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04年7月、市民ネット行政視察(第1弾) 北見市・旭川市・富良野市・岩見沢市 |
■7月20日から22日の日程で会派・市民ネット4人でで行政視察を行いました。大きなテーマはごみ問題と産学官連携事業としました。視察地は北海道北見市・旭川市・富良野市・岩見沢市の4市です。以下、羅列的ですが、調査概要を中心に感想を含め報告します。(文責は布目)
◆北見市…行政が直接地場企業を支援・産学官連携の試み
(1)人口110,715人、世帯数49,035世帯、人口密度263人/Ku。北海道の東部、オホーツク地域の産業・経済・文化の中心都市。1897年に移民団と屯田兵が入植し開拓した地域、かつてはハッカの生産高世界一で発展の原動力となったが、今はハッカの生産農家はゼロに、たまねぎの出荷では日本一。現在は市内に3つの大学を擁する学園都市で、地域産業の振興を目的とした「地域共同研究センター」など工業・農業分野の研究機関も立地が進む。行政による地域企業への支援という点で成果を挙げており、こうしたことから産学官連携事業を調査内容とした。商工部産業振興課長=今田好春氏より、北見市における「産業クラスタ構想」及び「北見市産学官連携推進協議会」の事業、地域企業を支援するための行政による企業アンケート・企業訪問の取り組みについて説明を受け、意見交換を行った。
(2)北見市における産業クラスタの歩みは、H9年の「産業クラスタ研究会オホーツク」の発足に始まり、民間・行政レベルでのフィンランドとの産業交流、企業招致などを機に、H13年、国立北見工業大学との連携を柱に同大学と「地域共同研究センター」を設立、市職員の派遣等を通じ、産学官連携の基盤作りが進められ、H15年度から具体的な事業展開を図ろうとする段階を迎えている。H16年5月に「産学官連携推進協議会」を発足させ、@産業クラスタ構想をサポートする市内ネットワークの構築、A新産業創出に係るネットワークプラザの確立(現在、東京都札幌に開設)、B地場企業の販路拡大に関する企画・立案・調査などを主な事業としている。協議会は市をはじめ地元経済団体のほか、北見工業大学、北海学園北見大学、北海道看護大学、北見工業議施術センター等で構成する。
(3)注目された点は、産業振興課のもとで、地元の中小企業を対象に、企業アンケートを実施。その集約に基づいて、新商品開発や販路拡大の相談に応じる「会社訪問」を展開していることである。H15年10月に行ったアンケートは市内事業主約4500社を対象とし545事業主からの回答(12.5%回収率)を得た。これに基づき、会社訪問を実施、同課の後押しで特許出願につながった実績も上げているという。不況とはいえ、攻めの経営を目指し、行政のアドバイスを頼りにする経営者が多いことに意を強くした行政サイドでは、庁内横断的な「産業クラスタ・リエゾングループ」を設立、各部から若手を中心に人材を集め、企業支援体制を講じている。さらに、販路拡大支援として、開発した商品・技術を総合商社等に斡旋する活動も行っている。
(4)また、H16年5月には「市創業支援補助金」を新設、創業を予定する者または創業後3年未満の中小企業を対象に、経費の1/2以内1000万円を限度に交付するもの、今年度で2社分2000万円を予算化している。
(5)通常は、商品開発・技術研究などの企業支援は、企業自らの自助努力または商工団体等が行っている。企業訪問に象徴される北見市での行政が民間企業を直接支援する仕組み・手法には、多少違和感を感じつつも、「企業であれ住民であれニーズの発掘から施策を進める」との産業振興課担当者の弁には、地域産業を活性化したいとの熱意を感じるとともに、産学官連携における行政のスタンスの新しい試みとして注目されると感じた。企業支援等は庁内においても賛否両論があるとのことであったが、新しい企業誘致の実現・雇用の確保、税収への反映、まちづくりなど、住民生活総体にとってのプラス面の形成が今後の課題となるであろう。長野市においても信州大学工学部との連携事業が始まっているが、行政は研究機関と企業との橋渡し役との認識で進められている。実りある産学官連携をどうつくりどう広げるか、新しいヒントを得たように思う。
