12日、長野広域連合議会で、特別養護老人ホーム須坂荘と岡谷市の諏訪湖周クリーンセンター(広域ごみ焼却施設)を視察してきました。
DBO方式により建設中の諏訪湖周クリーンセンターを中心に、須坂荘も含めて簡単に報告します。
特別養護老人ホーム須坂荘
築30年を迎え施設の老朽化が顕著な須坂荘では、昨年度、1.4億円をかけて改修・拡充された食堂を中心に施設の現状を視察。
開放感のある食堂で、看取り等に使われる「静養室」や介護士室も広くなったとのことです。
須坂荘は入所定員70名で「要介護4」が31人と約半数近く、平均介護度は3.7。毎年20名くらいの入所者が死亡等により退所、新規入所されています。
待機者は、介護度3以上で30人弱とされます。「要介護1、2」を受け入れていた前年度では約100人の待機者といいますから、介護保険制度の見直しの影響は大きいようです。
担当者によると「食堂やトイレの改修はありがたいが、水回り等施設全体の老朽化は深刻。施設からの予算要望の査定は厳しいものがある」との声です。
広域連合議会の福祉環境委員会では、広域連合の老人福祉施設の施設改修について計画的な整備を要望してきていますが、現場からすると、なかなか予算がつかない状況が垣間見えます。
施設利用料・利用者負担は「要介護5」で月額8万円くらいになります。減免に応じて5.5万~6万円の負担となるようです。
民間の有料老人ホームは、15万円から20万円の負担となりますから、やはり、公立特養の整備は重要な課題です。
介護医療総合支援法の新しい仕組みの下では、なかなか難しい問題ではありますが、所得格差が広がる中で、「公」が果たすべき役割についてしっかり検証しなければなりません。
DBO方式による諏訪湖周クリーンセンター
諏訪広域連合内で、岡谷市・諏訪市・下諏訪町の湖周3市町の広域ごみ処理施設である「諏訪湖周クリーンセンター」(湖周行政事務組合)は、ストーカ式焼却炉・110トン/日(55トン/24h×2炉)の処理規模で、DBO方式(自治体が資金調達し、民間が設計・施工・運営を一体で行う事業方式)で事業展開されているごみ焼却施設です。20年間の運営を想定しています。
H28年8月竣工予定で、現在建設中です。
規模的には、長野広域連合が千曲市に計画するB焼却施設に相当します。
長野市内大豆島地区に整備するAごみ焼却施設もDBO方式の事業で、これから事業者選定の段階を迎えることから、視察先になったものです。
総合評価一般競争入札に4社、タクマグループに落札
入札には、タクマグループ、川崎重工業グループ、日立造船グループ、荏原環境プラントグループの4社が参加、価格要素40%、非価格要素60%の割合による総合評価でタクマグループに落札しています。
価格要素では、タクマは川崎・日立に次いで3位でしたが、非価格要素の提案内容で、ずば抜けた評価を受け、落札したようです。
事業者選定委員会は、日本PFI・PPP協会の植田理事長を委員長に、信州大学の中村教授、諏訪東京理科大の奈良教授、消費者の会代表と3自治体の代表で構成。
下図は、選定委員会の「湖周地区ごみ処理施設整備事業 最優秀提案の選定について」より抜粋。報告書PDF版はこちら湖周地区ごみ処理施設整備事業 最優秀提案の選定について。
建設事業にあたって、工事監理者としてパシフィックコンサルタンツ(株)に委託する一方、技術支援として専門的・中立的立場から公益社団法人・全国都市清掃会議に依頼していることが特徴です。
担当者も全国都市清掃会議による技術支援を高く評価していました。
事業費は141億円
落札価格による事業費は141億円で、工事請負費に69.7億円、20年間の運営委託費に71..2億円とされます。
国交付金は24.5億、関係市町村負担金が73.4億、起債が43億です。
DBO方式によるコスト削減効果は20年間で14.5億円と試算
落札価格に基づいた試算の結果、公設公営方式の場合と比較し、20年間で14.5億円、15.35%削減されるとしています。現時点では23億円だそうです。
また、高効率発電により、1.2億円の純粋売電収入を見込んでいます。
しかし、これらの数字は事業者による提案試算ですから、今後の運営の中におけるモニタリングとチェックが重要となります。
さらに、ごみ焼却施設の運営に特化して設立される特別目的会社(SPC)=諏訪湖ハイトラスト(株)の運営維持管理に対する行政としての監視・監督責任も課題でしょう。
灰溶融施設は整備せず
