公設民営=DBO方式…新しいごみ焼却施設の建設・運営

 長野広域連合が建設する新しいごみ焼却施設の建設及び運営管理について、事業方式を「DBO方式」とする方向で最終段階を迎えています。11月の広域連合理事会で決定される予定です。
 7月16日の広域連合臨時議会で「考え方」が示されたことを踏まえ、29日に広域連合議会福祉環境委員会を開き、所管事項として集中審査しました。
 私は、公設民営方式に絞り込んできた事業手法の検討経過を踏まえつつ、民営となるDBO方式における公共=行政の関与の重要性、具体的な担保の提示と住民合意を指摘しました。

★「DBO方式が最適」との結論
 「DBO(デザイン・ビルド・オペレート)方式」というのは、設計・建設と運営・維持管理を民間事業者に一括発注するもので、公設民営の一つの方式です。
 長野広域連合の新しいごみ焼却施設は、現長野市清掃センターがある長野市大豆島松岡に建設することが地元と合意に至り、3月には基本協定が締結されました。
建設及び運営管理の事業方式については、ここ10年来検討がされてきました。当初は公設公営(運転委託を含む)方式、PFI等の民設民営方式、そして公設民営方式で「長期包括委託方式」「DBO方式」の4つを俎上にあげ比較検討し、民間活力の導入を図ることを重視する観点から、最終的に「長期包括委託方式」と「DBO方式」に絞り込み、「DBO方式が最適」との結論に至ったものです。

 公設民営=DBO方式の主なメリットとして、次の4点が指摘されています。
➊施設の設置が公共であることから、最終的な責任の所在を明確にしつつ、民間活力の導入が図れる点において優れていること。
➋長期間(15~20年)にわたって計画的な維持管理がてきることや、運営・維持管理費用の低減、平準化が図れることから、安全・安心および経済性において優れていること。
➌建設と運営・維持管理を一括で発注することから施設建設計画に維持管理のノウハウが反映でき、最適な施設計画が可能である点において優れていること。
➍建設と運営・維持管理を一体のものとし同時に発注することから、運営・維持管理契約にも競争性が期待される点において優れていること。

 公設民営=長期包括委託方式は、建設事業者と運営・維持管理事業者を別々に選定する方式で、設計・建設時に運営・維持管理のノウハウが反映しずらく、運営・維持管理にあたっては、建設プラントメーカーの関連会社との随意契約になるケースが多く競争性が有効に発揮されないとしています。

 ごみ焼却施設建設における、過去5年間の他自治体の契約52件の調査では、公設公営(直営・運転委託)15件、長期包括委託方式6件、DBO方式30件、PFI方式1件と、「DBO方式を採用する自治体が極めて多くなっている」とのことです。民間活力導入による一つのトレンドとなっているようです。

★専門委員会での意見
 事業手法を検討してきた広域連合の専門委員会では、「DBOなどでは、競争が激しく建設・運営費がかなり安くなっているものがあり、適正な事業費について考察する必要がある」「事業費に大きく影響を与える売電収入を過剰に見込む可能性があるので注意が必要」「DBOの場合、事業が適切に執行されているか常にモニタリングすることが大事」「売電収入や溶融スラグの利活用について、明確なリスク分担を判断すべき」などの意見が出されてきました。

★DBOでの事業実施の留意点
 こうした意見等を踏まえてのものと思われますが、広域連合側からは、●運営状況をモニタリングすることで安心・安全で安定した施設の稼働を担保すること、●リスクを最もよく管理するものが当該リスクを分担することを基本に、公共と民間の適切なリスク分担が必要なこと、●発電や資源化に対するインセンティブを働かせることにより、財政的にも安定した施設の稼働を担保すること、などを留意事項にあげました。
 モニタリングは当然のことですが、周辺住民を含めどんな態勢でモニタリングしていくのかは未定です。また、民間へのインセンティブを強調することで、民間にウェイトを置いたリスク分担になって良いのか、解消できない疑念が残ります。

★公共の関与・責任を明確に
 私は、DBO方式により事業費が圧縮・軽減されるとはいえ、設計・建設、運営・維持管理にあたり、住民に対する安心感を担保しつつ、安全かつ安定的に施設が運営される観点から、公共の関与・責任を明確にすることを強く求めました。
 民間企業である以上、効率性・経済性が優先され、安全・安心が「二の次」になってしまいかねないことを危惧するからです。
 
 売電価格固定制度により売電収入は一定のものが見込めるにしても、溶融スラグの利活用は県内および周辺ではまだ道が開かれていないことから、運営・維持管理費用が公設公営に比べ、どれだけ圧縮できるのかは確定的ではありません。
 
 事業者決定はプロポーザルではなく総合評価入札制度によるとされていますが、売電やスラグ資源化など運営・維持管理事業費に“見せかけ”が無いように厳しくチェックする態勢が必要なこと,適切なリスク分担において公共=行政の責任を明確にすること,事業にあたり設置される特別目的会社=SPC(この民間会社が建設・運営管理を行うことになる)への行政の関与・管理監督責任を明確にすることなどを要望しました。

★現清掃センター職員の雇用も重要問題に
 民営化されることから、長野市清掃センター・須坂市清掃センター・北部衛生クリーンセンターの職員の雇用問題が発生することになります。
 広域連合では「職員の処遇について検討する必要がある」との認識を示すにとどまっています。それぞれの自治体において、職員労働組合とは協議の対象にしているとのことですが、確認が必要です。
 ごみ焼却施設はH30年度稼働計画です。あと5年。
 私は、DBO方式による建設・運営管理を決定する段階で、職員全員の雇用継続を確認するとともに、現在の職員の知見・技能・技術が活かされる職員配置に万全を期すことを求めました。
 さらに、民営化されるとしても、公共=行政の中において、ごみ焼却施設の管理・運営に関して専門的な知見と技術を持った職員を擁し、持続的な管理監督ができる態勢を今から準備していくことの重要性を指摘しました。

 これから、事業者選定に向けて、専門的なコンサルタントとアドバイザリー業務契約を結ぶことになり、アドバイザーのもとで全ての事柄についてまとめられていくことになります。
 9月議会で議会人事を行うことから、広域連合議会議員から外れるかもしれませんが、進捗状況を厳しくチェックしていくことが重要となっています。

★灰溶融炉はやはり再検討を
 後は、やはり、灰溶融炉の設置が問題です。長野市議会の中では、私自身取り上げてきている課題です。
 広域連合の今日の委員会の中では、言及しませんでしたが(言及された委員もいましたが)、全国的に灰溶融炉からの撤退が相次ぎ、溶融スラグの資源化の見通しが明確になっていないことをしっかり踏まえることが重要であると思います。
 「灰溶融炉の設置如何では基本協定が振出しに戻る」との意見もあります。しかしながら、周辺住民にとって、より安全性と経済性を担保することにつながることになり、同意を得ることが困難であるとはいえないと考えます。
 人口減少を踏まえてのごみ減量の見通し、溶融スラグ資源化の見通し、灰溶融炉からの撤退による事業費の減、溶融飛灰の処理、最終処分場における処分量の見通しなど、総合的に再検討することが必要です。

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