◆旭川市…学校拠点に「地域生ごみ堆肥化モデル事業
(1)人口360,065人、世帯数162,518世帯、人口密度482人/Ku。道内2位の人口を有する北北海道の拠点都市、長野市と同規模の中核市。今回の行政視察では「ゴミ問題」をテーマの一つに設定、旭川市と富良野市のゴミ行政調査にポイントをおいたが、旭川市においてはH13年10月から5年計画(〜H18年9月)で進められている「地域型生ごみ堆肥化モデル事業」の進捗情況を課題とした。環境部リサイクル推進課事業計画係の山本和生氏から説明を受ける。
(2)モデル事業は、隣町であり農業地域である美瑛町に隣接する旭川市・西神楽地域をモデル地区として、地区内にモデル校及びモデル町内会を指定、そこで地区内の小中学校やモデル町内会各家庭から排出される生ごみを堆肥化するもの。堆肥は15kg詰めにし、無料配布で学校や家庭の菜園等で活用されている。将来的には地域農業への活用、収穫物の地域還元を図り、地域生ごみの完全リサイクルシステムの構築を図るとされている。
(3)この事業の特徴は学校を拠点として地域と連携して堆肥化を進めている点だ。モデル校(西神楽小学校)に生ごみ高速発酵処理機(50s/日処理1台)を設置、モデル町内会には生ごみポストとして小型生ごみ処理機(20kg/日処理2台)を設置している。学校では地域内の5つの小中学校から排出される給食生ごみを回収し、高速発酵処理機で堆肥化、41世帯で構成する町内会は、分別した生ごみをポストに投入(1次処理)し、3ヶ月に1回程度のペースで取り出し、学校設置の高速発酵処理機で熟成するというシステムになっている。
(4)H15年度の堆肥化実績は、学校分で生ごみ処理量が5,070s、堆肥生産量1,500s、減量率約70%。堆肥は肥料取締法に規定される有害物はすべて規定値以下であり、安全性が確認され、堆肥の栽培試験においても良好な結果が得られているという。堆肥はすべて学校や家庭の菜園で活用されているとのことで、局地的とはいえ地域循環を機能としている。
(5)事業費は年間300万、5年計画で1,500万。学校設置の高速発酵処理機(400万〜500万)、地域設置の小型処理機(1台100万)は5年のリース契約。町内会は一世帯年8,500円を負担する。この事業を全市で展開した場合は50億円と試算される。因みに旭川市の生ごみ堆肥化に関する補助は電動処理機購入で購入額の半額・2万円限度、容器購入で購入額の半額・1500円限度。地域・グループには50万円の補助となっている。
(6)ごみ減量化をめざし、学校を拠点とする堆肥化モデル事業は、長野市における「区」単位での実施を展望した時に、大いに参考となるものである。
◆富良野市…「ごみを燃やさない、埋めない」目標に資源化率93%
(1)人口25,452人、世帯数10,524世帯、人口密度43人/Ku。北海道の中心標が立ち「北海道のへそ」に位置する。基幹産業は複合経営を主体とする生産性の高い農業で、付加価値をつけた農産加工の振興によって発展。近隣の富良野町などとあわせラベンダーで有名、ドラマ「北の国から」の舞台となったことなどから年間200万人を超える観光客が訪れる観光都市でもある。視察目的は旭川市と同様「ごみ処理行政」であるが、「燃やさない、埋めない」を基本理念に資源化率99%を目標とした14種分別の実施、ごみ処理基本計画「リサイクル・タウン計画」の情況、とりわけ分別の徹底とH14年12月から市の焼却施設を廃止、資源化率93%を誇る現況調査を主な目的とした。現在の14種区分24分類を徹底する市民向けビデオによる概要把握の後に、市民部環境リサイクル課・課長=佐藤俊雄氏から「廃棄物の処理及びリサイクル事業の概要」及び可燃ごみを固形燃料化する施設=「リサイクルセンター」、汚泥再生処理のための「富良野地区環境衛生センター」についてレクチャーを受けた。
