2月2日から4日、市議会会派「改革ネット」で行った行政視察の報告です。
愛知県岡崎市では、岡崎ビジネスサポートセンター「Oka-Biz」と中心市街地活性化について、静岡県藤枝市は農商工連携・6次産業化推進ネットワーク、千葉県柏市では、長寿社会のまちづくり事業=柏地域医療連携センターと豊四季台プロジェクト、柏の葉国際キャンパスタウン構想について勉強してきました。順次、簡単に報告しながら、今後の長野市政に活かすべきところを活かしていきたいと思います。
まずは、岡崎市です。
岡崎市
愛知県の中央に位置し、古くから城下町・宿場町として栄える。徳川家康の生誕地で、江戸幕府の礎を築いた三河武士発祥の地である。全国的には「八丁味噌」の産地として知られている。
人口372,357人、面積387.2㎢、人口密度957.32人/㎢。中核都市。
岡崎市の視察テーマは、岡崎ビジネスサポートセンター「Oka-Biz」と中心市街地活性化の2点。
「Oka-Biz」=売上アップを応援する「小さな企業の応援団」
「Oka-Biz」は、岡崎市と岡崎商工会議所が共同運営する中小企業支援の経営相談窓口である。H25年10月に開設されたセンターで、中心市街地に整備された岡崎図書館交流プラザ「りぶら」内に事務所を置く。
岡崎市派遣のビジネスコーディネーター3人が中心となり、他に個人事業主やIT関連会社員などのスタッフがITアドバイザーやデザインアドバイザーを務める。また、岡崎商工会議所派遣のビジネスコーディネーター4人がサポートする。
また、岡崎信用金庫(市の指定金融機関でf-Bizに研修派遣している)など金融機関とも連携している。
専門コーディネーターを市独自に委嘱し、商工会議所と共同運営されている点がミソである。
無料で相談…相談件数は年に1691件、当初目標の3.3倍に。
H26年の年間相談件数は1691件、月間相談件数は163件に及び、当初目標の3.3倍に上っている。相談者は「6週間待ち」というから凄い反響ぶりである。
1回につき1時間が相談時間に設定されているが、相談は新規クチコミ率が78%、相談リピート率73%という数字で、相談に対するサポートに満足し、そのことがクチコミでさらに相談を広げているようだ。
また、「Oka-Biz」を通した年間創業件数は34件(岡崎市全体では131件)で、125人の新たな雇用創出効果があるとされている。
相談料は無料、運営費は人件費が中心で年間6000万円である。商工会議所からの派遣コーディネーターの人件費も市が負担する。
岡崎市内の事業社は約15000社で、商工会議所加盟は3000社。相談事業者の約半分が商工会議所加盟事業者とされる。半分は未加盟の事業者ということになる。
当然、商工会議所も中小企業相談所を開設している。互いに連携し補完しあってることを前提に『中小事業者へのリスペクトを忘れず、ニーズに答えようとする姿勢が「Oka-Biz」への訪問・相談につながっているのでは』と市側は述べる。
相談方法がわからない」と悩む中小企業・個人経営者の相談ニーズに的確に対応
H24年に行った約150社を対象とした事業者アンケートから、「もっと売り上げを伸ばしたい」25%、「新商品の開発に力を入れたい」13%、「新分野への販路開拓」11%、「情報発信」16%といった経営課題を持つ一方、その課題の相談相手は、税理士や会計士、商工会議所等が約半分で、「相談したことがない」「相談方法が分からない」等が25%に上ることが判明し、何とかしようとの問題意識から、富士市産業支援センター「f-Biz」の取り組み、なかんずくf-Bizの小出宗明センター長に学び、「Oka-Biz」の発足に至ったものである。
成果を上げる4つのポイント
「Oka-Biz」が掲げる4つのポイントは、➊真のセールスポイントを活かす、➋ターゲットをしぼる、➌連携「つながり」を活かす、➍知ってもらう、「そしてお金をかけずに」だそうだ。
中小事業者に対するリスペクトの念が支えていることを忘れてはならないだろう。
老舗和菓子屋「小野玉川堂」の成功事例
大正創業の家族経営の老舗和菓子屋。創業より大きな釜で薪焚きのあんこが美味しいと評判、既存の顧客は離れてはいないが、新規顧客の家宅が進まず、売り上げは右肩下がり。売上アップを相談するため「Oka-Biz」へ。
「ターゲットの絞り込み」に猫、犬の愛好家をターゲットにした展開を提案、「連携」では殺処分課題に取り組むNPOと連携した商品開発を、「知ってもらう・情報発信」ではSNSの活用を提案。
提案が『肉球羽二重餅』に結実し、ネットで大きく取り上げられ、新たな顧客開拓に成功、売り上げ増を実現したとのことだ。ワンニャン・ファンの心をつかんだ商品開発、発売日も11日(ワンワン)、22日(ニャンニャン)限定、うまい売り方だ。
➡「小野玉川堂」のホームページへ
他に、「鋼材切断」や「薬品卸」、「米穀」などの業務分野での成功事例を紹介いただいたが、省略。
「Oka-Biz」「f-Biz」から見えてくる課題
中小企業、とりわけ個人経営事業主にとっての「力強い味方」になっていることが大きな特徴である。
相談の行き場を持っていない個人経営者にとって、「隙間を埋める経営相談窓口」として機能している実例である。地場産業を支える中小・個人経営者への支援体制として極めて有効な手立てとなっている。
「f-Biz」、「Oka-Biz」等の取り組みは、経済産業省では「中小企業の経営相談のモデル」として全国展開が図られつつある。
「Oka-Biz」の取り組みを活かす…実は、長野市議会で既に公明党市議団が取り上げた課題である。(H27年6月定例会)
市長は、「商工会議所や商工会の経営指導員による相談や、県中小企業振興センターに設置された” よろず支援拠点”の相談業務、またものづくり支援センターにおける支援等によって、広く相談の機会は提供されている」とし、「f-BizやOKa-Bizのような専門コンサルタントによる相談窓口の設置は今後の研究課題」との考えを示すにとどまっている。
「百聞は一見にしかず」で訪問したものである。
経済団体等が行う相談窓口や”よろず支援拠点”の相談機能が、個人経営者等の相談ニーズに応えるものになっているのか、相談を通して、新規創業や売り上げアップにつながる事例をどれだけ創り出せているのか、地域地場経済力のアップへの有効度など、十分な検証が必要である。
特に、中小企業支援に「スキマ」がないのかといった視点から検証し、次につなげたい課題である。