1月13日~15日、長野市議会議会運営員会で訪問した立川市議会・富士市議会・大津市議会の視察報告です。
備忘録としてポイントのみですが、最後に長野市議会に活かしたい点をまとめてみました。
今後の議会運営員会における議会活性化の取り組みに活かしていきたいと思います。
立川市議会
タブレット端末の活用
H26年9月から導入。逗子市議会の取り組み等を参考にしたとされる。「紙と併用」を条件に、導入が決まる。
機種はiPadairのセルラーモデルで、レンタル方式。33台分で月額レンタル料11万6千円。
ソフトは、東京インタープレイ(株)の「SideBooks(サイドブックス)」を活用し、クラウド使用料として月額9万2千円(ただし、初期費用に8万7千円)。
タブレットのレンタル契約と、クラウドシステムの利用契約は、それぞれ別個に行われている。
閲覧機能と携帯性に優れたタブレットとクラウドシステムの組み合わせにより、議員が議会または地域において議員活動を行う際に、タブレットがあれば、ほかに紙の資料を持ち歩かなくても資料閲覧が可能となる効果や、議員に対する各種情報提供に要する時間が短縮といった効果があるとされる。
委員会のインターネット中継
H26年の決算特別委員会の中継試行に始まり、H27年3月から実施。カメラ等の設備は新庁舎建設時(H22)に設置。ランニングコストは委託費として年額19万円。
市民のアクセスは本会議中継より高く、議会の情報公開が拡大する一方、事務局の事務が増大しているとされる。
立川市議会の特徴は、委員会審査において質問の持ち時間制を採用している点である。1人80分の持ち時間制である。予算及び決算の審査を常任委員会付託方式ではなく、特別委員会の設置で対応していることも背景と考えられる。
市民と議会の意見交換会
20代~50代の市民1200人を無作為抽出し、意見交換会を呼びかけ。参加者は12人くらいで参加率は1%。議会報告会に代わる取り組みの一環。
2月には、介護・子育てをテーマに開催。
議員内研修会
H26年4月の議会基本条例を制定後、議員からのテーマや講師、実施時期の提案要望を受けて、事務局が手配し実施。年2回開催。
富士市議会
議会モニター
町内会連合会や商工会議所、NPO協議会などから推薦された5人と公募市民5人の計10人に議会モニターを委嘱し、議会傍聴等を通して、議会の活性化を図る趣旨。
議員定数を話題にしたところ、傍聴前は過半数が削減だったのに対し、傍聴後には削減反対に転換するなど、市民意識に変化。
決算審査における事業評価
決算審査にあたり、一般会計、特別会計、企業会計から、評価対象事業として3~4事業を選定し、当局側から特別な資料を提出させ、会派ごとに評価シートを作成し、議会でまとめ、市側に提出、意見反映を図ろうとする仕組み。
議会として一本化・一致して当局に要求することに意義があるとされ、当局側も議会の意見を尊重・重視し、予算対応に結びついているとされる。
「議会版事業仕分け」みたいな取組と思われる。
長野市議会の決算特別委員会でも、市民の関心の高い事業については集中審議がされ、委員長報告に盛り込み、当局側の対応を求めていることから、実質的な違いはあまりないと考えられるが、議会が一致して当局側の詳細な資料による事業評価に取り組んでいることは意義がある。
決算委員会は全議員による常任委員会とされ、一般・特別会計と企業会計の二つの決算委員会に分かれて審査している。
長野市議会的には、決算特別委員会の構成・あり方について、充実させる方法、常任委員会化を含め検討することが優先課題と考えられる。
政策討論会
市政に関する重要な政策及び課題に対し、議会として共通認識の情勢を図り、合意形成を得るために取り組まれているもの。議会基本条例の規定に基づく。H23年度から、任期中1回の開催となっている。
議員研修会
議員の資質向上を図るための研修の取り組みで、1年間に2回程度開催。年間10万円を予算化。継続的に行われていることに学びたい。
議会報告会
26小学校区単位に開催。1年度に6箇所、任期4年間の間に市内一巡する計画。議会内で任務分担し6班編成で対応。
決算審査の報告をベースにしている。H27年度の開催では、1会場20人から30人前後で、合計185人の参加。市民の参加が課題である。
