「公共施設白書」、そして「公共施設再配置計画」の課題を質す
安易な施設廃止、民間移譲にクギ刺し、市民の合意形成の道筋確立を求める
「公共施設白書」とは、市内にある公共施設の量や状態、経費、利用状況の3つの視点から施設の全体像をとらえ、持続可能な公共施設の将来像を導き出し、公共施設再配置計画の策定につなげようとするものです。来年度早々には「白書」をまとめたいとしています。
人口減少・少子高齢化、健全財政の維持とともに、合併による公共施設の増加、さらに施設の老朽化、耐震化、維持改修を見据えると、「白書」の作成は待ったなしの課題です。
長野市の場合、箱モノだけでなく、道路・橋梁、上下水道などインフラも含めている点が特徴で、箱モノに限定する全国的な施設白書の作成状況を考えると大きな前進であるとも受け止めています。
それだけに新たな課題も浮上します。例えば、上下水道に必要な莫大となる維持改修費はすべてを使用料に転嫁できるものではないからです。道路や橋梁、上下水道の維持を持続可能なものにしようとすれば、限られた財源の中で、いわゆる”箱モノ”の抜本的な見直しは避けて通れません。
しかし、市民サービスの水準維持の課題とバランスを持った見直しが必要です。
★中山間地域の公共施設、五輪施設の将来、どう描くか
市域の7割を占める中山間地域における公共施設、そして五輪施設の存在が、長野市の特異性といえます。
特に維持改修に年間3億7千万円かかる五輪施設は、施設の存廃を含め大きな問題となります。
この特異性を十分に踏まえ、市民サービスを劣化させない公共施設の在り方と維持管理を考えることが重要です。
★コスト論に偏った安易な施設廃止はダメとクギ刺し
五 輪施設があるがゆえに中山間地域の公共施設にしわ寄せされるようなことがあってはなりません。コスト論に偏り、安易な施設廃止・統廃合、または民間への移譲にならないよう強くクギを刺しました。
市長は「住民生活に急激な変化を及ぼさないよう利便性などにも十分配慮し、地域全体のバランスや地域の特性、さらに財政事情を考慮しながら検討する」と述べるとともに「統合整備については、既存の公共施設の有効利用、相互利用等を総合的に勘案し、場合によっては新たな複合施設の建設なども視野に入れ、住民サービスの低下が最小限となるよう配慮する」と答弁。
『公共施設の見直しで住民サービスの低下は避けられない』との考えを滲ませました。大きな問題です。
★“市民とともにつくる”白書、再配置計画へ
公共施設の見直しは、市民生活に直結する問題であるだけに、市民の共通認識と理解が不可欠です。
白書の作成段階、再配置計画策定の段階で、それぞれ丁寧に市民の理解をつくる必要があります。
公共施設の在り方について、今から、住民自治協議会との十分な検討・協議、市民ワークショップなど市民参加によって、計画等を策定していく道筋を明らかにすべきと質しました。
市長は「公共施設の見直しは、市民と情報を共有し、同じ認識でともに議論していくことが大変重要であり、まちづくり市民会議や市政出前講座などを通し積極的な広報を展開する」との考えを示す一方、「再配置計画策定では、具体的な方法がまだ決まっていない。ある程度の時間をかけ、幅広い議論ができるような方法を検討する」と述べるにとどまりました。
公共施設の見直しは市政運営上の最重要課題となります。市民とともに見直しを進めるため、引き続き、市民参画の道筋を造っていきたいと思います。
実は、公共施設白書の作成をめぐって、今、全国から注目されている神奈川県秦野市の取り組みを視察する予定でしたが、9月議会前は秦野市が視察ラッシュで受け入れが叶いませんでした。秦野市では50年スパンでの公共施設再配置計画を策定しています。資料等は目を通ましたが、11月ごろに視察に行きたいと考えています。