9月市議会定例会での質問より、答弁をQ&A方式でまとめてみました。まずは、withコロナ時代におけるPCR検査の抜本的拡充についてです。
希望者全員にPCR検査を可能とし、安心感の醸成を
国は、PCR検査能力の確保を繰り返し言明するものの、感染した可能性のある患者が検査を希望してもなかなか受けられず、「検査難民」とも言える事態が国民の不安を拡大させている現状にあるのではないでしょうか。
本来、PCR検査等を拡充し、感染者を把握し、隔離することで感染拡大を防止することによって、はじめて、社会経済活動と両立することができるようになります。
無症状者による市中感染が拡大しているとの指摘もある中、PCR検査等の体制を大幅に向上させることが問われています。
市長は議案説明で「感染者の早期発見が市民の安心感の醸成につながるよう一層の検査体制の充実を図る」と強調しました。withコロナの時代にあって、感染の不安を抱え検査を希望するすべての市民に検査を実施し、安心感を醸成することが重要です。
9月補正予算には、保健所にPCR検査機器を1台増設し1日48検体検査ができるようにする他、開業医で1日72検体分を目標にPCR検査(唾液検査を含む)を公費負担で実施する費用が盛り込まれました。
さらなるPCR検査の抜本的拡充を求めて質問しました。
答弁は、国や県の方針に沿ったもので、市独自にさらに抜本的に検査を拡充していく姿勢を引き出すには至りませんでした。引き続きの課題です。
エッセンシャルワーカーに対し、一斉・定期検査の実施を
感染リスクに向き合いながら仕事を続けるエッセンシャルワーカーを対象としたPCR検査の一斉実施・定期的実施が必要であると考えるがいかがか。
保健所長=政府が8月28日に決定した「今後の取り組み」の中で、「感染者が多数発生している地域やクラスターが発生している地域においては、その期間、高齢者施設等に勤務する者、入院・入所者全員を対象に一斉・定期的検査の実施を都道府県に求める」としている。国からの要請や市内の発生状況を踏まえて適切に対応していきたい。無症状の方のウイルス量の増減はまだ詳しく解明されておらず、どのタイミングの検査が適切か明らかになっていない。また、感染し発症する方であっても、陽性とならない方が3割ほどあるとされ、さらに、結果が判明するまでに、その間の感染を確認することができず、検査の実施が必ずしも安全の確保につながらないことになる。症状や感染機会がない方を対象としに検査を実施する場合は、こうした状況も十分に踏まえた対応が求められると考える。
「プール方式」を導入し検査の拡大を
Q.「世田谷モデル」を参考に「プール方式」による検査の拡充を図り、エッセンシャルワーカーの定期的検査につなげられないか。
世田谷モデル・プール方式とは…東京大学名誉教授で同大学先端科学技術研究センターがん・代謝プロジェクトリーダーを務める児玉龍彦氏からの提案をうけ、「世田谷モデル」として、「いつでも、だれでも、何度でも」検査が受けられる目標を掲げ、「プール方式」による社会的検査の拡大に取り組んでいます。「プール方式」とは、例えば5人分をまとめて試験管に入れて検査する方法で、陽性反応があれば、改めて1人ずつの検体を調べるもの、反応がなければ5人分が一度に陰性と判断でき、検査時間や費用を抑えることができるとされています。米国や中国、韓国でも採用され、大規模な検査につながったとされます。
保健所長=大量の検体を速やかに検査する手法として「プール方式」の概念は理解できるが、新たな検査方法を導入する場合には、従来と同等の精度の確保が不可欠となる。新型コロナの検査は、長野市環境衛生試験所を含む全国の衛生研究所で、国立感染症研究所が示すマニュアル等に基づき検査を行っている。「プール方式」の導入も、国または大学のレベルで妥当性等が検証されるべきと考える。
かかりつけ医でのPCR検査の実現度は
開業医検査を1日72検体と想定し10月実施に向け準備が進められているところであるが、開業医での検体について民間検査機関の検査受け入れが適わなければ実効性がない。かかりつけ医で行われる72検体検査の実現度はいかがか。
保健所長=現在、医師会を通じて、行政検査が実施可能としている医療機関は現時点で18ほどあり、1日4人程度の検査を行うことにより、72検体の実施も可能と考える。検査を実施する医療機関をさらに増やすよう取り組んでいく。
➡県段階では1日 1000人以上の検査を目標にしつつも、検体検査については県外の民間検査機関の活用も含め検討中とされています。長野市でも県と連携し佐久市の民間検査機関に検査を委託しています。長野市内の開業医における採取検体の検査の可否について質問したつもりですが、明確な答弁にはなっていません。「可能」という表現に込められているのでしょう。
仕事量が限界を超えていることを懸念…保健所の人員拡大・機能強化を
保健所の機能強化を。
保健所長=保健所の専門的業務にあたっては、保健センターやタブ局の保健師のほか、退職した保健師や看護師等にも協力をお願いし、必要な人員の確保を図っているところ。臨床検査技師は、増員に向け、本年度、職員採用試験を実施することにしている。PCR検査の増加と併せて業務の省力化を図る観点から、補正予算で、PCR検査の前処理の一部を自動化する装置の購入費用も計上した。こうした取り組みを通じて、保健所の専門業務における人員の確保及び機能維持・拡大を図っていく。
相談件数に対するPCR検査率は15%、検査が抑制されていないか
この質問は、時間調整のためカットしました。保健所長からの聴き取りによる答弁として掲載します。
8月末までの相談件数は13,010件、それに対しPCR検査件数は1,902件(保健所で1323件、PCRセンターで579件)で約15%の検査実施率である。
市民からは、「検査を希望してもなかなか検査が受けられない」との声が届く。保健所やかかりつけ医で相談しても、相談から必要なPCR検査に結びつかない現実にあるのではないか。「医師が必要と判断すること」が要件とされ、PCR検査について抑制的に対応されているということはないのか、現状の相談状況及びPCR検査状況に照らして、見解、問題意識を伺う。
PCR検査について、保健所では検査を意図的に抑えてきたということはない。市民の相談を丁寧に聞き、症状や行動歴等から感染の可能性がある場合は、長野医療圏の6病院の専門外来で検体採取を行い、それ以外の方については、かかりつけ医等の医療機関を紹介し、検査が必要な方については、PCR検査センターで検査を実施している。
感染リスクがない方の場合、検査を希望しても保健所や医師から断られたとの受けとめを持たれることがあるかもしれないが、検査には検査に適した状況があることを丁寧に説明していく。
4月~6月までの人口10万人対PCR検査実施件数は、全国131、長野県171に対し本市は283。有症状者相談に対する検査の割合は、全国17.4%、長野県13.0%に対し、本市は19.7%で、人口に対する検査数が多く、有症状者相談からPCR検査に至る割合も高くなっている。
➡保健所長としては、人口10万人に対する検査数も有症状者相談に対する検査率も、全国平均より高く、県内でも高いことから、検査実施に抑制的ではないを強調します。少なくとも、エッセンシャルワーカーに対する検査実施に向けて、活路を開きたいものだと考えます。