17日午後、安茂里公民館で「人権を考える住民の集いが」が開かれました。
今年度は「子どもと人権~子ども虐待を考える」をテーマに、ながの子どもを虐待から守る会事務局長の村瀬和子先生の講演です。
折しも、厚生労働省の調査で、全国の児童養護施設で暮らす29,979人(2013年2月)のうち、親などから虐待を受けた経験がある子どもが59.5%に上り、2008年の前回調査から6.1%増加していることが、17日付の信濃毎日新聞で報道されました。
県の調査では、県内の児童養護施設に入所する601人(2014年3月時点)のうち50.1%にあたる301人が過去に虐待を受けた経験があるとのことです。
児童相談所による虐待対応件数が急増し問題が深刻化する中、虐待の早期発見と早期対応、養護施設で暮らす子どもたちへのきめ細かいケアーが求められるとしました。
村瀬さんは、H22年(2010年)発生した大阪市西区のマンションで2児(3歳女児と1歳9ヶ月男児)が母親の育児放棄によって餓死した事件、H12年(2000年)の愛知県武豊町で起きた3歳児を段ボール箱で餓死させた事件など児童の虐待死の事例を取り上げ、いずれも母親が子どもの頃に親から虐待を受け生き延びた「サバイバー」であること、虐待は暴力だけではなくネグレクト(育児放棄)という形もあること、虐待は世代間連鎖すること、そして児童相談所の対応の課題を指摘。
子どもの虐待は、子どもに対するもっとも重大な権利侵害であり、家庭における「しつけ」とは異なり、懲戒権などの親権によって正当化されるものではないこと、親の視点ではなく、子どもにとって有害かどうかを判断するよう視点を変えなければならないこと、権利の主体である子どもとして尊重することの重要性を強調し、子ども虐待の問題を考える上で大切なことは、人権という子どもの生きる力を尊重することだと訴えました。
その上で、虐待はいつでも、どこでも、どんな人にも起こり得ることを認識することが重要、「変だな」と思ったら虐待を疑い、児童相談所やNPOである「虐待から守る会のホットライン」に連絡してほしいと呼びかけました。
子どもの虐待を予防するには、地域社会での“気づき”、そして“フォロー”が大切であるということが共有された意義ある集いであったと思います。
私は、冒頭のあいさつで「県の調査によると、県内の子どもの1割がいじめや虐待に苦しんでいる実態が明らかになっている。35人学級の中で3人から4人が苦しんでいることになる。県では未来を担う子どもを支援する条例が制定され子どもの人権救済機関が動き出す。市でも子ども未来部のもとに” こども相談室”が開設され、いじめや虐待など子どもたちのSOSに対応できる相談窓口として機能を拡充していくことが問われている。子どもの権利条例を市でも制定するとともに、子どもたちの意見表明権や自己決定権を尊重し、地域の力で、権利主体である子どもの育ちを支援していく取り組みが重要。今日の集いを共に実りあるものにしたい」と述べさせていただきました。
核家族化の進行、経済格差の拡大で人間関係が希薄化している中で、深刻化する子ども虐待を早期発見・早期対応で予防する手立てを行政が民間・NPOと連携して確立すること、母親・父親の不安や悩みに応えられる受け皿を拡充することが重要です。