今朝の信濃毎日新聞の報道にビックリ。
長野市が設置した松代大本営地下壕の案内看板の表記について、「朝鮮人の人々が労働者として強制的に動員され、突貫工事をもって構築したもの」の内、「強制的に」という部分にテープを貼って覆い隠していると報じました。しかも昨年8月からの措置としています。
新しく市が作成した案内パンフレットも、「強制的に」といった表現が削除されているとも報じられました。
昨年来、何度か地下壕を訪問していながら全く気付かなかったことを保存運動に関わって来た一人として反省しています。
過去の植民地支配の歴史、朝鮮人強制連行の歴史に眼を瞑る行為は許されません。
松代大本営工事が朝鮮人強制連行・強制労働の象徴的事象であるだけに、尚更です。
朝鮮人強制連行真相調査や追悼碑を守る会で行ってきた私たちの調査によると、松代大本営工事の建設に従事した朝鮮人労働者は約6千人と推定され、さまざまな証言や記録から、そのうち約4千人が朝鮮半島や日本国内の建設現場などから強制連行されたと結論付けました。
朝鮮半島からの動員は、「募集」「官斡旋」「徴用」などの方式がとられましたが、制度的にはいずれも「労務の強制」にあたります。
確かに、松代大本営工事が他の建設工事に比べ賃金が高いことから「自主渡航」した朝鮮人がいたことは事実です。
しかし、朝鮮半島を植民地支配し、創氏改名など民族の自決権を踏みにじり、戦争遂行の国策のために朝鮮人を国内に強制的に連行し、大本営工事をはじめダムや地下飛行場の建設に強制的に従事させた歴史を否定し消し去ることはできません。
一連の市行政の対応は、「歴史認識への真摯さの欠如」にあると思います。
折しも8日は、戦後50年にあたる1995年に象山地下壕入口に建立した「松代大本営朝鮮人犠牲者追悼祈念碑」を守る会(略称=松代大本営追悼碑を守る会)の19周年の集いを壕前で催したことから、参加者からも口々に「歴史の改ざんだ」といった批判が飛び交いました。
壕前での記念の集いに続いて開いた「追悼碑を守る会第20回総会」では、「守る会」として長野市に対し「強制的に」という表記を復元するよう求める要請活動を行うことを確認。
8月11日(月)午後4時から長野市長及び教育長あてに申し入れを行うことにしました。対応は樋口副市長となります。教育委員会は調整中。
松代大本営地下壕は、今年11月11日、一発目の発破がかけられ工事が始まってから70年目となります。また、松代大本営追悼碑は、来年8月10日に碑建立から20年の節目を迎えます。
よく引用されますが、ドイツのヴァイツゼッカー元大統領の戦後40年の記念演説「荒れ野の40年」を噛み締めたいと思います。
「過去に目を閉ざすものは結局のところ現在にも盲目となる。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危険にも陥りやすいのだ」