20日から22日にかけて、長野市議会総務委員会の行政視察で熊本市・西宮市・豊田市を訪問・勉強してきました。
まずは熊本市編です。速報ですが…。
■人口73.8万人の政令指定都市である熊本市の視察テーマは、H24年3月に策定された「公共交通グランドデザイン」、H25年4月施行の「熊本市公共交通基本条例」、「市営バス交通の民間移譲とバス路線網再編」です。
■「公共交通グランドデザイン」は、人口減少・超高齢社会を見据え、過度にマイカーに依存しない、誰もが気軽にお出かけできるまちの実現を目指し、「公共交通を基軸とした多核連携のまちづくり」を目標に、基幹公共交通である鉄道・市電・路線バスの強化、日常生活を支えるバス路線網の再編、公共交通空白・不便地域への対応の三つを課題に概ね10年後の公共交通体系のあるべき姿を描いたビジョンです。長野市版公共交通ビジョンに相当するものとなります。
■「熊本市公共交通基本条例」は、グランドデザインを具現化するため、市民・事業者・公共交通事業者・行政の役割や責務を明確にして、協働で公共交通の利用促進に取り組むことを明記した条例で、理念条例となっています。
基本理念に「市民は日常生活及び社会生活を営むために必要な移動をする権利を有するとの理念を尊重」と市民の移動権について言及している点が特徴であり、国が定めた交通政策基本法の在り方を先取りするものです。理念条例とはいえ、公共交通により円滑に移動可能な地域社会の実現を目指す条例を定めている点は特筆すべきでしょう。金沢市の公共交通利用促進条例と共通点が多いように思いますが、さらに詳しく勉強する必要があります。
私的には、公共交通への利用転換=マイカー利用の規制に踏み込んでいるものがあるかが関心事でしたが、パークアンドライド以上の施策展開にはまだ至っていないようでした。
■「市営バス交通の民間移譲とバス路線網再編」は、九州産交バス㈱の経営破たんを契機に、熊本市交通局が持つ市営バス路線の移譲が求められるところとなり、民間バス事業者3社が主導・出資する形で設立された「熊本都市バス㈱」に市交通局のバス路線の全面的な移譲が進められるとともに、競合路線の適正化・再編に取り組んでいるものです。市街地を中心に市電とともに市営バスが運行されてきた熊本市の特異性が背景にあるものですが、民間バス事業者による競合路線の調整・再編が取り組まれている点は注目です。
今のところ、統一時刻表や路線図の導入、運行ダイヤの調整が試みられていますが、バス事業者間の利害を超えて利用者優先で運行体制を含め一体化・一本化していくには、まだ時間がかかりそうです。
■長野市では、『公共交通ビジョン』の策定を進めています。ビジョン策定を諮問された交通対策審議会では、熊本市の取り組みを先進・参考事例として取り上げてきていることから、一度はきちんと押さえておきたいと考えていた自治体の取り組みの一つです。
長野市が策定する公共交通ビジョンの理念やまちづくりの目標、市街地及び交通空白・不便地域などを結ぶ公共交通ネットワークのあり方を検証・検討するうえで、刺激となりました。
■熊本市では、廃止代替路線のみならず、一般系統・路線に対する赤字補てんを市単独で実施していることも注目です。H25年度で約6億円に上るそうです。政令指定都市だからとせずに、長野市においても県の対応策を含め検討したい課題です。
【付録です】
◆熊本市議会のPRビデオ
熊本空港までマイクロバスで迎えに来ていただきました。市役所までの移動時間に車内で見せていただいたのが熊本市議会のPRビデオです。15分モノですが、これが良くできていて感服です。二元代表制のもとにおける市長と市議会の役割の違いを整理し、議決機関である市議会の責務をアピールするものです。何と7カ国語のバージョンにもなっています。
外国語バージョンはさておき、議会報告会などに「市議会のあらまし」として取り入れられないものかと考えさせられました。
◆市民にオープンの議会図書室
熊本市議会の議会図書室は市民にもオープンとなっていました。職員が2人常駐しています。市民には貸出なしで閲覧のみだそうですが、調査研究のために利用されているとのことです。新庁舎における議会図書室の在り方の検討に活かしたいものです。
◆熊本といえば「くまモン」です