当局側は地区ごとに「行政懇談会」を開催しており、議会の報告会でも地域課題の要望意見が多く、市長に「議会報告会における市民要望等の報告」を提出している。
大津市議会
議会ICT化事業とタブレット端末の活用
大津市議会では、H24年、老朽化した議場放送設備の故障を機に、議会のICT化促進を決定。電子採決システムの導入による議員の個別賛否の表示、150インチの大型スクリーンによる議場の多角的活用、議会フロアーへのWi-Fi環境の構築、タブレット端末の導入による議会運営の効率化・情報伝達の即時化・ペーパーレス化に取り組まれている。
議場の大型スクリーンは、インターネット中継と連動するもので、個別賛否状況の表示のほか、タブレット端末の議場持込み可により、質問時の補足説明資料の表示等も可能となっている。タブレット導入により、議会関連資料の電子化によるペーパーレス化、文書保存・管理の効率化、議会運営の効率化が図られるとされる。
システムには、本会議や委員会等で使用する会議同期システム、議会のスケジュールやファイル管理、災害時の情報収集・緊急連絡等で使用するメールや掲示板などのグループウェアを導入、クラウドを使用し多角的な活用に取り組まれている。
タブレット端末市iPadAir(セルラーモデル)で、システムは、日立システムズ㈱「スマートセッション」、グループウェアは「サイボウズOffice」、セキュリティはエムオーテックのパッケージ契約となっている。
タブレットは、全議員および市長・部長、危機防災所管部局に77台配置されている。
議員のタブレット通信費用は、個人負担1/2、政務活動費1/2を充てている。
年間50万ページ、200万円以上の紙代削減効果があり、他にも人件費・電気代などの経費削減が見込まれるとされる。4年間でシステム導入経費が相殺されるとする。
大量の議案関係資料を持ち歩く必要がなくなるとともに、議案関係資料が所属委員会にかかわらず閲覧でき、情報共有に資するとされている。
政策検討会議
議員提案による条例制定などを目指したスキームとして設置されているのが「政策検討会議」である。H23年度の議員政治倫理条例の制定に始まり、「いじめ防止条例」(H24年度)、「議会BCP」(H25年度)、議会基本条例や災害等対策基本条例、いじめ防止条例の改正案(H26年度)を制定。
H27年度には、議会基本条例を具現化するため、議会版実行計画である「大津市議会ミッションロードマップ」を策定。議員任期4年間における議会改革・政策提案の実行目標とその工程を設定するもので、全議員がビジョンを共有し議会力を高めるとともに、議会活動に対する市民への説明責任を果たし「議会の見える化」の推進を図ろうとするものだ。
「チーム大津市議会」の取り組みと称する。
2015第10回マニフェスト大賞で優秀成果賞を受賞。3年連続の受賞で大したものである。
政策検討会議は、交渉会派(3人以上)から提案のあったもののうち議会運営委員会で三動画得られた場合に設置される協議機関で、提案会派を座長とし各会派から代表1名で構成される。
大津市議会(議員38人には1人会派から17人の会派まで8会派があるが、政策検討会議は8会派の代表各1人と提案会派1人の9人で構成される。
この点が長野市議会と大きく異なる点だ。長野市議会は例えば議会活性化検討委員会等を構成する場合、総定数を決めてから会派人数に比例して委員が選出される。大会派に有利な運営が可能となる仕組みである。大津市議会は極めて民主的な運営がされているといってよい。
「チーム大津市議会」と標榜しうる所以である。
また、政策検討会議の議論に資するため、大学等の知的資源、専門的知見を活用するため、「政策検討会議アドバイザー制度」をもつ。龍谷大学、立命館大学、同社大学政策学部・大学院総合政策科学研究科と、それぞれと大津市議会との間で地域連携協定が締結されている。
高等教育機関において、地方行政研究コース等が設けられ、条件が整っているといえよう。
政策提案、議会発議の条例制定は、議会の活性化、信頼される議会の体現にとって大きな課題である。政策検討会議のあり様、その運営の視点、専門的知見の活用という観点から、長野市議会における政策提案・条例制定に向けた仕組みづくりに活かしたいものである。
通年議会
