺地区 避難勧告

6:22

鮎沢地区 避難勧告

7:00

上の原小学校土石流情報

7:45

上の原小学校付近 避難勧告

9:05

川岸新倉区 避難勧告

10:54

久保寺南 再度土石流発生

12:54

久保寺南 再度土石流発生

 

6.岡谷市の災害のポイント

(1)避難勧告について

①岡谷市湊地区においては、「午前2時半川があふれている」「午前3時すぎ側溝の増水に気づいた住民が続々外に出てきた」「午前3時半過ぎ119番通報した」、志平地区では「午前3時50分ごろ川の増水を確認」(いずれも「信毎」)、こうした情報が岡谷市危機管理室に入り始めたのが3時15分過ぎ、午前4時30分土石発生を確認し、災害対策本部を設置、避難勧告が出たのは6時15分である。

②岡谷市と同様の土砂災害は辰野町、塩尻市楢川でも起きている。17日11時52分他の地域とともに「大雨洪水注意報」から「大雨洪水警報」に変わった。あわせて「土砂災害の恐れがある」という土砂災害警戒情報が出されていた。天竜川上流河川事務所と長野地方気象台は18日23時05分に洪水警報を発表していた。なぜ岡谷市と辰野町で死亡災害になったのか、「災害対策本部の設置」「避難勧告」という視点からも検証されなければならない。

③市は、8月1日市内11河川の流域住民に対する避難勧告基準を新たに定めた。「避難準備基準」連続30ミリ以上の雨量と1時間当たり10ミリ以上の雨量が予測された時。「避難基準」は、連続雨量40ミリか時間雨量10ミリ以上か土石流センサーが作動した場合。災害対策本部の設置を待たず理事者が発令できる。
④長野市は災害対策本部を19日の午前1時50分に設置、緊急配備体制をとっている。災害対策本部の設置に、ひいては避難勧告に遅れはなかったのか、検証が必要だ。

 

(2)土砂災害について

①100年に一度の降雨量であったということが、今回の大きな土砂災害につながったと言われている。

②信大研究者らの状況確認では、「水を通しにくい粘土化した層の上に積もった表土が集中豪雨で大量の水を含みきれなくなって崩れ、あふれた泥水が一気に流れ下った『洪水型の土石流』と説明している。

③国は、人家等が5戸以上ある「土砂災害危険箇所」を調査し、全国では21万ヶ所ある。長野県内には、土石流危険渓流5,912カ所、地すべり危険ヵ所1,241カ所、急傾斜地崩壊危険ヵ所8,868カ所、計16,021ヶ所が公表されている。

④全国では、このうち対策が講じられる「土砂災害警戒区域」は16,065ヵ所(県内1,798ケ所)、「土砂災害特別警戒区域」は7,992ヵ所(県内1,636ヵ所)のみ。

*「土砂災害警戒区域」・・・市町村地域防災計画への記載、警戒避難体制の整備をする。

*「土砂災害特別警戒区域」・・・特定の開発行為に対する許可制、建築物の構造規制等をする。

⑤今回、土砂災害のあった地域は、「すべて土砂災害危険箇所」ではあったが、「警戒区域」「特別警戒区域」にはなっていなかった。

⑥森林整備について、今回の調査地は「湊地区」「川岸地区」「上の原地区」の三ヶ所。詳細な点は分からないが、どこも整備が進んでいるとは言いがたい状況。一方で、塩嶺病院の上流部に、平成17年3月完成の砂防堰堤があり、土砂や流木をせき止めていた。周囲の山林は最近間伐がされた様子。

⑦以上の点から、長野県に限らないと思うが、急峻な山地が多い場所であることや近年の異常気象の中で土砂災害を全て無くすことは不可能という認識が必要。その上で、災害弱者を守るための応急処置として砂防堰堤などの土砂災害防止施設は必要。長期的には、砂防堰堤が万能であるわけではなく、森林整備などと合わせた、その土地や環境にあった個別対策が必要。したがって「土砂災害危険箇所」を早期に「警戒区域」とすること。私権が制限されるため住民説明会などの実施が必要と思われる。

 

(3)災害時要援護者の避難支援

①今回の災害で死亡した方の年齢、岡谷市では8人中5人が70歳以上。

②国は、今年の3月「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を策定されているが、以下の問題点が指摘されている。

・避難勧告などの伝達体制が整備されていない。

・個人情報保護法により、要援護者の情報が共有されていない。

・要援護者の避難支援者が定められていない。

 

7.釜口水門予備放流(事前放流)について


①諏訪市を中心に諏訪湖の水位があがり、周辺部で冠水し床上・床下浸水の被害が多数でた。

②諏訪湖には31河川から流入がある。今回最大時734.39トンが流入し、411.14トンを釜口水門から放出した。

③釜口水門は最大600トン放流できる設計となっているが、天竜川の護岸工事などの改修が進んでいないため、最大400トンを放流している。天竜川は毎秒600トンの水量に耐えられる河川整備計画として認可されているが、実際の整備状況が400トンにとどまっているためだ。今後、600トンを達成できる河川整備の達成が大きな課題といえる。

④予備放流が可能であるかについては、これまでの経験から今回予備放流はされなかったが、今回の経験も含めて予備放流についての研究が必要。
*写真は当日、毎秒10トン放流の状況。

 

以 上

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