16日、議会最終日、原水爆禁止長野地区協議会から提出された「原発再稼働の中止を求める請願」(総務委員会付託)、信州・生活者ネットワークながのから提出された「川内原発をはじめとする原発再稼働をさせず廃炉とし原発ゼロ政策への転換を求める請願」(福祉環境委員会付託)は、いずれも紹介議員となり可決に尽力しましたが、賛成少数で否決されてしまいました。残念な結果です。
本会議で、請願不採択の委員長報告に反対討論を行いました。以下は討論の内容です。写真は鹿児島県の川内原発。
33番、市民ネット、布目裕喜雄です。
原水爆禁止長野地区協議会から提出された請願第38号「原発再稼働の中止を求める請願」を不採択すべきものとした総務委員会委員長報告に反対の立場で討論します。
この請願は、福祉環境委員会に付託され、不採択すべきものとされた請願41号「川内原発をはじめとする原発再稼働をさせず廃炉とし、原発ゼロ政策への転換を求める意見書の提出を求める請願」とめざす願意は同じものです。
今日、電源開発が建設中の青森県大間原発について、安全審査を原子力規制員会に申請したと報じられました。使用済み核燃料から抽出したプルトニウムとウランを混合してつくるMOX燃料で運転する原発で、核燃料サイクルの一環とされるもの、世界初となるものです。
しかしながら、核燃料サイクルは、原発以上に未完の技術です。原子力ムラを形成してきた懲りない人たちの科学技術に対する慢心ぶりには、怒りすら覚えます。
原発は、そして核は、人類には制御できない、人類と共存できないことを冷徹に直視すべきでしょう。福島原発事故から何を学んだのでしょうか。
さて、原子力規制員会は、9月10日、九州電力川内原発1号炉及び2号炉の再稼働に向け、基準に適合していると結論付けた「審査書」を正式に決定しました。
しかし、規制委員会委員長自身が「新規制基準を満たしているだけで、安全を保障するものではない」と繰り返しています。新規制基準に形式的に適合したとしても、安全性は全く担保されていないのです。
そもそも、「新規制基準」は、福島原発事故の過酷事故が未だ収束せず、12万人が避難生活を余儀なくされている中、事故原因の究明も、放射能汚染水対策も、廃炉への道も見えず、コントロールもブロックもできてない、そのような現実を直視してつくられたものではなく、不十分な基準なのです。
しかも、大規模な火山噴火に対する耐震安全性について、カルデラ巨大噴火の発生や火砕流の被害のリスクは十分に検討されておらず、火山学会など専門家からは異論が相次いでいます。また、30キロ圏内のすべての市と町で避難計画が一応策定済みとなっていますが、その実態は、病院入院患者や福祉施設入所者などの避難では、10キロ圏内17施設では避難先が確保されているものの、10~30キロ圏内の227施設の避難先は「事故後に対応する」とされるように根本的な不備が指摘されているのです。
薩摩川内市民の85%が再稼働に反対しているように、住民理解も得られないままとなっています。
川内原発周辺の市町村においても、全てが再稼働を容認しているわけでは決して ありません。
福島原発の事故以降、原発は2013年9月に関西電力大飯原発が停止して以来、原発ゼロを実現し、今年の猛暑も乗り切ってきています。この現実に立脚しようではありませんか。
化石燃料のエネルギー供給に比重がかかり、二酸化炭素等の排出量の増加を懸念する意見があります。だからこそ、再生可能エネルギーへの大転換を促進しなければならないのです。再生可能エネルギーの規模が拡大するまでの当分の間は、LNGガスコンバインド発電など高効率の火力発電を促進し電力供給の主力として活用する道があるのです。原発の再稼働によりさらに産み出される使用済み核燃料をどう処分するのか、その技術が確立されていないことを考えれば、その答えは自ずと明らかです。
また、電力会社の地域独占体制を見直し、スマートグリッド(次世代送電網)の普及を図るとともに、全国をまたぐ送電網の整備により、原発に依存しない現在の発電態勢で、全国的なエネルギー供給が可能となります。
原発は制御のできない技術であることを出発点とし、原発ゼロに向け、無謀な原発の再稼働を止めることは、福島原発事故の最大の教訓です。
最後に、関西電力大飯原発の差し止め訴訟における福井地裁判決から引用します。
判決は、「事故が起きたら半径250キロ圏内の住民の人格権が侵害される」としたうえで、「関西電力は原発稼働が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いという問題を並べて論じるような議論に加わり、議論の当否を判断すること自体、法的には許されない。原発停止で多額の貿易赤字が出るとしても、豊かな国土に国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の損失である。関西電力は、原発稼働がCO2(二酸化炭素)排出削減に資すると主張するが、福島原発事故はわが国始まって以来最大の環境汚染であり、原発の運転継続の根拠とすることは甚だしく筋違いである」と。
総務委員会においても福祉環境委員会おいても、不採択とすべき意見において「原発に依存しない社会を築いてほしい」との意見が示されています。
今、重要なことは、「願い」を「形」にしていくことでしょう。そのために、原子力発電をベース電源とする国策の転換を国に求めることでしょう。
原発の再稼働をやめさせることはその第一歩です。
私たちの国の将来を豊かな想像力を持って切り開くことを訴えて、反対討論とします。