新型コロナ感染症対策で市長に「緊急提言」

4月20日、長野市議会・改革ネットで、「緊急事態宣言」の全国化、長野圏域の警戒レベルの引き上げに伴う新型コロナウイルス感染症対策に関し、市民の命と暮らしを守り抜く観点から、緊急に長野市長あて「提言」を申し入れました。

8つの課題、37の具体的取り組みを提言

内容は、➊PCR検査体制及び医療体制の抜本的な拡充、➋消毒の徹底、➌災害時応援協定等の活用、➍市独自の生活・経済支援策の実施、➎子どもの教育を受ける権利の保障、➏市役所における事業継続及び人材の確保、➐国の支援策等の市民周知の徹底と総合相談窓口の開設、➑大型連休中の市役所の体制確立など8項目で、37の具体的な取り組みを提言したものです。

改革ネットの「新型コロナウイルス感染症対策に関する提言」【PDF版】

後段に「提言」を掲載しています。

市長への提言の申し入れには、市長公室長、危機管理防災監、保健所総務課長らにも同席してもらい、意見交換しました。

市長の受け止め・回答のポイントを7点

市長は、「感染を広げないためには外出自粛、3密の回避など市民の協力が不可欠」としたうえで、「医療態勢の確立と企業等への支援、子どもたちの学力・体力・心のケアのフォローに重点的に取り組む」姿勢を強調し、「提言を受け止めしっかり取り組みを進める」と述べました。

以下は、重要な点に関する市長回答のポイントです。

➊初期診断からPCR検査までの専門的医療施設…市内開設に向け協議中

県が打ち出している「感染が疑われる人の初期診断からPCR検査の検体採取までを専門的に実施する施設」について、「市内での早期開設に向け県と鋭意協議中」と回答し、さらに広い市域も考慮した施設開設に取り組みたいとの意向を示しました。

➋重症患者の市内受入拡大へ、民間宿泊施設も協力を打診

感染者の増加に備え、県が4月中に県内で約500人が入院・療養できる体制を整備する目標を示している点について、長野医療圏に照らした整備目標を精査しながら医師会や医療機関との協議を進めている現状を説明。市ではこれまで、市内の感染症指定病院以外の5つの医療機関(病院名は非公開)で受け入れを整えてきているとしてきましたが、重篤・重症患者の受け入れ・治療体制については、市内の医療機関において、感染防止措置をとる病床の受入れが拡大できている状況にあるとし、市内医療機関の協力体制のさらなる拡充を図りたいと述べました。発熱・軽症者の自宅待機・経過観察を改め民間宿泊施設等における隔離・療養に転換させることについても、民間の協力体制を詰めているところとしました。

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➌休業要請、県と連携し早期対応 市独自の家賃補助など検討

緊急事態措置として可能な休業要請については「県と連携し早期に対応したい」との考えを示すとともに「倒産事業者を出さない」決意を強調しました。また、市独自の支援策として、家賃補助等の検討を進めているとしました。迅速な決定と実施を求めました。

➍PCR検査態勢の拡大がカギ…拡充を調整中

PCR検査体制では、長野市環境衛生試験所(保健所内)ではマックスで1日当たり24検体の検査が可能であるとしたうえで、「限界があることから、県が開設する専門的施設の運用にあたってもPCR検査の裏付けが最大の課題であり、広く可能な検体検査受け入れ態勢の検討を進めている」との現状を示しました。

➎市役所のBCP、今週中に取りまとめへ

感染防止と事業継続に向け職員の出勤体制を半減させる取り組みが全国的に始まっています。提言では、職員の業務に応じたテレワーク化と、2班出勤体制による事業継続等を求めましたが、新型コロナ対策にかかる市役所内の事業継続計画(BCP)については、今週をめどにまとめたいとの段階です。現在は、公共交通機関を利用する職員の時差出勤の取り組みのみです。

➏市長自らが広報車で感染防止広報へ

県内市町村長と相談中としつつ、市長自らが広報車で市民に感染予防の取り組みをアピール、感染拡大防止策の周知を図る意向であることを明らかにしました。市長メッセージを市民に伝えたいとの想いはわかりますが、広報車による広報には限界がありますから、パフォーマンスではなく、「提言」している通り、市長会見等のライブ配信、新聞広告の活用とか、全戸回覧とか、市民に行き届くことを考えたほうが効果的だと思います。

