1029日、総務省自治行政局の海老原諭・市町村課長を招いた「連携中枢都市圏の形成促進に向けた説明会」が長野市生涯学習センターで開かれ、長野地域の連携中枢都市圏を構成する9市町村から担当課職員や市町村議員らが集まり研修しました。
現在、安倍政権による「人口減少対策」、「地方創生」が大きな政治課題となり、人口減少や東京一極集中の是正に向け閣議決定された「ひと・まち・しごと創生総合戦略」(2015~2019)に基づく「地方版総合戦略」の策定が急がれています。
「地方版総合戦略」は、全都道府県、全市町村ごとに人口減少を抑制する具体的な施策や数値目標を盛り込むもので、来年3月までに策定が義務付けられています。
10月31日の信濃毎日新聞の報道によれば、長野県と38市町村が10月までに策定済みで地方創生関連の交付金(1,000万円程度)が上乗せ支給されることになります。
交付金で都市間競争を煽る手法は地方分権・地方自治の観点から、いかがなものかと思います。
長野市は来年3月までに策定を予定しています。
連携中枢都市圏構想は、自治体間の広域連携を促進しようとする仕組みで、本来は「総合戦略」とは別物なのですが、連携事業の中身は各自治体が策定する「地方版総合戦略」と”対”をなす関係になるものと思われます。
そして何よりも、連携中枢都市圏構想は新しい広域行政連携の仕組みであり、安倍首相流「地方創生」の地方行政制度(=地方自治制度)版といえるものです。
説明会では…
説明会では「道州制につながるのでは?」「中心市となる長野市に交付される2億円の交付税が連携協約を締結した市町村に行き渡るのか」「県域を超える連携は可能か」といった質問や疑問が出されました。
「道州制につながるものではない」「地方交付税で支援することになるが、総額微調整の範囲内で、直ちに交付税総額を減らすものではない」「連携協定は自治体間の条約みたいなもので自主的に締結されるもの、都市間競争をあおるものではない」と強調する総務省課長。
強調せざるを得ないところに、「真の狙い」が見え隠れしているような気分で説明を聞きました。
とりあえず、3回シリーズで、連携中枢都市圏構想を考えてみたいと思います。
【その1】…長野地域における「今」と連携中枢都市圏構想の概要
【その2】…連携中枢都市圏構想に懸念される課題と対策
【その3】…長野地域版の連携事業の検証
長野地域における連携中枢都市圏構想の「今」
国の構想を受け、今年の2月から、長野広域連合を構成する長野市・須坂市・千曲市・坂城町・小布施町・高山村・信濃町・小川村・飯綱町の3市4町2村(人口55万4256人)の担当者会議を経て、7月に市町村長らでつくる「長野地域連携推進協議会」を発足。
11月には産・学・金・官が提携する「連携中枢都市圏ビジョン懇談会」で「連携中枢都市圏ビジョン(案)」を検討。
来年2月頃に長野市が「連携中枢都市宣言」を行い、市町村毎・連携事業ごとに「連携協約」を締結(各市町村議会の議決を経たうえで)、3月末までに連携中枢都市圏ビジョンを策定・公表するとしています。
この日の説明会で、連携事業は、これまでに連携市町村からあげられた102の事業を75事業に絞り込んだ上で、H28年度から実施する事業として45事業を予定しているとされます。
45事業の内、全9市町村が参加する連携協約事業は8事業で、残りの37事業は連携市町村の組み合わせが異なります。
因みに県内で連携中枢都市圏を形成するのは長野地域だけです。
【参考】10月30日信濃毎日新聞
連携中枢都市圏構想とは?
(1)目的
「相当の規模と中核性を備える圏域の中心都市が近隣市町村と連携し、コンパクト化とネットワーク化により『経済成長のけん引』『高次都市機能の集積・強化』『生活関連機能のサービスの向上』を行うことにより、人口減少・少子高齢社会においても一定の圏域人口を有し活力ある社会経済を維持するための拠点を形成すること」が構想の目的とされる。(連携中枢都市圏構想推進要綱)
H26年の地方自治法改正で地方公共団体間の柔軟な連携を可能とする「連携協約」の制度を導入。広域連携の新しい仕組みとされているものです。
「広域連合」のように別組織を作らず、より簡素で効率的な相互協力の仕組みとされ、自由度を拡大することでより一層の広域連携を促進するとともに、産学金官民の連携によるシティリージョン(city region=都市圏)も推進できるとされます。
単独であらゆる公共施設を維持・整備しすべての行政サービスを提供するという「フルセットの行政」からの脱却を可能にするともされる。
【図表】
(2)都市圏形成の流れ
➊圏域の中心市が連携中枢都市を宣言
連携中枢都市は「近隣の市町村を含めた圏域全体の経済のけん引等において中心的な役割帆担うとともに、当該市町村の住民に対して積極的に各種サービスを提供していく意思」を表明。
連携中枢都市は、原則として三大都市圏の区域外の政令指定都市または中核市(人口20万以上)、昼夜間人口比率が概ね1以上などを要件とし、全国で61都市圏が該当。
➋中心市と近隣市町村が地方自治法第252条の2第1項の「連携協約」を締結。
連携協約においては「圏域全体の経済をけん引し圏域全体の住民の暮らしを支えるという観点から、ア-圏域全体の経済成長のけん引、イ-高次都市機能の集積・強化、ウ-圏域全体の生活関連機能のサービス向上の3つの役割を果たすことが必要とされる。
➌圏域内の自治体間のそれぞれの連携協約に基づく「連携中枢都市圏ビジョン」を策定し公表。
(3)財政措置⇒地方交付税での推進誘導
➊連携中枢都市に対しては、「経済成長のけん引」と「高次都市機能の集積・強化」の取り組みに対し、圏域人口に応じて約2億円が普通交付税として措置され、「生活関連機能サービスの向上」の取り組みに対しては、年間1.2億円程度を特別交付税として措置。
➋連携市町村に対しては、年間1500万円を上限にして特別交付税が措置される。
➌その他に、圏域外の専門性を有する人材の活用や、民間主体の取り組みの支援、病診連携等による地域医療の確保等に対し、特別交付税が措置される。
【参考】総務省「連携中枢都市圏構想推進要綱」(2015.01.27)
総務省「連携中枢都市圏構想の推進」(2015.03.19)…説明会に使用された資料と重なる部分あり
➡「連携中枢都市圏構想を考える【その2】…連携中枢都市圏構想に懸念される課題と対策」に続く