『地方消滅の罠』

 筑摩書房発刊の『地方消滅の罠』の著者である山下祐介・首都大学東京准教授の講演を聴きました。
 9日、松本市内で開かれた第55回地方自治研究長野県集会(自治労県本部主催の自治研集会)の基調講演です。
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 実は、この自治研集会で「公共交通」をテーマにした分科会でのレポーターを依頼され参加したのですが、私的には山下氏の講演がどちらかというと主目的?…。著書の  『地方消滅の罠』は買い求めてはいるもののまだ読んでいないのが理由です。情けない話ですが…。

 因みに、公共交通分科会のレポートは「長野電鉄屋代線の廃止~代替バス運行の現状と課題」でした。簡単な現状レポートです。
 【参考】150604長野電鉄屋代線の廃止~代替バス運行の現状と課題

 さて、「加速する少子高齢化と自治体の維持」を演題とした山下氏の講演は、大変興味深い内容でした。
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 「地方消滅」=「2040年までに全国896の自治体が消滅する可能性がある」という衝撃レポートをまとめた増田寛也氏(日本創成会議)の、いわゆる「増田レポート」に対する反論と提案です。
 増田レポートの論理矛盾の指摘は割愛し、いかに人口減少に立ち向かうか問い視点から、かいつまんでポイントだけ紹介します。

★東京一極集中を止める
 「問題は、東京一極集中=人口減少社会。これまでの地域開発政策の結果としてこの事態が生じてきた。だが過度な集中は人の生まれない社会をつくるので、この集中を止める必要がある」

 「特に、2000年代の過度な集中化を反省し、いろいろな意味で「回帰」を図るべき。改革の結果の良いところは残しつつも、やり過ぎた撤退や、集中を止めて、かつてうまくやっていたものを改めて見出し、より良い形で元に戻していく」

★「選択と集中」から「多様性の共生」へ
 「『選択と集中』は、さらなる集中を進めるものであり、課題解決からは逆行。『分散と回帰』がとるべき道。競争は淘汰(選択)を生む。むしろ協力・協同こそが必要」

 「『選択と集中』から『多様性の共生』へ。『排除』から『包摂』へ、『依存』から『自立』へ、『上意下達』から『自治・協働』へ」

★人口獲得ゲームにしない「回帰」策を
 その上で、「ふるさと回帰」、「田園回帰」に注目。人口獲得ゲームとならない「回帰」策を考えるべきとする。
 Uターン…回帰の目標は明確だが、家族や地域の制約が壁となり、政策化しにくい。
 Jターン…回帰の目標は明確。家族や地域の制約は低いが、新たな資金が必要。政策化では未開発であるが空き家対策などの重要なターゲットとなる。
 Iターン…回帰の目標は不明確だが、行き先が決まれば制約は低い。マッチング次第であるが政策化しやすい。

 行政はIターンに傾きがちだが、Uターン、Jターン、地元定着が背後にあって初めてIターンが生きる。

★ともに地域をつくる問題意識が重要
 人口増のためではなく、地域が回帰や定着を明確に目標とすることで、「ともに地域をつくっていこう」との呼びかけが重要。

★地域とは何かを再定義
 二カ所居住・複数地域所属という新しい姿、住民票の二重化論を提案する。

 中心から周辺への回帰。スケールメリット(規模拡大)から、小スケールの見直し・存続へ。地域自立経済の維持。

 熊本大学・徳野貞雄教授が提唱する「集落点検」の試み。集落点検から自治体点検へ。
【参考】徳野貞雄教授のレポート「T型集落点検から見えてくる家族と集落のカタチ」から

 といったところです。かなり恣意的な”つまみ”ですが…。

 全体的には、「地方消滅」に対するアンチテーゼとしての総論的な提起が柱でしたが、興味深く聞きました。人口減少に立ち向かう具体策という点では、「回帰」のあり方を考える視点がヒントになったように思います。

 長野市がつくる「長野市版総合戦略」、「連携中枢都市圏構想」を評価していくうえでの示唆にしたいと思います。

 昨年の9月市議会の質問で私は、人口減少問題を取り上げ、増田寛也氏が提案するところの「若者流出を食い止める『ダム機能』を果たせる地域拠点都市という考え方」について、若者の雇用の場の確保がカギであり、子育て世代の定住、健康長寿の促進を促進する観点から、「ダム機能」を掘り下げて考えていくことが重要だと指摘しましたが、一面的だったかもと反省しています。
 地方中核都市と連動する人口ダム論では、地方都市における市街地と中山間地域の格差を広げることになりかねないからです。

 まずは、国がまとめた「まち・ひと・しごと創成長期ビジョン」「総合戦略」をキチンと読み込むことから始めてなくてはなりません。かなり“しんどい”ですけど。

 その前に『地方消滅の罠』を読まなければ…です。

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