➐新型コロナを災害と位置づけた「応援協定」の活用…県と確認

地域防災計画では、地震や風水害など自然災害や原子力災害等における防疫的観点からの感染症対策は盛り込まれていますが、新型コロナウイルスのような感染症そのものを災害とする防災計画の作りになっていないようです。危機管理防災監は「災害時応援協定の活用」等について「県等と確認する」との考えを示すにとどまりました。新型インフルエンザ等特別措置法の内容を吟味したうえで、より具体的な提言につなげたいと思います。

私は、市では保健所を中心に(市長曰く、保健所・保健センター180名体制)、危機感を持った対応が図られてきていると認識しています。

しかしながら、最悪の状況をも見据えながら感染状況の段階・局面に応じた対応という点では、「走りながら考える」というか、中核市として独自に保健所を保有しているとはいえ、長野医療圏を意識しつつ県との協議・合意が欠かせないところが、市として戦略を持った迅速な判断・実行のハードルになっているとの印象を持ちます。やむを得ないところがあるのも重々理解できるのですが、”まどろっこしさ”も残ります。

でも、市独自の生活・経済支援策は単独で可能ですから、速やかな給付支援を強く求めるものです。

後手に回らないことを強く求めました。

災害復興と新型コロナ対策の二重のシフトが求められる本市にあって、市職員の負担も極めて重くなっています。

でも、市民の命と暮らしを守るために、できることはすべてやりぬくこと!です。

一緒に頑張りぬきたいものです。

新型コロナウイルス感染症対策に関する緊急提言の内容


2020年4月20日

長野市長(新型コロナウイルス感染症対策本部長)加 藤 久 雄 様

改革ながの市民ネット 代 表 松 木 茂 盛

「緊急事態宣言」の全国化及び警戒レベルの引き上げに伴う

新型コロナウイルス感染症対策に関する提言

東日本台風災害からの復興途上における新型コロナウイルス感染防止対策に日夜を分かたぬ尽力をいただいていることに敬意を表します。

さて、4月16日、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」が全国に拡大され、長野県においても法に基づく外出自粛や休業要請が可能となりました。

一日も早い感染症の終息は我が国のみならず世界の願いです。そのためにも、外出自粛や休業要請は、補償と一体で展開されることが不可欠です。

本市においても、国・県の指示に基づく対応が図られているところですが、「指示待ち」ともなりかねない状況を克服し、感染防止、生活の維持確保が後手に回らないよう、全庁を挙げて新型コロナウイルス感染症対策シフトを構築し、特別な施策展開を図られるよう、提言するものです。

1.PCR検査体制及び医療体制の抜本的な拡充について

(1)県が提起する「感染が疑われる人の初期診断からPCR検査の検体採取までを専門的に実施する施設」について、「感染症特別外来」と位置付け、広い待合スペースが確保できる総合運動公園体育館(駐車場を含む)や社会教育施設等を活用し、ドライブスルー方式のPCR検査を含め、長野医療圏及び長野市内に開設し、感染者の早期発見・早期対応を可能とすること。併せて、県と連携し、民間検査を含め、PCR検査体制を抜本的に拡充すること。

(2)保健所内の「有症状者相談窓口」(帰国者・接触者相談センター)について、保健師OBの臨時雇用をはじめ、専門職の医師及び保健師による十分なローテーション態勢を構築し、上記「感染者特別外来」に確実につなぐとともに、感染源及び感染ルートの解明態勢を十分に確立すること。

(3)感染症患者を受け入れる医療機関等において、人口呼吸器及び人工心肺(エクモ)の計画的配備を急ぐこと。また、院内感染による医療崩壊を招かぬよう、オンライン診療等の体制を構築すること。

(4)感染者数の動向に応じ、オーバーシュート事態をも想定した医療体制の構築に向けて、段階ごとのシミュレートを踏まえた態勢を準備するとともに、十分な情報開示を行うこと。

(5)発熱軽症者の自宅療養・経過観察を改め、陽性者の隔離と療養のため、民間宿泊施設の借上げや市有宿泊施設の利用などにより、専用療養施設を早期に開設すること。開設に伴い、施設関係者や周辺住民への説明を丁寧に行うこと。また、入所に伴い介護や育児を必要とする場合の支援策を講じること。