(2)富良野市におけるごみ処理の歴史は、S57年までは全量埋立、S60年に生ごみ・乾電池・その他の3種分別実施、有機肥料生産開始、S63年6種分別本格実施(生ごみ・固形燃料ごみ・空き缶・空き瓶・乾電池・一般ごみ)、固形燃料製造開始、H5年に粗大ごみ有料化・7種分別、H7年資源化率57%に。H12年ペットボトルを分別・8種分別、H13年プラスチック類分別・9種分別、資源化率62%に、H13年10月資源化率99%を目標に14種分別を開始、現在に至る。H15年実績で埋立処分率1.2%、焼却率5.8%、資源化率93.0%。
(3)現行の14種分別は@プラスチック類AペットボトルB生ごみC空き缶・金属類D空き瓶・陶器類・ガラスE乾電池類F新聞・雑誌類G固形燃料ごみH衛生用品・ペット糞類I枝草類J大型ごみ・電気製品K灰L動物死体M処理困難物である。焼却処理は衛生用品・ペット糞と動物死体の2種で広域連合の焼却施設で処理、埋立処理は灰類のみ。容器包装類(空き瓶・陶磁器・ガラス、ペットボトル、プラスチック類)は容器包装リサイクル協会の指定法人で処理する。特徴は生ごみ2990トンと枝草類450トンを原則、有機肥料化していることと、紙くず、紙製容器、衣類、タバコの吸殻、ちり・綿くずなどのごみを「固形燃料ごみ」と称し市の施設で固形燃料化しボイラー燃料として活用している点である。その施設がそれぞれ「富良野地区環境衛生センター」(1市3町村で作る一部事務組合)と富良野市の「リサイクルセンター」となっている。有機肥料(コンポスト)はH14年まで有料販売・H15年より無償提供、固形燃料は有料販売されている。また、分別においては6種類の指定袋で実費販売となっている。
(4)「資源化率目標99%」は分別の徹底、そして生ごみの堆肥化といわゆる可燃ごみの固形燃料化によって達成されるシステムになっているように理解される。「燃やさない、埋めない」の理想に向かって着実な前進を図っていることに率直に感服した。人口2万5千人規模、年間3000トンのごみ処理だから「ここまでできる」といってしまうのは簡単なことなのだが、ポイントは行政の側の理想と理想を実現するための環境教育・啓発、そして市民総参加による理解と「3R」の実現にあることは間違いない。年間15万トンのごみを排出・処理する長野市で、富良野市の現状・資源化率93%は不可能なのだろうか。分別で長野市は現在7種区分であるが、単純にその倍となる14種区分への道をいかに具体化していくのか。広域連合での日量450トン処理の新しい焼却施設の建設が計画される中、本当にこれでよいのだろうかとも反芻する。しかし、生ごみの堆肥化と可燃ごみの固形燃料化はポイントであろう。堆肥及び固形燃料の活用・利用を保障できる仕組みが必要となるが、当面、家庭系生ごみの堆肥化、事業系生ごみの堆肥化により実効性ある具体策を講じていく必要を痛感するものである。
◆岩見沢市…市独自に光ファイバネットワーク網を整備、教育・医療分野で威力発揮
(1)人口83,154人、世帯数36,343世帯、人口密度415.3人/Ku。北海道の中心部、石狩平野の東側に位置する穀倉地帯。札幌40km圏内にあり、交通条件と自然環境に恵まれた空知地方の中心都市。かつては全国一の産炭地であったが、30炭鉱すべてが閉山し、基幹産業が壊滅、人口は8分の1に減少、近隣市町村と比較しても人口の減少が顕著な市となっている。地域の自立を図るため、地域IT化を位置づけ、H5年度から事業を展開している。地域IT施策の拠点となっている「自治体ネットワークセンター」において、経済部・産業情報化推進室長=宮嶋哲也氏から「岩見沢市地域IT関連施策の概要」の提起を受け施設見学を行った。
(2)技術革新の進展に伴う高度情報通信社会の到来に積極的に対応するため、情報通信技術の活用による「住民生活の質的向上」と「地域産業経済の活性化」を2本柱とし、地域情報化の拠点として「自治体ネットワークセンター」をH9年10月にオープン。センターは各種公共アプリケーションシステムの開発・運用をはじめ、衛星通信や高速・広域通信網等の高度情報通信機能を用いた先進的な取り組みを展開しているほか、人材育成機能を活用した各種研修事業により、高度な情報通信技術を身近に感じることができる施設として機能している。
