4月20日、長野県水平社創立100周年の記念集会が小諸市のステラホールで開かれ、狭山事件を考える長野県住民の会連絡会会長として招かれ参加しました。部落解放同盟長野県連合会が主催したもので、解放同盟の皆さん、行政関係者、議員など約300名が集いました。
1922年(大正11年)3月3日、部落解放運動の原点である全国水平社が京都市で創立され、その2年後、1924年(大正13年)4月23日に、長野県水平社が小諸市高砂座で創立されました。
それから100年、いまだに日本社会固有の差別である部落差別をなくすことができていません。部落差別解消推進法など人権確立に向けた法が制定されましたが、インターネット上での被差別部落の動画掲載による悪質な差別情報が拡散され、身元調査による就労差別・結婚差別は隠然として残っています。
集会では、県水平社100年の歴史を振り返る動画が上映され、県内在住の大学4年生の女性が、親が被差別部落出身であることを告げられたことを機に、理不尽な部落差別に向き合い、部落差別を根絶したいとする熱情を発表しました。心を打たれました。
県水平社100年を機に、部落差別をはじめとするあらゆる差別を許さない取り組みを大きく前進させたいものです。
前記の狭山事件を考える住民の会連絡会の会長として集会に寄せたあいさつ文を掲載します。
長野県水平社創立100周年に寄せて
狭山事件を考える長野県住民の会連絡会 会長 布目裕喜雄
「よき日」を体現、共有できぬまま、長野県水平社創立100周年を迎えることに無念を禁じえません。
厳しい差別と弾圧に抗して、部落解放-人間解放をめざした先達たちの苦闘、そして今を生きる私たちの部落差別撤廃、人権確立を希求する粘り強い運動にもかかわらず、日本社会固有の差別である部落差別はなくなっていないばかりか、社会情勢の変化に伴い、インターネットやSNS上での誹謗・中傷、ヘイトスピーチ、性的マイノリティや障がいのある人々への偏見など新たな差別も生まれ、より深刻化しています。
狭山事件で石川一雄さんが冤罪を訴えて61年になろうとしています。第三次再審請求では、「有罪」の決め手とされる万年筆のインク成分の違いなど弁護団による無実を証明する269点の新証拠の提出に対し、検察側はこれら新証拠をすべてを否定し続けています。第三次再審を担当する東京高裁裁判長が交代する中、新裁判長の下で、事実調べ・再審開始を求める52万筆の署名の重みを受け止め、弁護団が提出した石川さんの無実を示す科学的証拠を精査し、証拠開示、事実調べを実現し、再審の扉をこじ開けたいと切に願います。
狭山事件を考える住民の会は、被差別部落への予断と偏見による狭山冤罪事件の真相を語り継ぎ、石川さんの無実を晴らし見えない手錠をはずさせるため、運動のすそ野を広げようと発足しましたが、今日、会員の高齢化等により十分な運動展開を図ることができていません。
長野県水平社100周年にあたり、狭山冤罪事件の再審を勝ち取り、石川さんの無実を晴らすため、幅広い運動の再構築を見据えたいと考えます。
85歳となった石川一雄さんが2024年頭に寄せた「越年し今年こそはと自分に問う 支援者あっての光輝来たる」のメッセージを噛みしめ、再審を求める運動をさらにさらに広げようではありませんか。
「人の世に熱あれ、人間に光あれ」…全国水平社宣言の原点を改めて共有し、部落差別の根絶、人権確立に向け全力を尽くしましょう。社会に光を照らすのは、私たち一人ひとりの力ですから。
信濃毎日新聞の報道記事より