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05年7月20日記
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「長野市防犯条例」を考える…監視社会を助長しないか?(その1)

  現在、長野市では「犯罪防止に関する条例」(以下、防犯条例)の検討を進めています。条例案は、市民の防犯意識の高揚と自主的な防犯活動の推進の二つを目的とし、市行政と市民、事業者の責務を定め、役割分担しながら、警察と密接な連携を図り、犯罪のない住みよいまちづくりを実現しようとするもので、12月議会に条例案が提案される予定となっています。

■全国、県下でも制定広がる「防犯条例」
 市が昨年度に5000人を対象に行った「まちづくりアンケート」(回答率57.8%)で「最近の犯罪状況」に対して94%の市民が「不安に感じている」と応え、市行政の課題として「犯罪防止の推進」が4位にランク、行政の支援策として「防犯に関する情報の提供」(64%)に次いで「防犯条例の制定」(34%)が選ばれたことなどが条例制定への直接的な背景となっているようです。
 この種の条例は、警察の後押しにより『生活安全条例』と言う形で全国で広がっていますが、賛否両論を呼んでいるのも事実。県下では今年1月現在で113市町村中77市町村が制定しています。

■安全・安心は切実、けれど条例で犯罪を防げるのでしょうか
 虐待や殺人事件が連日発生している中にあって、「安全」「安心」は私たち市民の強い願いであり、まちづくりのキーワードとなっています。地域社会の中で連帯意識を高め、互いに支えあう“絆”を作っていくことは大切なことです。しかし、防犯条例を作ったからといって犯罪がなくなったり減ったりするのでしょうか。既に制定された他自治体では効果をあげているのでしょうか。罰則等を定めない「理念・規範条例」とはいえ、市民に対する強制力が働くことになりはしないのでしょうか。警察と協力することで高められる「防犯意識」とは一体何なのでしょうか。「怪しい人」「不審者」を探しだし警察に通報するという効果を狙ったものになりはしないのでしょうか。そうだとすると相互に監視しあう監視社会を助長することになり、本当の意味での「互いの人権を認め合い支えあう地域の“絆”」を阻害することになってしまいかねません。私はこうした点に根本的な疑問を感じています。

■犯罪の予防は警察の仕事、空き交番の解消、警察官の増員が課題
 警察の責務は「犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持にあたること」(警察法2条)とされています。犯罪の予防は基本的に警察の仕事です。だからこそ拳銃を所持させ強制的な力を執行できるようにしているのです。この役割は行政や市民で肩代わりできるものではありません。
 先ほど県警が調査した「交番の不在実態調査」の内容が明らかとなりました。午前6時から午後6時までの12時間のうち平均不在時間は6時間12分にも上り、事件・事故等が多い長野市など都市部の交番ではほとんどで不在時間7時間以上に及ぶという実態が浮かび上がっています。長野市の先のアンケート調査でも要望の強い「パトロールを強化してほしい」「パトロールに警察官が同行してほしい」との声に応えきれない警察の実態があります。警察官OBによる「交番相談員」制度を活用するとともに、警察官を増員し十分なパトロール体制をつくるとともに空き交番を解消することが犯罪防止への最大の近道ではないでしょうか。

■地域の自主的な防犯活動への支援強化を優先
 今、市内では防犯協会の皆さんによる自主的な防犯活動が展開されています。また、子どもたちの安全を守るため、情報を提供する安心ネットワーク作りも始まっています。地区毎に区長会や防犯協会が中心となって各種団体の皆さんと連携し、子どもたちの安全、お年寄りの安全を守るための自主的な活動を強めていくことが大切です。そのために行政がどんな支援ができるのかを考えるべきです。条例がなくても、防犯パトロールや声かけ運動の強化、防犯灯の設置拡大、小・中学生への防犯ブザーの無償提供、安全情報提供のシステム化など、行政が支援できることはたくさんあるはずです。
 さまざまな障害を持っている人や外国人、コンビニに集まる中学生や高校生に「不審の目」をもって接することになりかねない「条例」って本当に必要なのでしょうか。監視社会を助長することになりませんか…。 皆さんのご意見、お待ちしています。

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