17日、本会議で行った反対討論の元原稿です。16日のブログ内容と要旨は基本的に変わっていませんが、掲載します。
33番、市民ネット 布目裕喜雄です。
議案第126号「長野市斎場の設置及び管理に関する条例の一部を改正する条例」を採択すべきものとした福祉環境委員会委員長報告に反対の立場で討論します。
反対討論ではありますが、市民に新たな負担を求めることになる議案について、理事者からの正確で適正な資料の提出、説得力のある説明に基づいた審議が十分に尽くされたのだろうか。いや、さらに多面的にかつ十分に審査を行い結論を出し直すべきではないか、といった視点からの討論とします。
私は12日の福祉環境委員会を傍聴しました。
この議案は、大峰・松代両斎場を全面改築することに伴い、新斎場における火葬料を、12歳以上の大人の場合で、現行の8,000円から15,000円に引き上げる内容です。待合室料金を含むものとされます。また、葬祭具の貸し出し・販売も縮小し、指定管理者に指定業務として移管する内容も含まれています。
福祉環境委員会では賛成多数で採択すべきものとされました。
大峰斎場は来年10月オープン、松代斎場は再来年3月オープンをめざしていますが、斎場の利用者負担について、施設改修費を含めた「管理運営費の50%」(行政サービスの利用者の負担に関する基準による)の基準を適合させているものです。
31,548円の管理運営費の50%分、15,774円を適正な利用料金としたうえで、中核市平均や34の新設斎場の平均利用料金に鑑み15,000円としています。
議会への説明資料及び福祉環境委員会における審査では、42中核市の平均では9,339円(別途料金となっている待合室料金を含むと13,094円)、H16年度以降に新設された34斎場の平均では12,614円(待合室料金を含むと17,499円)で、長野市の場合、2倍近い引き上げとなるが、「他市と比べ際立って高い水準ではない」と説明されました。
また、委員会では、理事者から「一生に一度の利用であり、国保の葬儀料5万円の枠内に収まることから、市民の理解が得られると考える」とも答弁されました。
生活部市民課・斎場対策室から提供いただいた資料があります。中核市及び34新設斎場の使用料一覧です。
これによると、中核市では青森・秋田・郡山・宇都宮・前橋・高崎・横須賀・富山・岡崎など9市(21%)で斎場利用料金は無料で実施されています。火葬料金10,000円以下は24市に上ります。(中核市の半分以上57%に相当)
議会への説明資料では、「市民無料の中核市9市あり」とは記載されていますが、中核市平均は「42市の平均」として示され、無料・ゼロ円実施の9市を除く平均値として算出されていることは明らかにされませんでした。無料実施を含めた42中核市平均は待合室料金込みで8,384円と試算されるはずです。長野市の現行と大きな差異はないのです。
H16年以降の新斎場で比較しても、札幌・長岡・浜松など6市で火葬料金は無料・ゼロ円実施、待合室料金を設定しているのは43市中13市に過ぎません。ゼロ実施を含む火葬料金は平均で10,388円、待合室料金は1,867円となり、新斎場43施設の利用料金平均は12,255円と試算されるところとなります。
すなわち、12歳以上の大人の火葬料金(待合室料を含む)ものは整理すると次のようになります。
現行料金は8,000円、新料金15,000円、中核市平均は1,3094円が8,384円に、新斎場平均は17,499円が12,255円になるのです。
議会説明資料に、数字のマジックが巧みに使われていると思うのは私だけでしょうか。平均点をゼロ点を含めず算出する方法は、マジックなんてものではなく、平均点を高くするための恣意的な情報操作を疑われても仕方がありません。
学校のテストの平均点において、零点の数を含まずに算出してしまえば、それは平均点とはなりません。平均値のあるべき数値を正確に示すべきでしょう。
無料実施は政策的判断に基づくものであり、平均値算出からは除くというのは全く道理がありません。
こう考えると、「15,000円の利用料金は高くはない」としてきた根拠は既に崩れてしまっているのではないでしょうか。
少なくとも間違った説明、あるいは極めて不十分な説明資料に基づき、議案の審査が行われてしまったということになりはしないのでしょうか。
類似都市、斎場新設都市と比べ、「高い利用料金設定」になっている事実を厳しく指摘したいと思います。
しかも、利用料金の減免基準すら明確な基準が委員会では示されてはいません。「特別に市長が認める場合」とされているだけです。
大峰、松代の新斎場は、確かに個室対応で最後の時を静かに見送る施設として利便性や静寂性は格段に向上します。
しかし、市民の人生最後の時だけに、一生に一度のことだからこそ、利用料金の引き上げには抑制的であってほしい、否、抑制的であるべきと考えるものです。
さらに、そもそも、市民サービスにおける利用者負担に関する基準において、斎場の利用料金を管理運営費の50%基準とする合理性があるのでしょうか。行政として「義務的か裁量的か」の物差しと「公益的か私益的か」の物差しを組み合わせた基準ですが、なぜ管理運営費の0%・25%ではなく50%なのか、説得力ある説明を頂けていません。福祉環境委員会においても議論が深まったとは言い難い状況にあったのではないでしょうか。
日本においては火葬が普遍的であり、公衆衛生上、行政も奨励している遺体の処理方法です。長野市内には公の火葬場施設のみです。公益性が高い市民サービスであり、民間には火葬業務はなく義務的な仕事であるということです。利用者負担の割合は0%から25%といった範囲で裁量されるべき市民サービスであるべきでしょう。
こうした観点・事情からも、無料で実施している行政の基準にも広く問題意識を持った検討が行われて然るべきではなかったのかと考えます。
年間4,400人の利用を見込んでの検討ですが、例えば新料金を2,000円引き上げの10,000円に設定した場合には、2,200万円の経費増となります。2,200万円の経費増は、裁量の範囲であると思います。市民に温かいか、冷たいかの選択でしょう。
前例踏襲を見直すとする加藤市長には、基準をそのまま導入する前例踏襲こそ見直してもらいたいものだと思います。
本来であれば、新斎場利用料金15,000円の根拠について、議案質疑を行い、広く議論を起こすべき問題であったと反省していますが、市民に新たな負担をお願いする議案であるだけに、適正な資料に基づき、多面的・多角的に十分に審査が尽くされることが重要であると考えます。
改めて審議を尽くすことが求められています。市民に対する議会の責任を尽くすべきです。
以上申し上げて、討論とします。