(6)感染症指定医療機関及び感染者を受け入れる他の医療機関において、診察室・入院病床・治療室などの感染危険個所以外の周辺部の消毒作業・清掃作業も徹底すること。その消毒は医療従事者に限らず別のスタッフで確保すること。感染入院者の諸経費及び医療機関の経費について完全公費化を図ること。

(7)マスク・ゴーグル・手袋・防護衣の物的な拡充を行うとともに、医療従事者に危険手当等特別手当の支給、免疫力と健康状態を維持するために労働環境・労働条件の確保をはかること。そのため必要な人手の確保を、離職中の看護師を優遇した条件で再雇用すること。

2.感染予防としての消毒の徹底について

(1)保育所・幼稚園、放課後子ども総合プラン施設、福祉介護施設(特に入所型介護施設)へのマスク・防護具・消毒薬を十分に配備すること。

(2)多くの公共施設を5月6日までの間、休止・休館としているが、公共施設における待合室・待合スペースのイスやテーブル・カウンター、エレベーター・エスカレーター・階段の手すり・ドア・トイレなど人が接触し手が触れるすべての部分の消毒を徹底すること。また、消毒液の噴霧・拭き掃除等の消毒スタッフを臨時雇用で確保すること。

(3)長野市消防局に感染症移送専用車を配備するとともに、救急車に感染予防の万全の体制を整えること。

3.「災害時応援協定」「災害時物資の供給・業務協定」の活用について

(1)新型コロナウイルス感染災害ともいうべき事態にあたり、企業や事業組合及び協同組合等と締結している「災害時における応援協定」や「災害時における物資等の供給に関する協定」等に基づき、マスク・消毒薬・消毒機材・赤外線体温計・防護服・通信機材など、またそれらに対応できる材料など防疫上の必要な物資等について、備蓄状況を調査するとともに備蓄物資の供出への協力を求めること。

(2)また、「災害時における応援協定」等に基づき、「感染症特別外来施設」の開設及び業務、消毒活動業務等への協力を求めること。

4.長野市独自の生活・経済支援対策、個別支援策の実施について

(1)東日本台風と新型コロナウイルスの二重の影響を受けている本市の特性を十分に考慮し、事業規模の縮小、休業を余儀なくされている事業者に対し、市独自の現金給付による支援策を講じること。とくに、宿泊業者や飲食業者に対する独自支援策及び小規模事業者・個人商店主に対する家賃補助などの独自支援策を早期に講じること。

(2)雇用調整助成金の活用にあたり、さらなる拡充を国に求めるとともに、雇用調整助成金を活用した雇用の維持を周知するとともに、個別に複雑な申請事務を支援すること。

(3)国の事務連絡にある、税・社会保険料(国民健康保険・後期高齢者医療制度・介護保険)・上下水道などの公共料金の支払猶予を進めるにあたって、申請をワンストップでできる統合化・簡易化を図るとともに、猶予期間には余裕をもち、支払いについては分割払いとすること。また、支払猶予の適用だけではなく、災害と減収・り病などに対応する「減額免除制度」を準用・適用すること。さらに、税・保険料・上下水道などの使用料滞納世帯への行政サービスの制限を即時停止すること。

(4)国の事務連絡にある、国民健康保険の保険証がない資格証世帯には、感染症に対しては保険証扱いとすることについて徹底周知をはかること。また、国の事務連絡の趣旨を活かして、国民健康保険の短期証の「留め置き」とされている世帯への保険証郵送を今後とも維持すること。

(5)生活格差と生活困窮者の増加が危惧される中、「まいさぽ長野市」の相談機能を強め、確実な支援につなげること。また、生活保護の認定、住居確保給付金の支給においては、柔軟な運用を図り申請の簡易化につとめ利用の促進を図ること。解雇や転職等で住居を失った市民に対し、公営住宅の優先提供を図ること。さらに、市社会福祉協議会の生活福祉小口資金の運用拡大と申請の簡易化を図るとともに、支所での申請を可能とすること。

(6)生活困窮世帯、ひとり親家庭、要援護児童世帯への経済的支援を独自に上乗せするとともに、食事等の提供について「配食サービス」を無償で斡旋すること。

(7)DV、児童虐待の増加が懸念される中、児童相談所への通報をはじめ、市「子ども相談室」の活用など広く市民に周知するとともに、事案発生に対し的確・迅速な対応を図ること。

