公共交通対策特別委の視察➊…四日市市編

 先週の21日から23日まで公共交通対策特別委員会の行政視察で、四日市市・浜松市・日立市を訪問してきました。
 不採算により存続が危ぶまれるバス路線の維持に向けた「住民主体」の取り組み、路線維持に向けた行政の負担基準の設定など、参考になる点が多く意義ある視察でした
 総括的なまとめは別途としますが、3市におけるそれぞれの取り組みの特徴を順次報告します。
 まずは、四日市市です。

四日市市

(1)人口307,700人、面積205.58㎢。三重県北部に位置し、石油化学コンビナートをはじめとする中京工業地帯の代表的な工業都市。特例市であり保健所政令市。
(2)H23年10月に策定された「四日市市都市総合交通戦略」におけるバス事業の現状及びバス路線・支線の再編計画とNPO法人で運営する「生活バスよっかいち」の運行状況と今後の課題が視察テーマ。
(3)四日市市都市整備部都市計画課公共交通推進室の皆さんと「NPO法人生活バス四日市」の西脇良孝理事長から説明を受ける。理事長の案内で「生活バスよっかいち」にも乗車し現地調査を実施。
(4)地元の毎日放送系テレビ局のコミュニティバス特集取材と重なり、同行取材の機会に恵まれました。放映日は未定とのことでしたが、録画を見ることができれば…と思います。
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都市計画マスタープランと一体の都市総合交通戦略の策定

➊地域公共交通網形成計画も策定
 H23年10月に策定された四日市市都市総合交通戦略は、誰もが利用できる公共交通の維持や歩行者に配慮した段差のない道路の整備など歩いて暮らせる交通環境の実現や、市域を越えた交流によるまちの活性化を支える交通ネットワークの構築により、四日市市が今後も持続可能な都市として存続し続けていくためのビジョンと位置づけられる。
 長野市が策定中の「市公共交通ビジョン」に相当するものである。
 都市整備部が所管することから「都市計画マスタープラン」と同軸で、まちづくりと交通ネットワークの再構築がマッチングしている印象を持つ。
 このビジョンに基づき、新・地域公共交通活性化再生法による地域公共交通網形成計画が策定されている。同計画は全国初となるものである。
【参考】四日市市都市総合交通戦略のページ

➋戦略は「めざす都市像(交通像)」を6点にまとめ
① 徒歩や自転車で、駅やバス停に行き、公共交通で必要な買い物や通院、レジャーが楽しめるようにまちになる。
② まちなかでは、頻度の高いバスやレンタサイクルなどで自由に生きたいところへ移動できる環境が整っている。
③ 農村部の交流拠点には、パーク&ライド施設を持った公共交通のターミナルが整っており、都市との交流が活発に行われている。
④ 交通不便地域や交通空白地域では、地域住民も参加した交通サービスが行なわれており、きめの細かな独自のサービスでコミュニティの要となっている。
⑤ 環状道路などバイパス機能を発揮する道路が整備され、深刻な渋滞や通過交通の生活空間への流入などの問題が解消され、バスも定時性を保って運行している。
⑥ 歩いたり自転車に乗ったり、一人ひとりの暮らしの場から学校や職場、商店などの目的地まで、安全で快適な道路空間がつながっている。

 そして、「実現に向けた戦略」として「4つの戦略と達成目標」が設定される。
 [戦略1]自由に移動し交流できる公共交通体系づくり
 [戦略2]円滑な交通を支える道づくり
 [戦略3]まちなかの賑わいづくり
 [戦略4]市民・公共交通事業者・行政の連携づくり

➌バス路線網・支線バス路線網の再編へ
 [戦略1]では…
*鉄道と幹線バス路線で構成する基幹公共交通網の形成
⇒現存の鉄道網の維持、廃止された近鉄・鉄道支線を公設民営で維持存続
*生活圏内の移動手段確保
⇒不採算路線や交通不便・空白地域で、支線バス路線の再編やコミバスの導入、市民主体のコミバスへの支援拡大へ
*公共交通の起点、接続点における利便性・快適性の向上
⇒乗り継ぎ・乗り換え環境の整備、交流と交通の複合拠点(CT=コミュニティターミナル)の整備へ。駅前広場整備とバス乗降場の集約化へ

といった形で、課題と当面の目標を設定。
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 幹線バス・視線バスの再編計画を「育てよう!市民の暮らしを守る公共交通」を基本理念とした「地域公共交通網形成計画」としてまとめ上げた段階で、実証実験を経て具体化していくことを構想する。バス事業者は三重交通が主体となっている。

