先々週のことになってしまいましたが、5月22日から24日、市議会建設企業委員会で行政視察を行いました。
千葉市でサッカースタジアムの整備と活用、奈良市でJR奈良駅周辺のまちづくり、神戸市では住生活基本計画や高齢者居住安定確保計画の状況などをテーマとしました。
まずは、千葉市=ジェフユナイテッド市原・千葉のサッカースタジアムについてです。
1.千葉市蘇我スポーツ公園内のサッカースタジアム
現在、J2リーグに所属するジェフユナイテッド市原・千葉のホームスタジアムである総合球技場を視察。医療機器メーカであるフクダ電子が命名権を持ち「フクダ電子アリーナ」(略称=フクアリ)の名で知られる。
用地は川崎製鉄の跡地を活用している。周りではまだ川崎製鉄が操業をしている環境にある。都市再生総合整備事業=「蘇我特定地区整備計画」のもと、千葉市蘇我スポーツ公園=総合運動公園として整備されたもので227haもの広さを持つ。
フクダ電子アリーナ=サッカースタジアムの他に、フクダ電子スクエア=サッカー2面(人工芝)、多目的グランドとして2.5ha、6.0ha、2.2haの三つの多目的グランド、20面の人工芝テニスコート、レクリエーション広場などで構成される。公園全体は整備途中でH33年までを事業期間とする。広いというのが実感だ。
2.18,500席、4面フルの屋根付きで建設費81億円
個席で18,500席、地上4階建て、天然芝のスタジアム。竣工はH17年9月で工期22か月を要し、総事業費は約81億円(一般財源6.56億円、国庫支出金9億円、地方債65.66億円)。日本設計(株)の設計で清水建設・大林組のJVで施工された。
特徴は、スタンドとピッチとの距離が最短で8メートルと非常に近く臨場感があること、スタンド席の9割をカバーする円弧上の屋根の設置、南側の屋根は、天然芝の成長に考慮し、透明なポリカーボネイト板を採用し日照を確保、ピッチ上の通風を確保するため、スタンドへのスリットの導入や南北駐車場側にシャッターを設置、外部エレベータの設置やコンコースの多機能トイレにオストメイトを設置するなどユニバーサルデザインに配慮、大規模災害時には、救援・復旧・復興のための後方支援型活動拠点となる「広域防災拠点」となる(40t飲料用耐震性貯水槽・自家発電機・防災備蓄倉庫・球技場地下に770t雨水貯水槽・ヘリポート)。
屋根に降った雨水をトイレの洗浄水や芝への散水として活用する仕組みが導入されている。
スタジアムに隣接した区画には、ジェフ市原の専用練習グランド(天然芝)がある。
3.ピッチ利用は年間80日…1試合9,300人を動員
H23年度で、Jリーグ22試合・21万人、その他フィールドや会議室等の利用を含めて430件・約8.2万人、合計29.3万人。
芝生の養生のため、ピッチの利用は年間80日に抑制している(H23年度は72日)。Jリーグ以外では、天皇杯やなでしこ、大学・高校のサッカー8試合、ラグビーが1試合(ラグビーはサッカーシーズンオフの2月のみ)と、ピッチそのものは、いわばJリーグ専用のグランドになっている。
入場者数は、2012年シーズンで、Jリーグ21試合・194,893人、1試合平均9,280人を数える。
スタジアムのコンコースは、車の乗り入れが可能で、搬入はもとより、店舗車が繰出せるようになっている。
4.マイカーは3割…JR蘇我駅から徒歩8分の利便性
JR蘇我駅から徒歩8分と恵まれた交通環境にある。東京駅から蘇我駅まで快速で41分、千葉駅からは6分だ。約9,000人の入場者の内、自家用車は約3割だそうだ。駐車場は常設のものが第1~第3で950台、ゲーム時にはチームで臨時駐車場を550台確保し、計1500台となる。
5.指定管理者を導入…年間1億2千万円余の市費を投入
公募により「シミズオクト・東洋メンテナンス共同事業体」を指定管理者とする。大規模なスポーツ施設の指定管理は初めてという事業者であるが、現在2期目(5年)だそうだ。