5.子どもの教育を受ける権利の保障について

(1)小・中学校の休校措置が取られる中、ICTを活用した家庭学習、学校における時間割に基づく家庭での学習計画の採用など、最大限に可能なメニューを用意し、学校教育を補完しうる家庭学習態勢を整え、よって子どもの教育を受ける権利の保障に努めること。

(2)休校措置の延長も見据え、中長期的な学習の保障についての基本的な考え方を早期にまとめ、保護者及び児童生徒の不安に応えられるよう準備すること。

(3)生活困窮世帯・生活保護世帯、ひとり親家庭の児童生徒に対し、学校を通じた健康及び学習のケアに特段の留意を図ること。

(4)放課後子ども総合プラン(児童センター・子どもプラザ)の継続にあたり、「3密」回避のため、学校施設や近隣の市有施設の利用を図ること。また、支援員の確保について、感染リスクに対する特別手当の支給を図ること。

6.市役所における事業継続及び人材の確保について

(1)緊急事態宣言のもと、感染防止の観点から市役所においても事業継続計画(BCP)の確立が急がれる。職員の健康管理、長時間労働の是正に特段に留意するとともに、市職員の業務実態に応じたテレワーク化を進めるとともに、課ごとに班体制によるシフト・ローテーション勤務体制の確立を急ぐこと。その際、職務専念義務免除による特別休暇扱いとすること。

(2)休止・休館となっている指定管理者による公共施設の管理運営においても、市のBCPに準じた態勢を共有・構築するとともに、従業員等の休業・生活補償に万全を期すこと。

(3)職員及び会計年度任用職員について、小中学校の休校等に伴う休業補償を徹底すること。

(4)離職者・休職者の生活確保のため、市の臨時雇用を拡大すること。

(5)保育園や放課後子ども総合プランの継続開設・運用にあたり、臨時保育士、支援員の拡充を図ること。

7.国の支援策等の市民周知の徹底と総合相談窓口の開設等について

(1)国・県・市の経済支援策などについて、わかりやすい市民への周知を徹底すること。

(2)新型コロナウイルス感染防止に関するワンストップの総合相談窓口を開設し、生活相談(税・保険料・使用料など)や生活困窮内容への対応、NPOなどと連携した労働相談(休業補償・解雇停止・採用取り消し・労災認定)の充実、消費生活センター(便乗値上げ・感染対策としての詐欺行為など)における対応、ハラスメント・家庭内DV・妊産婦・外国人などの相談態勢を充実すること。

(3)ワンストップ相談窓口の開設が困難な場合は、コロナ対策特別相談窓口回線を開設し、代表回線から必要とされる担当課に迅速・的確につなげる態勢を構築すること。また、大型連休中においても市民が安心して相談できる体制を確立すること。

(4)相談窓口では面談方式を取りやめ、電話相談となっていることに鑑み、障がい者、高齢者、外国人等が相談しにくくならないよう配慮すること。

(5)感染状況や医療体制等について、市民に対し迅速で丁寧な情報提供に努めること。そのために、広報車による情報提供や、市長や保健所長の記者会見等のLIVE配信、災害情報に準じたプッシュ型情報発信、臨時FM局の開設、新聞広告を活用した市の取り組みの周知等に着手すること。

(6)感染者及びその家族、医療従事者や交通従事者に対する不当な差別、偏見、流言飛語が横行する中、差別や偏見、いじめ等に対する人権啓発の取り組みを強化すること。

(7)緊急事態宣言の解除後を見据え、解除後の急激な人の移動による感染の再拡大を防止するため、国・県と連携し、専門家の助言を受けつつ、解除前後の行動変容と課題をシミュレーションし、予め必要な対策をまとめた計画づくりを進めること。

(8)国・県における生活・経済支援策が「自粛と補償が一体」となるよう、積極的に提言・要望を進めること。

8.大型連休中の市職員体制の確立について

(1)新型コロナウイルス感染症に対応するBCPの確立、市職員の感染防止策を前提に、災害対応に準じ、大型連休中における本市の相談・対応体制を継続的に構築し、相談等のたらい回しにならないよう特段の体制をとること。

以  上

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