総務委員会の行政視察報告の第二弾、盛岡市編です。5月18日に訪問しました。
盛岡市
人口298,348人、面積886.47㎢、人口密度332.09人/㎢。岩手県の県都、北上平野の北部に位置する。2008年4月から中核市。
公共施設は「資産」とする「資産マネジメント」
盛岡市の視察テーマは、公共施設アセットマネジメント。
公共施設の見直しにあたっての「公共施設保有適正化・長寿命化中期計画」及び「実施計画」、市民との合意形成などを課題とした。
公共施設アセットマネジメントとは、アセット=資産のマネジメント=管理・運用の意味。施設・設備を資産としてとらえ、損傷・劣化の予測や管理運営の費用対効果の把握などにより、効果的・効率的に維持管理する手法のことをいう。
公共施設の見直しにあたり、箱モノやインフラを行政の資産と位置づけ、トータルな効率的管理・運用を図るもので、多かれ少なかれ、この手法を取り入れている。一番の特徴は、財政の管理の下で財政執行と一体で資産運用を位置づけている点といってよいと考える。
盛岡市では、「公共施設保有の最適化と長寿命化のための基本指針」(H25)、「公共施設保有適正化・長寿命化長期計画」(H26年、20年計画)を策定、そのうえで当初10年間の「公共施設保有適正化・長寿命化中期計画」と向こう3年間程度の具体的な「実施計画」を策定し具体化を図っている。
これらの基本方針・長期計画・中期計画は、長野市の「公共施設マネジメント指針」に基づく「公共施設再配置計画」及び「長寿命化計画」に相当するもので、国が策定を求める「公共施設等総合管理計画」にあたるものである。
【参考…すべてPDF概要版】
➡盛岡市「公共施設保有の最適化と長寿命化のための基本指針」
➡盛岡市「公共施設保有適正化・長寿命化長期計画」
➡盛岡市「公共施設保有適正化・長寿命化中期計画」
公共施設再編は財政部が所管
盛岡市の取り組みの特徴は財政部の資産管理活用事務局が所管していることである。因みに中野市は総務部行政管理課が所管している。
「中期計画」では、庁舎や学校、市営住宅など367施設を対象に、10年間で必要な維持更新費用を542億7600万円と算出、長期計画策定前の推計よりも92億7400万円の縮減を見込む。
面的な縮減は結果として算定されるとしている点も特徴といえよう。
施設分類ごとに必要な維持更新費用が明示されている点はわかりやすい。
長寿命化においても耐用年数80年をめざし、築後20年・40年・60年のサイクルで修繕・大規模改修を図るとされる。
財政部に所管を置くことで、当然、担当課とのヒアリング・事前協議を前提にしつつ、在世的な短期・中期・長期見通しが立てやすく、かつ着実な執行が図れる点にメリットがありそうである。
公共施設マネジメントの庁内の推進体制の構築という観点から、財政部としっかり連携をとれる横断的連携のあり方として、問題意識は共有したい。
岩手県立大学との連携
盛岡市は公共施設マネジメントにH21年度から取り組んでいる。
自治体経営という視点からのいち早い取り組みとなっている。
H22~23年度では、岩手県立大学の盛岡市まちづくり研究所と連携し調査研究が行われ、長寿命化と総量縮小が有効であるとの提言を受けているそうだ。
盛岡市まちづくり研究所は,盛岡市から岩手県立大学への共同研究の申し入れを受けて,平成20年度に岩手県立大学によって設置されたもので、同研究所は,岩手県立大学地域政策研究センター内にプロジェクト研究室の一つとして設置された地域づくり研究室内に位置付けられている。
そして、H24年度には「資産管理活用事務局」が設置され、前述したように基本方針、長期計画の策定につながっている。
「地の利」を生かした地元の大学との連携はうらやましく思う。
サービスの維持が目標
人口減少、財政の硬直化の現状を踏まえ、維持更新費用の増大を抑制することに主眼があるのだが、市民サービスの維持が強調されている点はおさえておく必要がある。
そのために、施設の複合化などによる最適化を図ることを基調としている。
施設の複合化では、市内に32ある福祉推進会の区域ごとに、今ある施設を活用した地域拠点施設を確保することを重点とする。
市民との合意形成
無作為抽出市民36人による「市民討議会」や、延べ210人が参加した「市民フォーラム」が開催されている。公共施設のマネジメントの必要性に主眼を置いたものである。総論としての理解を深めようとの意図である。
個別施設再編にかかる中期計画づくりでは、中学校区単位での「市民意見交換会」(市内30地区で全10回延べ385人が参加)や、「市民説明会」(市内32地区、全10回延べ365人参加)に取り組まれている。
ここにおける特徴は、施設再編の具体は市行政が原案を作成し、説明会等で市民合意を形成する手法がとられている点である。
盛岡市は、小中学校の施設数などは長野市とほぼ同程度であるが、支所や公民館などの施設が少なく、施設状況の違いを踏まえる必要があるが、私的には、施設再編の具体は市民参加によるワークショップ等によりゼロから積み上げていく手法を推奨したいところである。
地域の拠点施設のサービス水準の統一、支所・出張所の配置見直しが課題
今後の課題として4点指摘された。
一つは、各地域に地域拠点施設を確保する計画について、地域拠点の名称やサービス水準の統一が必要であること、二つにマイナンバー制度やコンビニ交付などの進展による住民ニーズの変化を把握し、支所・出張所の配置の見直しを行う必要があること、三つに県や広域市町での公共施設最適化を図る必要があることが挙げられた。
さらに、自治公民館(長野市での地域公民館)に対する助成制度や管理運営の地域譲渡を含め見直しが必要とされることが挙げられたが、地域公民館の管理運営に行政がどこまで関与しているのか、詳細は不明のままである。
最初の3点は、長野市としても問題意識を共有し、さらに検討していく必要性がある。
長野市では…芋井地区でワークショップ始まる
公共施設マネジメント指針に基づき、再配置計画の策定に向けたモデル地区として芋井地区が選定され、5月21日から4回にわたる市民ワークショップが始まります。
実質的な意見交換となる2回目以降に日程を併せて傍聴してみたいと思っています。
市の行政管理課と芋井地区住自協が主催するもので、一般財団法人長野経済研究所、日本管財㈱が運営を支援するとともに、アドバイザーとして前橋工科大学の堤洋樹・准教授が参画します。
公共施設のあり方調査研究特別委員会では、13日に芋井地区の各施設を視察しました。
芋井地区の公共施設の現状や視察で考えたこと等は、改めて報告したいと思います。
もりおか歴史文化館も視察
盛岡市・議会事務局の計らいで「もりおか歴史文化館」を案内いただいた。
もりおか歴史文化館は、旧岩手県立図書館の建物を増改築し、H23年7月に盛岡城跡公園(岩手公園)の一角に開館した社会教育施設で、観光・交流拠点にもなっている。
驚いたことは、修学旅行の訪問研修先になっていること、18日だけで9つの中学校を受け入れている。岩手県内どころか北海道の中学校からも訪問されているのだ。奥羽・蝦夷の歴史を学ぶことができるということなのだろうか。
盛岡藩の歴史を勉強させてもらったが、魅力ある公共施設という点からも学ばなければならない。