公共交通対策特別委員会の視察より、その➋として「BRTの岐阜市」を報告します。
◆岐阜市…路面電車の廃止⇒バス交通を基軸とした公共交通システムへ=BRT化
➊面積202㎢に人口41万人の中核市。人口密度は2,023人/㎢(長野市は460人/㎢)。岐阜県南部に位置する県庁所在地で、名古屋市からは電車で約20分の近距離にある。
➋視察テーマは「岐阜市型BRTの導入」について。
BRTとは「Bus Rapid Transit」の略で、バスレーンの導入など走行環境の改善によるバスの定時性や速達性を確保し、連節バスなど車両の高度化と合わせ、利便性・快適性を高めた次世代のバスシステムとされる交通システム。
全国で4番目(千葉市幕張副都=京成バス・藤沢市=神奈川中央交通・厚木市=神奈川中央交通)、首都圏以外では初となる連節バスの導入が目玉とされる。
岐阜市内では、JR岐阜駅と岐阜大学・附属病院を結ぶ路線と市内ループ線に導入され、岐阜バスが運行する。
因みに新潟市はH26年度中にJR新潟駅と白山駅を結ぶ約4キロの区間に導入する方針を決めている。
今回の視察の収穫は、実際にBRT=連節バスに乗車できたことである。
➌バスを活かした公共交通を軸としたまちづくりの背景
岐阜市は、かつては路面電車のまちで、岐阜駅を中心に名古屋鉄道(名鉄)の線路が縦横無尽に伸びていた街であったが、マイカーの普及や維持運行経費の増加から、順次、路線が縮小され2005年(H17年)3月に全廃となった歴史を持つ(もちろん、存続運動はあったのだが、費用対効果と軌道上における自動車の安全性確保の面から市民の大きな支持が得られず廃止となった)。
路面電車の縮小と相まって、H14年度に「オムニバスタウン」の指定を受け、バスを中心とした公共交通の活性化への取り組みが始まる。幹線支線へのバス路線再編を中心としたバス再編計画を策定、バスレーンやPTPSなどバス走行環境の改善、低床バスの導入などバリアフリー化の推進、バスロケーションシステムやICカードの導入、駅前広場整備やハイグレードバス停整備など乗継環境の整備を進めている。
【参考】「岐阜市総合交通戦略」
「岐阜市総合交通政策」
「岐阜市型BRTの導入」
「岐阜市コミュニティバス運行について」
➍岐阜市型BRTとは?
幹線・支線・コミュニティバスが連携したバスネットワークの確立と幹線バスサービスの向上により岐阜駅から路線延長約10㎞圏を30分到達圏域とすることを公共交通のサービス目標に設定。
①幹線バス路線のBRT化により、バス路線の再編を推進、
②需要や道路整備の状況に合わせた柔軟なルート選定、
③バスレーンの導入やバス停留所、乗り継ぎ拠点の整備、連接バスの導入などを段階的に進める、
この3点を「岐阜市型BRT」と位置づけるもので、「岐阜市BRT導入推進計画」により推進される。
➎カラー舗装されたバス優先レーンを走行する連節バス「清流ライナー」
岐阜バスに導入された連節バスは、岐阜名物の鵜飼と鮎をイメージする「清流ライナー」と命名され、H23年3月からJR岐阜駅~岐阜大学・附属病院間を、H24年8月からは土・日・祝日運行の市内ループ線(環状線)に導入、2路線で運行されている。
導入車両はメルセデス・ベンツ製の「シターロG」、座席46席で定員は130名。全長18m、全幅2.55mある。
国内の保安基準である全長12メートル、全幅2.5メートルを超える特殊車両のため、道路運送車両法、道路法及び道路交通法の特別な許可が必要とされる他、走行レーンや経路を厳守するという条件で、運転が可能となったものである。
導入にあたっては、警察や道路管理者との協議に1年近くかかったものの、道路環境の改良は、バスベイの確保や外側線の改良などで、大規模にものはほとんどなかったとのことである。走行路線として朝夕の「バス優先レーン」がカラー舗装で整備されている。「専用レーン」にはされていないが、急行便のため定時性はある程度確保されているとのことだ。因みにPTPSを長良橋通り3.9キロ区間に一部導入しているが、その効果は2分間くらいの短縮だそうだ。
実際に乗車した感覚では、18mの車両にもかかわらず以外に小回りが利いていると感じた。運転手さんに聞いたところ「大型観光バスの運転とほとんど変わらない。ただし後退がなかなか難しい」とのことであった。岐阜バスでは10人の連接バス専用ドライバーを設けている。課題は連節バスの回転場所だ。岐阜市の場合、起点となるJR岐阜駅前広場のバスプールが極めて広いこと(駅前広場だけで26500㎡もある。長野駅前広場の有に3倍はあろうかという広さだ)と終点の岐阜大学・附属病院の構内にトランジットセンターを整備し、乗り継ぎ拠点となる回転場所を有することが特徴的な条件となっていると思われる。
➏清流ライナー導入で、利用者4倍に
連節バス・清流ライナーの導入で、路線あたり1日平均250人の乗車が800人と4倍に増えているそうである。観光資源としても注目されているようだ。基本的には岐阜大学の学生の通学の足、附属病院の通院の足がベースになっていることが要チェックではある。
➐1台7,120万円の連節バス…専用整備工場1億円
連節バスは1車両約8,000万円という極めて高価なバスである。通常のノンステップ路線バスで約2,000万円だったと思う。
岐阜バスの連節バスの購入価格は当時で1台あたり7,120万円で、国が1/2、市が1/4、岐阜バスが1/4を負担するスキーム。連接バスには、専用の整備工場が必要で、これにかかる経費・約1億円がバス事業者負担となることから、車両購入に市負担を設定したとのことである。
専用整備工場の確保は、車両購入負担に加え、バス事業者にとっては課題となるところだ。
➑所感として…
*路面電車廃止からBRT化へ。バス交通中心の公共交通ネットワークづくりを基本に据えている点は、皮肉な結果ともいえるが、岐阜市総合交通戦略、岐阜市総合交通政策、そして岐阜市BRT導入推進計画と、目標と段階的な具体化を政策・施策にきちんと整理し位置付けられていることが大きな特徴であろう。長野市における新交通システムの導入調査、長野市版公共交通ビジョンの策定に向けて、参考にしたいところである。
*また、コミュニティバス13路線の利用者が多いことについてさらに調査が必要である。パークアンドライド推進のための「駐車場紹介システム」が施策化されていることと合わせて研究したい。
*連節バス導入の可能性について、現実感を持ちえたことが大きい。車両購入経費をどのように負担できるか、専用整備工場をバス事業者で確保できるか、回転半径を確保できる回転場所をどのように整備するか、或いは、南北交通軸(長野~若槻、長野~篠ノ井、長野~松代)に沿って8の字周りの循環線の路線再編が可能か、乗り継ぎ拠点=ミニバスターミナルの可能性、バス事業者2社間の調整(運行主体・路線など)などなどが課題として挙げることができよう。連節バス導入を決めている新潟市から、降雪時の運行について岐阜市に問合せが来ているとのこと、長野市も同様の条件となるのだが、岐阜市内は降雪がほとんどなく、参考となる事例とはならないようだ。降雪・凍結など気象条件も課題の一つとなろう。