諏訪湖周クリーンセンター整備は、灰溶融施設を導入しないことが特徴です。当初は、ダイオキシン対策等で広域によるごみ焼却施設は灰溶融施設とセットとされていましたが、高コストであり、溶融スラグの有効活用のめどが立たないことなどから撤退する自治体が続出、国も溶融施設の整備を交付金・補助金の条件としなくなったことから、導入しないこととした説明がありました。
私は、長野市に整備予定のごみ焼却施設について、これまでも灰溶融施設の導入に疑義を呈し、国のガイドラインや全国の設置自治体の動向などを見極め「見切り発車」しないよう求めてきている一人です。須坂市内に建設予定の最終処分場の建設合意にあたり、「溶融スラグの埋め立て」が条件とされていることから、大変悩ましい問題となっているのは事実です。
しかし、千曲市に建設予定のB焼却施設はこれからです。
総合的・多面的に考察しながら、引き続き、チェックし提言していきたいと考えています。
【関連記事】141015ごみ焼却施設…灰溶融炉建設を改めて考える
長野A焼却施設は公募型プロポーザル方式、2業者が応募
長野市に建設するAごみ焼却施設は、総合評価落札方式ではなく公募型プロポーザル方式に行うことになっていて、現在、募集を締め切り、審査が始まっているところです。
2つの事業体が応募していますが、事業者名は公開されていません。多分、日立グループと荏原グループではないかと推察します。川崎グループもありかも…。
6月中には事業者選定が行われ、優先交渉権者が決まる予定のようです。
7月初旬までには、広域連合議会の福祉環境委員会に説明される予定です。
チェックするにはかなりの専門的な知識が求められることになりますが、もとより、ごみプラントについて専門的知見を持ち合わせてはいないので、市民感覚で疑問点をただしていきたいと考えています。
須坂市仁礼地区の広域・最終処分場の行方
視察の途中で、須坂市仁礼地区に予定される最終処分場の建設候補地をバス車内から見学しました。写真中央奥の山肌が見えている箇所です。
山あいではありますが、集落・民家とそんなに離れていない箇所であることを初めて知りました。地元合意のハードルの高さを実感しました。
5月8日に仁礼地区の地元に設置された「検討会」が、「絶対的条件8項目をつけて、受け入れを可とする」とした答申書をまとめ、仁礼町区に提出したとの報道があったところです。
受け入れに向けた絶対的条件の8項目は、かなりハードルが高いように思われますが、地元提出の条件に須坂市や広域連合が真摯に向き合い、課題解決に向け前進することを願うところです。
【信濃毎日新聞の報道より・5月8日付】
長野広域連合(長野市)が須坂市仁礼町に計画している一般廃棄物最終処分場について、建設受け入れの可否を検討してきた仁礼町区の検討会は6日、「絶対的条件8項目をつけて、受け入れを可とする」とした答申書をまとめ、仁礼町区に提出した。同区の役員らは今後、各条件について同広域連合などと交渉し、最終的な受け入れ可否の回答をする。
条件は▽埋め立て物は溶融スラグ、反応飛灰処理物、溶融不適物の3種類▽粉じんが出ないよう散水などをする▽埋め立て地より下のモニタリング井戸を4カ所以上設ける▽放射能測定は埋め立て開始から終了までの期間、毎年度1回以上▽埋め立ての高さは標高647メートル以下▽埋め立て地東側斜面全面を買収し、土砂崩落防止施設などを設ける▽埋め立て地周辺に雨水などを一時的にためる池を設置▽処分場の用途廃止が予想されるまでの30年間、地域振興補助金を毎年度、区へ交付する―の8項目。同広域連合が各条件を了承した上で、建設を受け入れるとしている。
須坂市仁礼の仁礼会館で開いた答申書の提出式で検討会の田中義一会長は「8項目について長野広域連合、須坂市と最後の詰めをしてほしい」とあいさつ。同区の田中敏治区長は「答申内容を尊重して協議を進める」と述べた。
仁礼町区は近く答申内容を区内に全戸配布し、今月中に区役員らが答申内容を協議する予定。各条件について実現可能かどうかなどを含めて、同広域連合などと交渉する考えだ。最終的な受け入れ可否の回答時期について田中区長は取材に「交渉相手のある話だが、可能な限り早く出したい」としている。
同広域連合は2009年度、一般廃棄物最終処分場建設候補地として須坂市仁礼町を選び、18年度の稼働開始を目標に昨年12月、仁礼町区に建設受け入れ可否の判断を正式に依頼した。同区は区民約60人でつくる検討会に諮問し、検討会は7回の協議を重ねて答申書をまとめた。
おまけ…岡谷蚕糸博物館
岡谷市に昨年8月リニューアルオープンした「岡谷蚕糸博物館」を見学。宮坂製糸所の工場が併設されていて、製糸全盛期の諏訪式操糸機などが稼働している現場を見学できます。世界遺産となった富岡製糸場と比較してしまうところですが、製糸工場の「今」が体験できるところが魅力でした。