(3)旧郵政省の自治体ネットワーク施設整備事業の補助、ハイビジョン・シティ構想モデル都市の指定をH8年に受け、これにより翌9年に「自治体ネットワークセンター」を開設。総事業費は18億円(国1/3、北海道1/6、市1/2)。施設整備に約12億円、システム等の設備整備に約6億円を要している。同年にマルチメディア・パイロットタウン構想の指定を受け、自営光ファイバ網(幹線系)の独自整備に着手、2年間で幹線系の整備を終了し、現在、支線整備として継続されている。H11年度からは「テレワークセンター」を開設、学校インターネット事業、都市コミュニティ研究成果展開事業を開始。H15年度には、ITビジネス特区の認定を受け事業に着手、「新産業支援センター」を開設してきている。
(4) 自営光ファイバネットワークの整備(H9年度〜)
特筆すべき施策は、地域社会に欠かせないインフラとして、自治体ネットワークセンターと教育施設、医療施設、主要公共施設等を結ぶ光ファイバネットワーク網(155M/ATM−LAN)の独自整備を進めている点である。市内小中学校、市立病院・保健センター・健康センター、市立図書館など市内46施設を結ぶ幹線形の整備を完了している。総延長は市内64km、北海道大学までの中継49km、合計113km。投資額は市内整備分で約3億円強とのこと(5000円/m.)。幹線は学校までとし、支線を学校区内に広げる計画で、今年8月からモデル事業として3000世帯(市内36,000世帯内)を対称に地域整備を始める予定。光ファイバネットワークの整備により、教育分野では「双方向遠隔学習システム」、医療分野で「遠隔カウンセリングシステム」などがアプリケーションとして稼動している。特に学校教育では外国人英語教師2人でネイティブな英語教育をすべての学校授業に対応させることを可能とし、医療では、例えば従来レントゲン写真を北大に郵送していたものがデジタル電送により、迅速な対応を可能としていること、また筑波大学と連携し双方向の医療カウンセリングを実現させている試みが注目される。さらには文部科学省が推進する「エルネット(教育衛生情報通信ネットワーク)」にも参画し、施策の広がりの条件整備が進められている点も注目したい。
(5)テレワーク構想の推進(H10年度〜)・都市コミュニティ研究成果展開事業の推進(H11年度〜)
地域産業経済の活性化をめざす取り組みとして、中心市街地空洞化対策型のサテライトオフィス、長期滞在型テレワークセンターを拠点として開設している。
(6)「ITビジネス特区」認定・「新産業支援センター」の開設(H15年度)
H15年度には規制緩和特例措置を内容とする「ITビジネス特区」の認定を受け、ITをはじめ成長分野における新規事業の開拓や新技術を活用した既存事業の高度化、新た多ビジネスモデルによる事業展開などを支援するための「新産業支援センター」を開設している。H16年度からは、財政支援を伴うITビジネスモデル地区構想指定を受け、施策を展開中とのこと。
(7)担当者の説明を受けての印象は、かつては有数の炭鉱都市として活気のあった街が廃れてしまい、何とか元気をとりもどしたい、そのために地域IT化を位置づけ、住民生活の質の向上と地域経済の活性化を図りたいとの意欲と熱意を感じたことである。地域ITによる産学連携、新たな地域産業起しが地域経済活性化の特効薬足りえるかどうかは、これからの課題ではあるが、IT基盤整備への先行投資が、住民生活の質の向上、とりわけ教育・医療分野での活用に結びついている点は注目に値する。長野市においては「フルネットセンター」が、「自治体ネットワークセンター」と同じような位置にあると思われるが、その機能の拡充の方向性において、大きなヒントとなるものである。また、合併を控え情報格差の解消、CATV・ケーブル網の整備が課題となっているが、IT基盤整備のあり方についても、より深い検討が求められているように思われる。
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