昨日24日、長野市議会3月定例会は、総額で1513億4千万円のH27年度一般会計予算案など市側が提出した78議案すべてを可決し閉会しました。午後7時20分までかかりました。
人事案では、新たな「地方教育行政法」により、新教育長に教育委員会委員長の近藤守氏を、欠員となった教育委員に元県中学校長会長の坂口昌夫氏を任命することに同意しました。
私は、予算及び条例関係の全ての議案に賛成・同意しました。
議会提案議案となった「集団的自衛権行使を容認し安保法制化を支持する意見書」と「労働法制の規制緩和を容認する意見書」には反対しました。
実は、予算案において、市立長野高校に中高一貫教育を導入する問題については、賛否を最後まで悩みました。中高一貫校化に関する予算措置が余りにも時期尚早であり、拙速感が否めないからです。
「市民ネット」で協議し、最終的には賛成することにしました。
「その代わり」といいますか、予算・原案に対し賛成討論を行い、市側に予算執行にあたっての課題を指摘しました。苦言を呈しながら…といった格好です。
賛成討論の内容は次の通りです。
33番、市民ネット、布目裕喜雄です。
議案第1号 平成25年度長野市一般会計予算・原案に賛成の立場で討論します。
各常任委員会・委員長報告では、新年度予算案及びその執行について、数多くの要望事項が指摘されました。要望された事項について、誠意ある対応方をまずは求めておきます。
さて、市長は迎える新年度を長野市のエポックイヤーと位置づけ、地域経済の活性化や魅力の向上を図る絶好の機会と捉える一方で、本市の最重要課題を人口減少対策とし、H27年度予算を「人口減少の克服に全力で取り組む予算」と評し、人口減少対策に約250億円を特化し投資するものとしました。
全体的に、大規模プロジェクト・ハード整備の進展に伴い、人口減少対策や中山間地域の活性化といったソフト事業に力を入れる姿勢を打ち出した点が特徴であると受け止めています。
また、中核市である長野市が周辺自治体と連携して経済活性化などに取り組む「連携中枢都市圏」構想の検討と合わせ、旧合併町村の中山間地域に一定程度手厚く配分するなど市域全体のバランスに配慮していることも特徴といえるでしょう。こうした予算編成の問題意識、重点施策化を共有できることから、当初予算・原案に賛成するものです。
しかしながら、政策の決定過程の透明化、そして議会の監視と評価に資する情報提供、そして予算の適正な執行において、特段の配意・配慮を求めたい課題が何点かあります。
一つは、市債残高と公債費の増加についてです。
H27年度末の市債残高見込みは、大規模プロジェクトの影響などでH26年度末見込みより36億円増の1588億円。貯金にあたる基金残高のH27年度末見込みは前年度末見込みより37億円減の308億円を見込みます。
大規模プロジェクト事業は本年度で2事業が完了し、借金返済のための公債費はプロジェクト事業の返済が今後本格化するため増加に転じることになります。年々増加する扶助費などを合わせた義務的経費は当初予算で44.3%を占めることとあわせ、財政の健全化が課題となります。
財政推計はあくまでも推計であり、財政実態を的確に把握・反映したものではありません。規律ある財政運営と厳しい財政チェックを求めるとともに、教育や福祉など市民生活に直結する施策展開にしわ寄せしないことを改めて求めておきたいと考えます。二つは、人口減少対策についてです。
自然減、社会減の二つを要因とする人口減少に歯止めをかけつつ、生き生きとした地域社会、コミュニティを再生・再構築することが重要であることは論を待ちません。
しかしながら、国の「地方創生戦略」の狙いにおいて、首都圏への一極集中を緩和させる効果が期待される一方、地方都市における過疎化や拠点都市への一極集中の加速が懸念される中、中山間地域・農山村地域、過疎集落の切り捨てにならないよう特段の対応を求めたいということです。
長野市版人口ビジョン、総合戦略を策定するにあたり、また「連携中枢都市圏構想」の検討・具体化にあたり、長野市及び長野市街地への一極集中を意図することなく、中山間地域・過疎地域の再生、市街地の活性化、周辺連携自治体との均衡ある調和につながる構想・戦略を打ち立てていくことです。三つは、教育委員会制度の改変及び市立長野高校への中高一貫教育の導入に関してです。
新しい「地方教育行政法」によって、教育の中立性、継続性、安定性が後退することが懸念されます。市長にあっては教育への介入に対し自制的・抑制的であるべきと申し上げたいし、新教育長には首長の恣意的な判断に左右されないよう教育委員会の独立性を高めていくことの大切さをあえて強調したいと思います。
「一人ひとりは違い、かけがえのない存在として平等である」とする「子どもの最善の利益」が実現される教育行政、子どもたちにとっての機会均等、質の高い教育の実現に心を砕いてもらいたいと思います。
さらに、市立長野高校における中高一貫校化について、教育長は予算執行にあたり「まずは中高一貫の教育計画を策定し、その理解が得られるまでは、校舎改築の実施設計には入らない」と答弁しました。議会対策上のその場しのぎにしない誠実で謙虚な姿勢を強く求めるものです。
