「質問より」の3回目は「市立長野高校への中高一貫教育の導入」についてです。写真は市立長野高校(HPより)。
市立長野高校に中高一貫教育を導入する基本計画に基づき、H29年4月の中学校開校(1学年60人)に向け、準備が進められています。
H27年度当初予算には、中高一貫の教育計画の策定と校舎実施設計に要する経費692万4千円が計上され、具体化していく局面となっています。
また、学力向上プランとしてまとめられた「しなのきプラン29」にも、中高一貫教育が盛り込まれています。
この間、市議会は、中高一貫教育の導入に対して「小中一貫教育を優先すべきではないか」との慎重論を大勢としてきました。
予算措置による事業の具体化は余りにも拙速といわなければなりません。
【参考】「長野市立長野高校・中高一貫教育 基本計画」(市教育委員会)
「しなのきプラン29(前半)」(市教育委員会)
「しなのきプラン29(後半)」(市教育委員会)
疑問解消できる説明責任…果たして十分か
「生徒数の減少が見込まれる時期になぜ新たな中学校を新設するのか」、「生徒数減少など、周辺の中学校への影響はないのか」といった点について説得力のある説明がなされていません。
さらに「市立長野高校の新規入学定員が60名減少することで、中学生の高校進学の選択を狭めることにつながらないか」、「中学生の選択が狭められることで、単位制の総合学科高校でありキャリア教育を重視する市立長野高校の発展につながるのか」「小中高一貫した特色ある教育システム『長野市モデル』を研究・開発し、市内の小・中学校に還元するとされるが、その実効性はどのように担保されるのか」、そして何よりも「中山間地域において小学校、中学校の存続が危ぶまれる状況にあって、小中連携教育、或いは小中一貫教育を最優先にすべきではないのか」といった疑問が広がります。
小中連携、小中一貫教育こそが喫緊の課題、計画の凍結・再検討求める
信更地区では児童の減少から信田小と更府小を統廃合することになりました。
中学校との連携がより問われる局面を迎えています。
これは信更地区に限ったことではありません。国の動向を見据え、小中連携・小中一貫教育の具体化こそ喫緊の課題となっています。
私は、教育委員会における市民・議会への説明責任を求めるとともに、新たな中高一貫教育よりも、喫緊の課題である小中連携・小中一貫教育の展開を最優先させること、そのためにH29年4月開校のスケジュールをいったん凍結し、再検討するよう質しました。
教育長…中高一貫の必要を強調
教育長は、「全国的に、中等教育の新たな選択肢として中高一貫校で教育を受ける機会を求める期待が高まっている。中高6年間の体系的なキャリア教育と系統性のある学習指導ができ、『長野市モデル』として、市立長野での取り組みを長野市内全校に還元できる。昨年9月のパブコメでも『必要』との意見をいただいている」と答弁し、市立長野を中高一貫校とすることの必要性を強調しました。
また、前記したような様々な疑問に対しては、「周辺中学校では、H29年度で最大3クラスの減少が予測されるが、学校運営上の影響は少ない」「高校の募集人数が減ることから、市立中野を希望する中学生にとっては『狭き門』となるが、高校としては同じ数で今までと変わらない」と述べた他、長野市モデルの実効性については「中高一貫教育を経験した教員が、その経験を他の学校で活かすことで、小中学生が目的意識を持ち主体的に学ぶ姿勢を身につけることができる。長野市教育の一層の充実が期待できる」と答弁しました。
なんか” 教育者の屁理屈”を聞いている気分です。失礼な物言いですが…。
「小中一貫は中高一貫と同時に進める」
さらに、教育長は「小中連携教育・一貫教育は大きな課題」とし、「H27年度にプロジェクトチームを設置し、活力ある学校のあり方について調査研究し、H28年度には検討委員会を立ち上げ協議を進める」「中高一貫教育に関する教育計画を策定する中で具体的な内容について慎重に検討していく」とした上で、「小中一貫も中高一貫もどちらも重要なミッション、双方を同時に進める」と答弁、既定方針通り進める姿勢を強調するにとどまりました。
市教育委員会は、学力向上プランとして「しなのきプラン29」を策定し、具体化していくことにしています。この中でも、小中一貫と中高一貫は同列視されています。
「教育計画への理解の上で、次の段階へ」
今後の進め方については、「中高一貫校の学校目標やカリキュラム、施設内容等を具体的に盛り込んだ教育計画を策定し、議会の理解をいただいたうえで、次の段階に進む」としました。
一般質問の最後の答弁では「教育計画に理解をいただくまでは、校舎改築の実施設計に入らない」と述べ、議会の理解を条件とする姿勢を示しましたが、「基本計画通り」との姿勢にいささかも変化はありません。
かみ合わない…、二兎を追うものは…
全体的に、「かみ合わない」と思いながら答弁を聴きました。「小中一貫も中高一貫も」と強調するのですが、「二兎を追うものは一兎も得ず」になりかねない際どさは拭えません。
私は、やはり、「義務教育課程の9年間において、子どもたちの自立心の醸成と必要な学力の保持こそ、最優先すべき」と考えます。
日本無線(株)の工場移転で三鷹市から多くの児童・生徒が転入するにあたり、教育長は「中高一貫校の問い合わせがあり、ニーズの高さを実感している」とするのですが、日本無線の新規社宅や住まいは犀川南部地域となります。地理的特性を抜きにしてニーズを推し量ることができるのか、とも考えてしまいます。
市立長野高校は、単位制・総合学科という編成で、その建学理念からも、いわゆる「進学トップ校」を目指してはいないはずです。
中高一貫校となれば、小学6年生の段階で、自らの進路をいわば選択することになります。高校受験競争から解放されるという利点はあるでしょう。親御さんや子どもたちの心情がわからないわけではありません。しかし、「市立高校が果たして、それでいいのだろうか」と思うのです。
私は、教育長に対し、市民の理解、合意にもっと心を砕くことを強く要請するとともに、「Q&A」の作成・周知などの取り組みも求めました。
しかしながら、小中連携教育、小中一貫教育の具現化が喫緊の課題である以上、中高一貫校の計画を止める手立てはないものか、模索中です。