2月に入って初めての更新です。
1日は、標題の交通政策実現で国交省との交渉に。
そのまま東京に泊まり、2日から4日にかけては市議会会派「改革ネット」で行政視察(愛知県岡崎市~静岡県藤枝市~千葉県柏市)と県外に出っ放し状態でした。
iPadを携帯しつつも、更新ままならず…。ご容赦を。
行政視察の報告は改めて。
まずは本論「交通政策実現で国交省に要請」です。
2月1日、東京の衆議院第一議員会館で開かれた私鉄総連の16春闘・交通政策要求実現中央行動、国土交通省交渉に参加しました。
毎年、この時期に催しているもので、バス・鉄軌道・タクシーに関わる公共交通政策・施策の展開に向けた国土交通省への要請活動がメインです。全国から単組の代表や自治体議員の代表ら160人余りが参加し、意見交換が行われました。
交通政策基本計画の具体的な施策推進を求める
全体会では、新しく策定された交通政策基本計画に基づく施策の推進にあたり、法制上・財政上の支援の充実、進捗状況の見える化とフォローアップ、実効性ある要員不足対策、自治体における地域公共交通網形成計画及び同再編実施事業計画の策定に向けた人材支援・育成の強化、交通系ICカードの普及や10カードへの対応支援、白タク行為の合法化につながる自家用車ライドシェアの解禁反対、公共交通利用エコポイント制度など利用促進に向けた施策の拡充、駅やバスターミナルにおける案内表示の多言語対応、貸切バス乗降場やタクシーベイの整備促進などを求めました。
国土交通省の2016年度予算案では、地域公共交通確保維持改善事業費は、対前年度比2割減になっていることに対し、国交省側は、当初予算案では229億円で前年度比79%だが、2015年度補正予算案で49億円計上し、トータルでは278億円、前年度比96%を確保したとします。
因みに「公共交通ネットワークの再構築」としては271億円(0.93)で、2015補正を含め320億円(1.10)となっています。
しかしながら、新しい支援スキームは浮かび上がっていません。
国交省側の答弁は、全体的に「それぞれ喫緊の課題として認識している」とするものの、課題を解決するための具体は「検討中」の域を出ません。
二つの論点…軽井沢バス事故と自家用車ライドシェア
ツアーバス事故はなぜ防げないのか
議論の焦点になったのは、1月15日に軽井沢町で発生したスキーツアーバス事故です。
なぜ防げなかったのか、規制緩和を見直し策定された「高速・貸切バスの安全・安心回復プラン」の実効性の確保、国交省の監査体制の強化などが論点です。
2012年4月に発生した関越自動車道における高速ツアーバス事故を受けて、国土交通省では、2013年4月に「高速・貸切バスの安全・安心回復プラン」を策定するとともに、同年8月には「高速ツアーバスから新高速乗合バスヘの移行」や「過労運転防止のための交替運転者配置基準の全面適用」を実施。また、2014年4月からは、安全と労働環境の改善コストを反映した「貸切バスの新たな運賃・料金制度」をスタートさせました。
まさに、貸切バスの信頼回復に向け、「貸切バス事業者安全性評価認定制度」を含め、行政・事業者・労働組合が一体となって取り組んでいる最中での悲しい、そして憎むべき事故です。
事故の原因調査が進むにつれ、運転手の健康診断の未受診や点呼の未実施など、日を追う毎にバス会社の運行管理の杜撰な実態が明らかになるとともに、ツアーを募集した旅行会社が法定基準の下限額を下回る運賃で発注しているなど、受注したバスの運行会社の責任はもとより、「貸切バスの新たな運賃・料金制度」を平然と無視する悪質な旅行会社の存在も浮かび上がっています。
軽井沢のツアーバス事故は、二重の意味で悔しいものです。一つは未来ある若者の命が奪われたこと、二つは、バス交通事業者に対する安全への信頼性を損なってしまったことです。
少なくともバス協会に加盟するバス事業者、労働組合の組織されているバス事業者では、低賃金・長時間労働が固定化されているとはいえ、新しい改善基準告知への対応等による長時間労働の是正等が図られ、利用者の生命・安全を最優先にした取り組みが図られています。
軽井沢での事故直後から、市民の皆さんから「アルピコや長電は大丈夫?」との声をいただきました。バス交通事業者に対する信頼が揺らいでいることを痛感しています。
国交省側は、事故は「痛恨の極み」としたうえで、バス事故対策検討委員会を立ち上げ、3月までに中間まとめ、夏ごろまでに全体まとめを行い、対策を講じる予定だとします。
「関越自動車道でのツアーバス事故以後に講じてきた対策の課題をまずは整理している段階」としました。
国交省による抜本的な規制強化、悪質な事業者の淘汰が進められなければ、バスへの信頼を取り戻すことはできません。
国交省は、バス・トラック併せて12万事業者を365人の監査要員で対応している厳しい現実への理解を求めますが、今の監査体制では追いつきっこありません。
バス事業者の新規参入について、「許可制」から「認可制」に戻し、規制と監督を強化すべきといった意見が現場からは出ています。当然だと思います。
これに対し、「バス事業参入時のチェックを強化したい」とも述べる国交省…対策検討委員会の成り行きに注目です。
また、国内旅行のみを扱う旅行会社への監督・指導は「県」となっていることから、県における立ち入り検査等の実施にも、目を向けていかなければなりません。
安全二の次の自家用車ライドシェア
もう一つの論点は、「自家用車ライドシェア」の問題です。
「自家用車ライドシェア」とは、自家用車の相乗りで、一般の運転手がお金をもらって乗客を運ぶ仕組みのことで、米国では認められていますが、日本では、道路運送法に違反する「白タク行為」(自家用車を使い無許可でタクシー営業をする違法タクシー)とみなされています。
しかし、新経済連盟(楽天社長・三木谷浩志代表理事)が新たな経済成長の柱の一つとして「シェアリングエコノミー」を提唱。これらを受けて、安倍政権では、公共交通が少ないなど一定の条件を満たした地域限定で、規制を緩める国家戦略特区で解禁しようとの動きを強めているのです。高齢者の買い物や通院、外国人観光客の足として役立てたいとの考えなのだが、かつての「セダン特区」の焼き直し、「民泊」のタクシー版といえます。
全国ハイヤー・タクシー連合会は昨年6月の総会で「国民の安全を脅かし、地域公共交通の存続を危うくする白タク行為を断固阻止する緊急決議」を採択し、業界をあげて導入阻止運動を展開しています。タクシー業界にとっては死活問題です。
自治体レベルでは、京都府京丹後市が、タクシー空白地域での新たな交通手段の確保などを目的に、自家用車を活用したライドシェア(相乗り)を国家戦略特区で実現するよう国に働き掛けています。
【参考】京丹後市の「国家戦略特区ヒアリング説明資料」(官邸HP)
151028京都新聞の報道より
この日、国交省側は、「慎重な検討が必要」とする一方、「過疎地や交通空白地域では、活用を検討していく必要がある」と述べ、地域限定の国家戦略特区の指定を滲ませました。
確かに、人口減少と高齢化が進んでいる過疎地や中山間地域では、住民の「移動」が困難になっています。何とかしなければなりません。
今後、長野市公共交通ビジョンの具体化を考えていく上で、NPOによる過疎地有償運送や福祉有償運送の今後の展開のあり方と合わせ、検討の遡上に上ってくることが懸念されます。取り越し苦労であってほしいのですが…。
自家用車ライドシェアの国家戦略特区の問題は、安全・安心な公共交通の確保という観点から、看過できない動きです。
具体的な動向に着目していきたいと思います。