また、「小中一貫も中高一貫もどちらも重要なミッション、双方を同時に進める」とも答弁しました。
市民ネットは、小中連携・小中一貫教育、すなわち義務教育課程における教育の向上こそが喫緊の課題であるとの認識に立ち対策を講ずるべきが最優先であるとの考えには立っています。
しかし、中高一貫校への期待やニーズがあることを否定するつもりもありません。それだけに、高校進学段階において市立長野高校が狭き門になってしまうことの弊害をはじめ、中学校を新設することの影響など、市民および議会に対する説明責任が果されるべきだと強調したいと思います。
教育振興計画にも盛り込まれていない中高一貫校化について、拙速に進めることなく、中高一貫校化の意義とスケジュールについて、十分な市民理解を得る説明責任をより果たすべきです。
同時に、小中一貫教育を一つの選択肢におきつつ小中連携教育の充実・強化に向けたプラン策定を国の動向を踏まえ早急に取り組むべきであると強調したいと思います。
「二兎を追うものは一兎を得ず」という中途半端な結末にならないよう、慎重な対応を強く求めるものです。四つは、暮らしのセーフティネットの拡充についてです。
国の構造改革路線により、地方の疲弊や産業の空洞化が進行し、日々の県民生活において所得と資産格差、教育や医療などあらゆる格差が拡大し、都市部と農山地地域との格差も生じています。
新年度4月から、地域医療や介護保険、子ども子育て、生活困窮者支援などが新しい段階や制度に移行する中、その実際の担い手が市であることに鑑み、国の基準を上回る施策展開にもっと力を入れ、医療・介護を必要とする市民、明日の生活も見通せない生活困窮者、孤立する高齢者、貧困に苦しむ子どもに寄り添い、市民の生活を支援することです。
「住民福祉の増進」こそが自治体の責任と役割です。雇用の安定を図るとともに、市民の健康・生命を守るため、暮らしのセーフティネットを拡充されるよう強く求めたいと思います。
この点において、3人目以降の保育料の軽減について、国・県基準を上回る軽減策を講じること、福祉医療費「入院」の対象年齢を中学卒業までに拡大し4月から実施すること、「通院」については1年遅れとなるものの所得制限なしで中学卒業まで拡大する方針を明示した点は評価します。できる限り前倒しできないか、システムの再構築を急がれるよう求めるものです。
しかし、一方で、人工透析患者見舞金がサンセット事業として打ち切られ、一人暮らし高齢者の命のコールラインである緊急通報システムの利用料の引き上げが検討されています。
市民の健康・生命を守る観点から、再考を求めたいと思います。五つは、市庁舎・芸術館の建設工事途上で発覚した東洋ゴム工業による免震偽装への対応です。
このたびの免震偽装は、生命にかかわる問題であり、言語道断であると強く指弾しなければなりません。
昨日、謝罪と状況説明に訪れた東洋ゴム工業株式会社会長と東洋ゴム化工品株式会社社長に対し、市は、設計で要求している安全水準及び機能を損なうことのないよう、すべての装置を信頼できるものに交換すること、当該施設が当初工期内に竣工できるよう対応をとることなどを要請したと議会・議員にFAX報告されました。
8ヶ月も遅延している市役所庁舎・芸術館の完成時期が、これ以上遅延することを決して望むものではありません。しかし、免震偽装による不可抗力とはいえ、施設の絶対安全性、品質の確保を最優先する発注者としての責任も問われるところとなります。11月完成の工期にこだわる余り、建設工事の安全確保が二の次にならないことを厳重に求めたいと思います。
市において、偽装された免震装置の速やかな全面交換を強く求めるとともに、構造安定性の検証に必要な時間及び検証結果、免震装置の全面交換に必要な条件と時間、そして全体工期への影響を可能な限り速やかに市民に情報開示し、市民理解を求めていく姿勢が不可欠です。また、東洋ゴム株式会社等に対する賠償責任について検討すべきです。最後に、市長は就任以来、風通しの良い市政運営に心がけたいと強調してきました。現場主義で市民とも広く意見を交わし、市議会とも意見交換し、政策立案・政策決定を図る謙虚なる姿勢を期待してきたところですが、今日、どうでしょうか。“政策決定権者は市長、聞き捨てゴメン”と揶揄されかねないような際どさも感じています。
市長においては、長野市議会基本条例の存在を熟知のことと思いますが、議会基本条例は、市民が市長及び市議会の議員を直接選挙するという二元代表制の下、市議会が市長その他の執行機関と互いに切磋琢磨しつつ、市民全体の福祉の向上及び市政の発展に寄与することを決意して制定したものです。
この条例の理念から、市行政理事者に対し、政策決定過程における情報の開示と議会の意思の反映を求めているものです。
市長には、審議会等の答申に基づく政策・施策決定とはいえ、市議会の監視と評価、意思の反映の権能に堪えうる、政策決定過程における審議の状況、到達段階を議会・市民に謙虚に情報開示し、政策決定に至るプロセスを共有化し、市民・議会との協働を体現し得る基本姿勢を強く求めたいと考えます。以上、一般会計当初予算に賛成する理由と予算執行にあたっての特段の配意・配慮について申し上げました。
真摯で誠実なる対応を求めつつ、賛成討論とします。