➍市営バスから市民主体のコミバスへ
 四日市市では、交通不便地域の路線や三重交通・廃止代替路線などを自主運行バス=市営バスとして3路線維持している。1路線あたり年間1100万円から2100万円を欠損補助する。
 こうした路線を市民主体コミバスに転換していくことを目標としているようだ。市民の当事者意識を醸成し、路線再編を進めることを狙いとする。
 不採算路線の維持存続にあたって、市民の主体的な取り組みをいかに向上させるか、生活圏域の移動手段をいかに確保するか、コミュニティターミナルの発想で市街地と交通不便地域をいかに結ぶか、などといった観点から、長野市モデルの参考としたいところだ。

住民・企業の協賛に支えられるNPO法人コミバス運行

➊買い物と通院に特化
 「生活バスよっかいち」は、その運営方法において全国的に注目されている取り組みの一つ。
 近鉄四日市市駅と垂坂(いかるが)を結ぶ三重交通垂坂線の利用者減による廃止に伴い、自治会が中心となって設立された「NPO法人生活バス四日市」が事業主体となり運行するもので、近鉄霞ヶ浦駅とスーパーサンシ大矢知店を結ぶ。
 11.5㎞の路線で公共施設・商業施設・病院などを中心に約300m間隔に34の停留所を設置、月~金で約2時間おきに1日9便(4.5往復)運行されている。1日あたり72.3人の利用者。
 交通空白地域の特性・ニーズに対応し、買い物と通院に特化されたコミュニティバスである。
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➋収支率65.0%
 最大の特徴は、運行経費1070万円/年のうち、半分以上の564万円を沿線企業の協賛金等に依拠している点である。
 運賃収入は130万円、市の補助金は360万円である。コミバスの収支率は30%を切ることが多い中、収支率65%は驚異の数字である。
 月平均でいうと、月額運行経費100万円に対し、50万円を協賛金、15万円を運賃収入で賄い、35万円の市補助金で赤字補てんするという格好だ。

 協賛金は8社で、スーパーサンシが30万円、四日市社会保険病院が10万円で8割となる。買い物・通院に特化されているからこそ、事業者側にも大きなメリットがあるということであろう。
 また、回数券のほか、「応援券」という定期券が販売され、1カ月1,000円、6カ月5,000円、1年10,000円の3種類用意されている。路線の維持存続に向けた「協力支援金」の要素が大きい。
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➌利便性高めるダイヤ・路線設定、運休日のバス車両活用
 利用者がスーパーで買い物をし、そのままバスで帰宅することを想定し、スーパーサンシでの停車時間を40分間くらいに設定したり、高齢者の利用度を高めるため、団地内ジグザグ運行などの路線設定がされている。
 また、土・日の運休日には、第3土曜日には地元の福祉センターの送迎バスとして有効活用されている。

➍利用者の声
 西脇理事長らに案内いただきながら、生活バスよっかいちに「社会保険病院」から「スーパーサンシ」まで乗車体験。
 乗り合わせた70歳代のご夫婦、ご主人は「免許を返上している高齢者にとっては、なくてはならないバス路線。月2回くらいの利用(2往復利用で400円の運賃)だが、6カ月応援券を購入している。応援の気持ち」と述べる。またスーパーに買い物に向かう女性は、「買い物の足として日常的に利用している」と語る。
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➎今後の課題と四日市市の対応
 「生活バスよっかいち」の運営はNPO法人の立ち上げから始まり西脇理事長に負うところが大きい。高齢化する中での後継者の人材確保、継続的運営が課題となっていること、またNPO法人、地域協賛方式による路線維持の取り組みを拡大したいが、市街化調整区域では事業者からの協賛金が期待できないため、第2第3の生活バス実現が困難とする。
 今後、市民主体の自主運行バス事業を継続・拡大するため、H27年度から運行経費の欠損補助の割合を3分の1から2分の1に引き上げることにしている。
 財源スキームについて、月額運行経費100万円に対し、25万円を協賛金・負担金、25万円を運賃収入で賄い、50万円の市補助金で赤字補てんするという格好だ。
 1/3補助では検討さえできないが、1/2ならば努力してみようとの呼び水にしたい考えだ。
【参考】国交省のページ=「地域住民が主体となった持続可能な公共交通づくりへ」[PDF]
    国交省のページ=「住民・企業の協賛に支えられる、NPO法人によるコミバス運営」[PDF]

➏市民主体・住民主体をいかにキーワードとするか
 交通空白地域・交通不便地域における交通ネットワークの形成、市街地における地域コミバスの維持・存続、不採算路線の維持・存続に向けて、「市民主体・住民主体」のスキームを作り上げることの重要性を痛感する。
 また、路線沿線の地域の特性、利用ニーズの把握といった点でも大いに参考にしたい。
 
 沿線の事業者の協賛・連携方式、市民主体の自主運行バスへの1/2欠損補助というルールを含めて、長野市域に照らして路線毎の検討を深めたいところである。

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