5月27日、米国のオバマ大統領が被爆地・広島を初めて訪問しました。
2009年のプラハ演説に匹敵する所感演説と評価する声もありますが、原爆投下の是非や核兵器削減に向けた具体策には言及せず(できず)、物足りなさを感じた皆さんも多いのではないでしょうか。
とはいえ、米国大統領の広島訪問の意義は歴史的というべきでしょう。
そして、演説もさることながら、原爆資料館を訪問し、被爆者と声を交わしたことは素晴らしい決断だったと思います。
来年1月には退任するオバマ大統領の広島演説で、直ちに国際社会が核兵器削減に向けて動きだすとは考えられませんが、核なき世界に向けた一歩になることを期待したいと願います。
社民党の又市征治幹事長の談話を紹介しときます。
2016年5月27日
オバマ大統領広島訪問について(談話)
社会民主党幹事長 又市征治
1.伊勢志摩サミットの閉幕後、核兵器を使用したアメリカの現職大統領として初めて、オバマ大統領が被爆地・広島を訪問した。社民党は、2009年のプラハ演説で、核兵器を使用したことがある唯一の核保有国として行動する道義的責任があると述べ、先頭に立って、核兵器の役割を減らし、最終的には核兵器のない世界の平和と安全を達成する決意を表明し、ノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領が広島・長崎を訪れることを願っていた立場から、様々な困難の中、今回のオバマ大統領の広島訪問が実現したことを歓迎する。
2.社民党は、今回の訪問が被爆の実相を直視し、現在の最重要課題である核兵器廃絶実現に向けて、具体的な行動を示す場となるよう願っていた。オバマ大統領は、短い声明を読み上げ、「大量の核兵器を持つ、アメリカなどの国々は恐怖から脱却し、核兵器のない世界を追求しなければならない」などと述べ、改めて「核なき世界」を実現する決意を表明した。今回の広島訪問によって、核兵器は二度と使われてはならないということを世界に想起させることになったことを評価する。原爆資料館を見学し、平和記念公園で原爆慰霊碑に献花し黙祷を捧げ、直接被爆者と握手しその声を聴いたオバマ大統領に、被爆の実相、核兵器の非人道性が届いたものと信じたい。
3.残念なことに、オバマ政権の核兵器削減数は、冷戦後の政権で最も低い水準となっている。2015年核拡散防止条約(NPT)再検討会議は、アメリカの中東非核会議への反対や、核の非人道性を重視して核兵器禁止条約に踏み込もうとする非核兵器国と核保有国の対立によって、合意文章の採択ができなかった。アメリカはじめ核兵器保有国は、核弾頭のさらなる削減を進めるとともに、NPT第6条で要求されている、全世界で確証可能な核兵器の廃絶交渉を開始し、核兵器廃絶条約締結実現のために努力すべきである。また、30年間で1兆ドルかけてアメリカの核兵器産業を立て直し、核兵器の近代化進めるという計画を中止すべきである。核兵器が人類に対して与え続けている脅威を減らすために、核軍縮に向けた、現実的かつ着実な努力を積み重ねるよう求めたい。オバマ大統領の広島訪問が、全世界の非核化につながることを期待する。
4.原爆が投下されてから71年が経ち、被爆者の高齢化はいっそう進んでいる。被爆者の残された課題を解決する時間も限られ、援護対策の充実と国家の責任を果たすことが急務となっている。2009年にオバマ大統領の広島訪問を当時の外務省が断った経緯が明らかになっており、昨年の平和式典では安倍首相は非核三原則に言及しなかった。安倍政権はオバマ大統領の広島訪問を「政治利用」するのではなく、被爆者援護に対する消極的姿勢を改め、原爆被害を根本から補償しようという立場に転換すべきである。そして、米国の「核の傘」に頼り、「安全保障政策上、核抑止力が必要」との立場を脱して、唯一の戦争被爆国として、強いイニシアチブを発揮すべきである。さらには真珠湾攻撃から75年、安倍首相は太平洋戦争開戦の地のハワイを訪れるべきである。社民党は、今後とも被爆者はじめ日本国民の核兵器廃絶と平和への願いに寄り添い、全力で取り組む。
以上