定例会を1回とし、会期をほぼ1年間とすることを条例で規定し、通年議会を具体化している。先行自治体で取り入れられている仕組みで、市長の招集が毎年必要となるものの、従来の議事運営を大きく変更せずに通年議会が可能となるメリットがあるとされる。
通年議会そのものについては、機動的・弾力的な本会議の開催や委員会での充実した調査が可能となり、議案等の提出・受理を行える期間の制限がなくなることがメリットとされ、デメリットとしては、本会議・委員会等の増加により経費が増大(交通費として年間16万円くらい)や地域における議員活動の制約が指摘されているが、デメリットと考える事柄ではないとする。
私自身は市民ネット時代に通年議会の導入を議会活性化の課題に取り上げてきていたが、地方自治法の改正により議長の議会招集権が認められたことから、実質的に変わりはないと判断し、提案を引っ込めてきた経過がある。
しかしながら、大津市議会・議会局からは、議長の議会招集権には、実行上の制限がかなりあり、即応的ではないとの指摘を受けたことから、改めて再考し活性化の課題に取り上げていく必要があると考える。
予算決算常任委員会の設置
大津市議会では、予算・決算の審査にあたり、議長を除く全議員で構成される予算決算常任委員会を設置し一括審査する仕組みを導入している。
議会活性化に関し、先行・先進自治体議会で取り入られている仕組みである。
実は、予算議案等の分割付託が、『行政実例』で「違法」とされていることから、違法性の解消のための手立てとされている。
『行政実例』では、「分割付託は議案不可分の原則に反する」…「議案は一体不可分のもので、これを分割して扱うことはできない」と解釈されているのだ。
『行政実例』が、法令を所管する機関(総務省地方行政課)が示す解釈であって、法令そのものではないことを勘案する必要があるとは思うが、二元代表制のもとにおける議会機能の強化という観点から、より有効な審査方法について、常任委員会の設置も視野に検討することが重要であると考える。
現状の分割付託による審査方法について多角的に検証し、その有効性及びその課題を明確にすることから始める必要がある。
長野市議会の活性化に学びたい点・活かしたい点
長野市議会では、5月に第4回議会報告会を従来方針により開催することを決め、先般、実行委員会が立ち上げられたところである。
議会報告会の充実について、4回目の取り組みを通して、アンケートの意見を踏まえ、改善すべきは改善し、市民の皆さんが参加し意見が言いやすい環境づくりに向けた再検討が求められている。
議会活性化の取り組みについては、前任期においてまとめた活性化課題の検討が早急に問われている。私として、議会運営委員会のもとに「議会活性化検討委員会」(仮称)といった専門検討機関を設け、多面的に再検討・協議していくことが重要であると考えている。
新庁舎に移行し、委員会のインターネット中継をはじめ、検討中の課題について一つ一つ結論を導き出していくことも問われている。
今回の3自治体議会の視察をとおして、学ぶべきところはしっかり学び、信頼され身近な長野市議会の体現に向けて取り組みたいものである。
熟慮の結果ではないが、少なくとも次の5点について、検討していきたいと考える。
➊大津市議会の政策検討会議のような政策提案・条例案を議会として検討・立案する仕組みの導入について検討すること。
➋予算及び決算の審査方法について、現状の審査方法について総括し、二元代表制のもとにおける議会機能の強化という観点から、より有効な審査方法について、常任委員会の設置も視野に検討すること。
➌議会報告会の充実に向け、チーム長野市議会として、班体制による複数箇所での開催や立川市議会の「市民と議会の意見交換会」の利点の導入、市民の関心事をテーマとした報告および意見交換の内容について、検討すること。
➍議会のICT化のあり方について、新庁舎におけるシステム上の議会機能を再点検するとともに、本会議のインターネット中継の充実、委員会のインターネット中継の早期実現について検討を始めること。合わせて、タブレット端末の導入について、政務活動費の活用等を含め、前向きに検討していくこと。
➎通年議会について、議長の議会招集権には、実行上の制限がかなりあり、即応的ではないとの指摘を受けたことから、改めて検討すること。