9日~10日、静岡県浜松市の舘山寺温泉で、私鉄中部地連主催(愛知・岐阜・三重・静岡・長野)の交通政策フォーラム2016が催され、私鉄議員団の一員として参加しました。
全国のフォーラムに続く地連版の開催となります。80人が結集しました。
メインテーマは、「公共交通の安全と安心」。
「高速・貸切バスの安全・安心回復プラン」と軽井沢スキーバス事故対策検討委員会がまとめた「中間整理」の意義と課題を内容とする勉強会でした。
事故対策検討委員会では夏までに「総合的な対策」の取りまとめを行うとしています。
「中間整理」は、規制緩和後の貸切バス事業者の大幅な増加、監査要員体制、人口減少・高齢化に伴う運転手の不足等の構造的な問題を踏まえつつ検討されたもので、法令順守しない悪質な事業者には、市場から撤退させることも含め厳しい態度で臨むことが必要であるとの認識のもとにまとめられたとされます。
「速やかに講ずべき事項(H28年中)」、「今後具体化を図るべき事項」、「引き続き検討すべき事項」の3段階に分けた「再発防止策」の論点が中間整理されました。
「速やかに講ずべき事項」を中心とした再発防止策のポイントは次の通り。
➊貸切バス事業者に対する事前及び事後の安全性のチェックの強化
*複数回にわたり法令違反を是正・改善しない事業者に対し、事業許可の取り消し等の厳しい処分の実施。
*輸送の安全に特にかかわる施行を中心とした処分量定の引き上げ。
➋旅行業者との取引環境の適正化、利用者に対する安全性の「見える化」
*利用者への貸切バス事業者名の提供
*貸切バス事業者と旅行業者間で取り交わす書類において、運賃・利用金の上限・下限額の明記及び手数料の確認
*運賃・料金の情報に関する通報窓口の開設
➌運転者の技量のチェックの強化
*新たに雇い入れたすべての運転者に対する適性診断の義務付け
*初任者及び事故を起こした運転者に対する実技訓練の義務付け
➍ハード面の安全対策の強化
*ドライブレコーダーによる車内外の映像の記録・保存、当該映像を活用した市道・監督の実施
*シートベルトの着用徹底や補助席へのシートベルトの設置の義務付け
軽井沢での事故後に、国交省が196事業者(ツアーバスを運行する貸切バス事業者)を対象に行った緊急監査では、労働基準法違反が166事業者(84.75%)、改善基準告示違反は119事業者(60.7%)にも及んでいることが判明しました。(配布資料より)
バス協会加盟の事業者も相当数含まれているとのことです。
とにかく、実効性のある厳しい対応が求められています。
フォーラムでは自治体議員の活動報告の時間が設けられ、私からは3月議会における公共交通ビジョンの早期具体化の質問を取り上げ、 間に合わせの「市政直行便」を作成し、簡単に報告しました。
➡市政直行便NO.45号外
特に、旅行事業者に対する自治体の助成において、貸切バスを利用する場合に、安全の確認を助成条件としチェックすることを求めた質問と行政の対応をメインにしました。
小さなことかもしれませんが、市行政の責任ある取り組みとして広がることを期待しています。
また、今回の問題提起を受けて、例えば小中学校の社会見学や修学旅行で利用される貸切バスの運行委託契約において、適正な契約となっているのかチェックが必要であると痛感しています。
これから調査してきたいと思います。
【参考】国交省が310社を対象に行った集中監査の結果と報道より
➡国交省=軽井沢スキーバス事故を受けた集中監査の実施結果(速報)PDF版
➡『軽井沢のスキーバス転落受け 国交省が業者を集中監査 7割超で法令違反 健診未実施や休息不足』【160429付信濃毎日新聞】
北佐久郡軽井沢町のスキーツアーバス転落事故を受け、国土交通省が全国の貸し切りバス事業者に対して実施した集中監査で、310社のうち県内の4社を含む240社(77・4%)で道路運送法などの法令違反があったことが28日、分かった。運転手の健康診断未実施(53社、17・1%)など安全に関わる違反があった。
国交省は、違反業者のうち130社について、車両の一部が一定期間、使用できなくなる行政処分を検討している。事業許可取り消しなどの重い処分はない見通し。ほかの業者に対しては、違反事項を改善するよう行政指導している。
集中監査は全国約4500社のうち、過去に法令違反があった会社を中心に1~3月、事業所に抜き打ちで立ち入り、実施した。
健康診断未実施のほか、拘束時間の超過や休息不足など(60社、19・4%)、運賃の下限割れなど(72社、23・2%)も判明した。
法令違反のあった240社のうち、122社が既に違反項目の改善を完了した。32社は改善中、86社は着手していない。国交省は5月中旬までに違反事項の全てを改善するよう指示している。
国交省は軽井沢町の事故の再発防止策として、法令違反を繰り返し、改善しない業者を事業許可取り消しの対象とするなど、行政処分を厳しくする方針を既に決めている。➡『厚労省の貸し切りバス業者集中監査 長野労働局、県バス協会に管理徹底要請』【信濃毎日新聞160429付】
長野労働局は28日、北佐久郡軽井沢町のスキーツアーバス転落事故を受けて厚生労働省が貸し切りバスの運行業者に実施した緊急調査で、県内で対象に選んだ5事業所全てで労働時間などで違反が認められ、監督指導を行ったと明らかにした。結果を踏まえて同日、県バス協会(中島一夫会長)に対して労働時間の管理徹底を要請した。
同局によると、県内5事業所の調査は2~3月に実施。厚労省が運転手らの労働時間を定めた基準にいずれも違反が認められ、このうち運転開始から4時間以内などと定めた連続運転は4事業所が違反し、最大16時間とする1日の拘束時間も3事業所が違反した。健康診断の未実施も2事業所が該当した。
この日は、同局で岡崎直人局長が県バス協会の湯本卓邦副会長に要請書を手渡した。湯本副会長は「事故後、乗務員の管理に一層の注意を促している。加入会社に該当例はないと考えているが、協会を挙げて注意喚起したい」とした。事故後に3社が入会して会員は55社になり、ほかに13社が入会の意向を示しているとも説明した。