「旧屋代線へのLRT導入困難」を審議した特別委員会

 2日、市議会のまちづくり・公共交通対策特別委員会を開き、長野電鉄屋代線跡地への次世代型路面電車LRTの導入を「現時点では困難」とした交通対策審議会の中間報告について審議しました。

 旧屋代線のLRT化をめぐっては、委員会の空気として、「予想されていた結論」と考えられるためか「やむを得ない」との受け止めが大勢、沿線地域の定住人口の拡大策、1200万人新観光プランに基づく観光振興対策、丁寧な地区住民への説明と理解を求める意見が出されました。

 さらに、今後検討されるれる市内一円での新交通システム導入にあたって、中山間地域とのバランスに配慮した公共交通網の整備、公共交通を軸にしたまちづくりと一体で検討するよう求める意見が相次ぎました。

 市側は、旧屋代線の跡地活用について秋ごろまでに方針をまとめるとともに、市全域を対象にしたLRTを含む新交通システムの導入の検討結果を本年度中にまとめ、新年度早々にパブリックコメント(市民の意見募集)を行う方針を示しました。

 私は当委員会の委員長を務めていますが、「導入困難」との中間報告はやむを得ない結論として受け止めていることを前提に、調査にあたっての検討手法、論理展開等について質しました。

 8月1日付で、HP本編に『「新交通システム導入の可能性調査」における検討手法の問題点』として掲載していますので、ご覧いただきたいと思います。

 運行経費を収支均衡論のすべて運賃負担とするロジック、運賃据え置きであれば赤字を市が全額負担とするロジックは極論であり、現実的な検討手法ではないとする指摘には、「今後の検討に活かす」と答弁。また、10年前のパーソントリップ調査に基づく調査手法については、「補正による適正な推計」とする一方、現在での公共交通分担率等の的確な補足については「調べてみないとわからない事柄」と認め、長野県域におけるパーソントリップ調査の実施を県に働きかけたい」としました。
 H25年度には、公共交通ビジョンの策定に取り掛かることから、市独自のパーソントリップ調査の実施を強く求めました。

 20日の新交通システム導入検討部会や30日の交通対策審議会を傍聴してきましたが、重い数字が羅列されているからでしょうか、パシフィックコンサルタントの調査報告を追認するだけで、まちづくりといった観点から協議が活発に行われたとは言い難い状況だなぁと率直に思いました。

 検討部会からの『中間報告』では、「LRT車両の魅力やエコ通勤による利用者増などの定性的な要素も考慮できないか、また今後、費用便益の算出には、将来の人口減少について考慮していく必要があるのではないかとの意見があり、今後の検討課題とする」旨が補足的に指摘されています。むしろ、この点が重要でしょう。今後の審議会や検討部会での調査・審議において、採算性のみに目を奪われず、少子・高齢、人口減少時代における公共交通網の意義、生活圏域を中心に歩いて暮らせるまちづくりをいかに進めるのか、という観点から議論が深められることを期待したい思います。

 地域公共交通網の整備を重点政策の一つにする長野市にあって、新交通システム導入の検討や公共交通ビジョン策定にあたり、公共交通への利用転換・利用促進策を具体化することが急務となっています。

【参考】
2012.08.01 「『新交通システム導入の可能性調査』における検討手法の問題点」(HP本編)
2012.01.30 「国交省の提起受け、LRT(次世代型路面電車)の導入問題を考える」(HP本編)

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