11月に実施した議会運営委員会の視察報告の続編です。
「開かれた議会」、「わかりやすく身近な議会」をめざす各議会の意欲的な取り組みは刺激となります。
【シリーズ】20141113議会活性化で視察➊相模原市議会…議会運営委員会
20141226議会活性化で視察➌防府市議会…議会運営委員会
豊田市議会
(1)豊田市は、人口419,704人、面積918.47km²。愛知県北部(西三河地方)に位置する中核市である。トヨタ自動車が本社を置く企業城下町として知られ、愛知県下で人口は名古屋市に次いで2位、面積は県内で最も広い都市。
(2)豊田市議会では、議会運営の他、議会報告会や市民意識調査、市民シンポジウムなどの議会活性化の取り組み、議決すべき事件を定める条例について調査。議会事務局から説明を受ける。
議会運営…一日1委員会
➊一日1委員会制で、無所属議員は通告によりすべての委員会で質問できる。
➋予算決算委員会を常任委員会として設置。予算及び決算は予算決算委員会に付託され、分科会を設置し審査。
【写真下は委員会室。広い!】
議会活性化推進特別委員会
➊議会活性化の取り組みは、議会の議会活性化推進特別委員会における調査・研究に基づく「報告書」により具体化される仕組みとなっている。
➋H22年度に設置された議会活性化特別委員会は、議会基本条例第15条「市民の議会活動への参画の確保」を踏まえ、市民シンポジウム、地域市議会報告会、市民意識の把握について提言。
➌H23年度の議会活性化推進特別委員会は、地域市議会報告会、市民シンポジウム、市民意識調査を実施するとともに、運営組織体制や実施要項案を提言。
議会報告会…テーマ選定方式
➊議会報告会として市民シンポジウムと地域市議会報告会を「実施要綱」で位置付ける。
➋H23年度から始まった豊田市議会の「地域市議会報告会」は、年に2回、土・日の午後に4地区4会場で開催。議員の任期4年間にすべての地域自治区(12)を一巡する計画である。年間で250人を超える市民が参加。経費はポスター・チラシ等で約40万円。
➌若い世代の参加が課題で、認知度を高めるため、チラシ配布やポスター掲示を実施。
➍開催内容は議会運営委員会の主宰とし、4回の地域市議会報告会と1回の市民シンポジウムを5つの常任委員会で責任分担する仕組み。説明資料は所管常任委員会が作成し、議会運営委員会の承認のもと、最終的な校正を行う。
➎報告内容は、新たな試みとして、地域性などを考慮した「報告テーマ」を選定するする方法がとられている。開催時間はおおむね90分とし、冒頭説明10分、議案関連報告25分、質疑応答25分、意見交換会30分程度とされる。
➏質問・意見は当日事前に受付、重複を避ける等の工夫をされている。議会に関する質問・意見は議会だよりなどを通じて掲載する。
➐市民に分かりやすく開かれた議会を実現するため、市議会主催の市民シンポジウムに取り組む。H23年度から議会報告会と合わせて実施。年に1回以上の開催をめざす。経費は講師料が中心で、予算20万円に対し7~8万円。
➑これまでに、議会活性化、健康づくり、スポーツの人材育成などをテーマに、地元大学の教授らを講師とする基調講演、パネルディスカッションを内容として開催。
➒今後の課題として、大学生をはじめ若者や女性などを主体とした意見交換会やシンポジウムの開催、議会PRビデオの作成、議会報告会やシンポジウムの録画視聴、SNSの活用などの検討があげられている。
市民意識調査
➊特別委員会の提言を踏まえH23年度からスタート。市側が行う市民アンケートに合わせ、市議会に対する調査を議会として実施するもので、6492人に配布、回収率は4022人の61.7%。
➋市議会への関心度や議会基本症例の認知度、議会や議員への要望などを設問とする意識調査で、結果から、議会側からの情報周知の徹底、女性や若年層へのアプローチなど情報発信に工夫が必要なこと、市民と直接接する機会の重要性、年齢層ごとに異なるニーズへの対応が課題とされる。
➌意識調査は継続することとされ、設問は定点調査が必要なことから必要に応じて見直すとされる。
➍経費は、市の意識調査と一緒に実施したため5万円程度。H26年度では議会単独で実施するとされる。
【議決すべき事件に関する条例】
➊地方自治法第96条第2項の規定に基づく対応で、基本構想・基本計画をはじめ、都市計画マスタープラン・健康増進計画・教育振興計画・環境基本計画・子ども総合計画など5年以上の総合的・体系的な計画を対象とする。
➋計画の議案は概要版で提案されることから、議決事件を拡大することによる議会運営への影響は特段にないとのこと。議会側の計画策定への監視・評価が強まることが効果とされる。
【参考】豊田市議会・議決すべき事件に関する条例のページ
考察・所見として
➊豊田市議会では、「議会活性化はエンドレス」として、市民シンポジウムの開催や市民意識調査の実施など、開かれた議会に向けた意欲的に取り組まれている。学びたいところだ。とくに、議会運営委員会とは別に、議会活性化に特化した議会活性化推進特別委員会を設置し、継続的な取り組みとしている点は、特別委員会にこだわる必要はないが、先送りをせずに「決める議会」を体現するうえで、議会内における検討の手法として参考にしてよいだろう。また、報告会やシンポジウムなどの取り組みを「開催要綱」としてまとめられている点も学びたいところだ。
➋議会報告会の「テーマ選定方式」は地域性によるものの、市民への関心を高める上で有効な方策の一つである。
➌議会に対する市民意識調査は、議会活性化に対する市民第三者評価により課題を整理し次の対策を講じていくという意味で、大いに参考にしたい。豊田市議会では、議会への関心度が過去の30%から35%に上がっているとの傾向が把握されている。長野市の「まちづくりアンケート報告書」同様、長野市議会においても、市民の動向を長期的に観察・把握していく視点からアンケートの実施について検討の必要があろう。
➍議決すべき事件の拡大は、総論・骨格的な総合計画をはじめ、各政策分野の基本計画に対する議決責任を果たし、策定から実現へのプロセスに監視と評価を行き渡らせる意義がある。長野市議会においても具体化を図りたいところである。
➎豊田市議会では、議員研修会が積極的に取り組まれ、H19年度から「年に3回」のペースで実施。最近では市民シンポジウムを含むものとされているが、「地方行政の在り方」「モノづくり」「マイナンバー制度」など学識経験者や政府担当者らを講師とした多彩なテーマで行われている。学びたいところである。