運営・維持管理費は、市の委託料1億2,180万円と利用料金収入3,890万円で賄い、広告看板やイベントなどの自主事業で6,500万円の収入を得、必要経費を差し引き1,140万円の収益をあげている。
芝生の管理は夏芝と冬柴の植え替えが必要となるそうでねんかん3,300万円をかける。
6.「フクアリ」=年間3千万円の命名権料
J1リーグ時は年間5,000万円だったそうだが、J2降格後は年間3,000万円に。スタジアム内の企業広告も、J2リーグで減少したとのことだ。経済状況があるのだが、なかなか厳しい。
指定管理委託料と相殺すると、スタジアムに年9,000万円を投じていることになる。命名権の販売は不可欠だ。
7.野球場に比べ高い利用料金
利用料金は、一般利用でフィールドと全スタンドの場合、2時間まで42,300円、1時間超過ごとに21,150円加算、照明設備を利用する場合は照度1000ルクスで1時間49,300円、ほかに諸室を利用する場合は別途料金となるが、諸室利用は手頃な料金に設定されている。
長野市のオリンピックスタジアムは、アマスポーツ利用で入場料を取らない場合で、午前7,000円、午後10,000円、夜間8,000円とお手ごろ感がある。 照明料も最大光度で1時間10,000円に設定されている。
サッカースタジアムの一般アマチュア利用の場合の料金設定は今後の課題となるところだ。
8.所感としての課題
➊フクダ電子アリーナは総合球技場として位置づけられているものの、実質的にサッカー専用スタジアムでありJリーグ専用スタジアムとしての利用に限定され、ピッチの利用は年間80日に制限されている。全国的には100日としているスタジアムもあるようだが、年間約4分の1しか稼働できないという現実は想定外であった。Jリーグ側から芝生の養生管理を優先するよう求められていることが背景にある。
長野市の総合球技場は、サッカーだけでなくラグビーやアメフトなどの国際的試合に活用することを打ち出しているが、J2昇格の暁には、芝の養生管理のために利用が制限されることが予想される。サッカーに限定しない多目的利用について、パルセイロ側やスポーツ競技団体との協議において、今からしっかりとした構えを持つことが重要であろう。
➋サッカースポーツの底辺拡大のためのグランド整備が進んでいることに注目したい。ジェフ市原がチームとしての天然芝・専用練習場を隣接した区域に保有していることをはじめ、公園内には人工芝だが2面のグランドが整備され、また臨海地区に天然芝グランド2面が整備されているそうだ。底辺拡大に向け、練習場の確保も長野市にとっては今後の課題となるところである。
➌交通アクセスは重要なポイントである。入場者の7割が公共交通機関を利用している。9000人の受け皿として、それでも1500台分の駐車場が確保されていることをどう評価するか。長野市の場合、現在700台分の整備である。入場者数を勘案すれば、長野は周りが農地であるため、シャトルバス運行でしのぐしかないのではと考えるが、オリスタとサッカースタジアムの同時利用の制限など、施設運営上の課題は残るといわなければならない。公共交通機関の利用を促進しうる交通アクセスをしっかりと考えるべきである。
➍いずれ指定管理者制度を導入していくことになるものと思われるが、芝の養生をはじめ維持管理にどれだけの投資が必要になるのか、今から検証が必要となる。
➎スタジアムの施設として、防災拠点の考え方、雨水利用をはじめ環境に配慮した施設のあり方について、竹中JV案に何が盛り込まれ、何が不足しているのか、これまた検証と対応方が求められる。
➏JR蘇我駅に降り立った時から、駅舎内を含め「ジェフ市原」一色である。JR東日本がスポンサーになっていることが大きいのだが、「絶対J1!」「Win By All!」といったスローガンやシンボルが並び、サポーターの熱意が溢れている。この気運づくりが長野にとっての最大の課題であろう。