消費者基本法や消費者安全法、消費者教育推進法を踏まえ、消費生活行政を全庁的に推進し充実させる取り組みが求められています。消費生活行政は「消費生活センター」にお任せになっている嫌いがあり、これでは、消費者の権利を尊重し消費者の自立を支援する行政としての取り組みが全うできないことから、長野市版消費生活基本条例の制定、消費者教育基本計画の策定と施策の具体化、消費生活センター相談員のスキルアップなど、3点について質問しました。
実際の質問では、残り時間が少なく、質問する問題意識を省いて質問することになってしまいました。ここでは、問題意識を含めて報告します。
◆問題意識は「行政の不作為」とならないこと
消費生活行政の充実に向けた私の問題意識は三つありました。
一つは、私がH19年の3月議会で、消費者基本法の制定を踏まえ、消費者の権利を明記し必要な施策を展開するため、H11年に制定された「長野市消費生活の安定及び向上に関する条例」の改定を提案した際に、当時の生活部長が「長野県の条例制定の動向やその整合性などを十分に見据えながら、条例改正作業を進めていきたい」と答弁し、その後、県ではH21年1月に消費生活行政の基本となる「消費生活条例」を施行していますが、市行政の取り組みが見えないことです。
二つは、消費者教育推進法の制定と前後する形で、市では、長野市消費生活協議会に対し、H23年度に市長から消費者教育・消費者啓発の充実について諮問し、H25年5月に「消費者啓発・消費者教育の推進について」提案を含む総括的な答申書が提出されました。しかし、H25年度では新たに協議会の委員を任命することもなく、閉店状態となり、答申の具体化が見えないことにあります。県では、現在、「消費生活基本計画」の策定が進められていますが、市協議会の答申を踏まえた具体的な施策展開が図られていないのではないかという点です。
三つは、詐欺まがいの悪質な商取引の手口が複雑化・高度化している今日、またそれらの被害に対応する法改正が頻繁に行われている中、相談員のスキルアップが求められるところなのですが、市消費生活センターでは、H24年度まで行われていた東京都の消費生活センター相談員による指導研修が事業終了し、研修の機会が減少している傾向にあるのではないか、結果、市民の相談に的確に対応し解決する態勢として課題を残しているのではないかという点です。
また、市消費生活センターにおける相談件数は、3,000件くらいで推移し、通信販売や悪質商法による相談のウェイトが高く、また多重債務の相談も多いものとなっているのですが、相談への対応として、情報提供の割合が高く、消費生活センターが消費者・相談者と事業者の間に入り、問題解決に向けた調整を行う斡旋の割合が低いことも課題ではないかということです。
高齢者の相談が多いだけに、情報提供だけで本当の問題解決につながっているのか、例えば、クーリングオフの場合に、ハガキの書き方を情報として提供するだけでなく、事業者に連絡しクーリングオフする事由を伝え、誠実かつ確実な対応を担保することを裏打ちし、相談者に速やかな対応を求める、手取り足とりの丁寧な対応がより必要なのではないかということです。できているのかもしれませんが…。
少子高齢化社会、高度情報社会にあって、消費者を取り巻く環境は大きく変化するとともに、環境問題や食の安全への関心が高まる中、消費者の行動が消費社会にとって大きな影響力を持つと考えられています。
こうしたことを踏まえ、消費生活行政は消費生活センターにお任せではなく、全庁的な取り組みにすることが重要なこと、行政としての不作為によって市民生活・消費生活が脅かされることの無いようにしていきたい、自立した消費者をともに育成したいというのが問題意識です。
◆「条例策定と基本方針の構築の必要性について市消費生活協議会に諮る」
市側は、長野県消費生活条例の制定を踏まえたH20年9月の市消費生活協議会で、市独自の条例を定める理由がない、現行条例のままでも大きな問題はないなどの意見が出され、最終的に条例改正を見送り、現在に至っていると説明。
その上で、消費者を取り巻く環境が大きく変わってきていることから、また消費者教育推進法の施行を踏まえ、県の動向を注視しつつも「長野市版消費生活基本条例の制定と基本方針の構築の必要性について、新たに教育関係者も加えた消費生活協議会に諮る」と、新しい方針を示しました。
新年度の成り行きに注目です。
◆「消費生活基本計画の策定も市消費生活協議会に諮る」
「消費者教育推進法を踏まえ、6月に策定される長野県の消費生活基本計画の全容を十分に精査したうえで」という条件付きですが、「長野市版同計画の策定についても、消費生活協議会に諮っていく」と答弁しました。
これまた、新年度の成り行きに注目です。
◆「相談員の資質向上に努める」
市消費生活センターには、専門的な資格を有する3人の相談員が置かれています。
市側は、「国民生活センターや県消費生活室が開催する研修会に延べ6人の相談員が出席、新たな知識やノウハウを習得している。また国民生活センターのネット配信によるDラーニングのプログラムも活用し学んでいる」とし、「新たな手口に的確に対応するため、また市民の不安の解消が図られるよう、研修会への出席、情報の収集など、相談員の資質の向上に努める」と答弁しました。
「斡旋率の低さ」は質問できませんでした。改めて現状と課題を調査したいと思います。
長野県は新年度予算で「消費生活安定向上事業費」に9840万円を計上、今年度比で3倍以上に増大させました。消費生活基本計画の策定をはじめ、「狙われやすい消費者」集中啓発や消費生活サポーターの設置、市町村相談体制の強化・支援を内容としています。
長野市として、県予算もしっかりと活用しつつ消費生活行政の充実を図っていくことを、引き続き求めていきたいと考えます。