公共交通対策特別委員会の視察➍…所感とまとめ

 特別委員会としての行政視察の意見集約にあたり、提出した意見を「所感とまとめ」の形で報告しときます。
 もっと踏み込む必要がありますが、取り急ぎこの程度にしときます。

 ところで、昨日28日に開かれた公共交通対策特別委員会で「長野市公共交通ビジョン」(素案)の説明を受けました。
 率直に言って、期待していた内容とは程遠いものです。総論・一般論の域を越えず、重要な部分は「検討事項」に先送りされています。公共交通の将来ビジョンの具体が見えません。「長野市」の冠がなくても、どこの自治体でも通用しそうな内容です。
 長野市の地域特性を踏まえた地域公共交通ネットワークの将来図が描き切れていない印象を拭えません。
 問題整理した上で報告します。

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市民主体・住民主体で地域公共交通を守り育てることの“ 難しさ”と“大切さ”

 四日市市の住民・企業の協賛で支えられるNPO法人による「生活バスよっかいち」の運行、浜松市「NPO法人がんばらまいか佐久間」の交通空白地域における過疎地有償運送、日立市中里地区の全世帯負担金方式による「NPO法人助け合いなかさと」の過疎地有償運送の取り組みは、「住民主体」がキーワードである。

 事業者任せ、行政任せから「住民主体」へと脱皮していくことの重要性を痛感する。地域の中で「移動交通のニーズ」をきめ細かく把握し、時間をかけて住民合意を形成していく手法は参考にしたいところである。
 また、NPO法人による運行は「リーダーの存在」が光る。人材の発掘もまたキーワードだ。

 中山間地域においてNPO法人による過疎地有償運送方式導入を検討するには、住民自治協議会において地域ぐるみで取り組むことのできるリーダーの存在、法人立ち上げの資金、行政の支援スキーム、協力事業者の発掘が不可欠であろう。
 また、タクシー事業者との共存も大きな課題となるところである。

住民と交通事業者の連携のあり方について

 「住民主体」で地域公共交通を維持確保していく仕組みとして、日立市の地域住民と交通事業者の「パートナーシップ協定」は参考にしたい。
 交通事業者は行政には相談・協議するが、地域沿線住民は「蚊帳の外」となっている現状がある。交通事業者に対し、「利用者あっての路線」の意識改革を促し、双方向で路線の維持存続を検討するスキームの一例となる。

地域公共交通の維持存続の基準のあり方について

 地域公共交通の維持・存続・拡充を図るうえで、「行政がどこまで役割と財源を負担するのか」という課題は、「住民がどこまで役割と財源を負担するのか」と対になる課題である。

 浜松市の「収支率2割以上の維持基準」と「週2回・1日2往復」の「最低保障運行」の考え方、四日市市の「市民主体の地域バス」に対する1/2欠損補助、日立市における不採算バス路線に対する「平日日中4便確保」の欠損補助などの取り組みは、基準・水準の合理性が課題となるものの、行政の役割分担の具体を客観的に市民・住民に明示し、共に協力して維持存続を図る、「地域公共交通を守り育てる」機運を醸成していくことにつながるのではないかと思われる。
 また、日立市の基準は、バス事業者に対し経営改善を求めるものとなっている。バス事業者に対し市行政が経営改善にどこまで踏み込むのか、踏み込めるのか、といった点で示唆的である。

 長野市における地域公共交通の維持存続にあたっての「支援基準」として参考にし、改善・改革を進める必要がある。

「日立BRT」の取り組みについて

 「ひたちBRT」は、鉄路廃止による線路敷を「バス専用道」として有効活用する事例である。
 旧屋代線の廃止後の線路敷の活用にあたり「バス専用道」も検討されだが、老朽化した橋梁やトンネルの改修に多額な経費を要することから整備案としては実現に至らなかったものである。市街地周辺の交通網という地理的特性も要因の一つではあろう。
 
 その意味において、「時すでに遅し」の感は否めないものの、鉄道に代わる新規バス路線を新しいまちづくりの一歩としていく発想は共有したい。
 バス専用道整備の日立市の事例を、長野市においては、バス専用レーン・優先レーンの拡充やPTPS(公共車両優先信号システム)、連接バスの導入につなげていくことが必要であろう。

都市計画マスタープランとの連携の重要性

 今回視察した3市は、公共交通・交通政策の施策部門を、利用促進を含め、都市整備部に置いている。
 中核市レベルでは、企画部門の担当、都市整備部門での担当は半々くらいであった思われるが、公共交通ネットワークの形成、利便性の向上、利用促進は、「まちづくり」そのものであることから、都市整備部への移管はともかく、都市計画マスタープランとの緊密な連携が不可欠であることを改めて痛感した。

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