国は7日の臨時閣議で、コロナウイルスの感染拡大を受けた事業規模108兆2,000億円の緊急経済対策を決定しました。
最大の目玉は、総額6兆5000億円の現給給付です。
生活や無事業を支援する策として、収入が減少した世帯への現金30万円の給付、1300万世帯を想定し4兆円を充てるとともに、売り上げが半分以上減った中小・小規模事業者には減収分として最大200万円、フリーランスを含めた個人事業者には最大100万円を給付するとされ2.3兆円を充てました。
また、子育て世帯を支援するため、児童手当の受給世帯に対し児童1人あたり1万円を上乗せします。早ければ6月の支給分に上乗せされる見通しです。もっとも、児童手当には所得制限がありますが。
この中で、特に30万円の現金給付について問題点を探ってみました。
毎日新聞や朝日新聞での給付対象事例に参考に、長野市の場合を考えてみました。
30万円現金給付は限定的、期待外れに
7日、コロナウイルス対策で情報交換するために緊急に開かれた私鉄県連の会合の中でも、貸切バスの稼働ゼロや高速バス利用者の大幅な減少を受け、大きな減収が余儀なくされている公共交通労働者の実態から、30万円の現金給付に期待する声が聴かれましたが、「多分、対象外だよ」と応えてきています。期待外れになることはほぼ確実です。
規模はリーマンショック時を上回り過去最大かもしれませんが、緊急事態宣言で一層厳しくなる生活や経済を支えるのに十分なのか、本当に困っている皆さんに必要な支援が行き渡るのか、その実効性については甚だ疑問が残ります。
現金給付に厳しい条件…与党内にも不満くすぶったまま
ネットでも流れている4月6日付の毎日新聞の報道より引用します。
現金給付の厳しい条件など「不満のオンパレード」自公に続出 早くも「更なる経済対策を」
自民、公明両党は6日、新型コロナウイルスの感染拡大に対応する政府の緊急経済対策案を了承した。
一方で、1世帯当たり30万円の現金給付に厳しい条件が設定されたことなどに「期待外れだ」と不満が続出した。
安倍晋三首相が7日に表明する緊急事態宣言を見越し、更なる経済対策を求める声が早くも漏れる。
「地元に『自分ももらえる』と思っている人がたくさんいる」「経済対策の体を成していない。撤回し、下野した方がいい」。
6日、自民党本部9階の大会議室で3時間以上に及んだ政調全体会議は感染防止のため秘書の代理出席を避けたにもかかわらず、ほぼ満員となり、世帯向け現金給付を中心に「不満のオンパレード」(出席者)だった。
対策案によると、給付対象は世帯主の2~6月のいずれかの月収が新型コロナ発生前よりも減少し、▽個人住民税が非課税水準となる世帯▽月収が半分以下となり、個人住民税非課税水準の2倍以下に落ち込む世帯――などだ。
しかし、東京都23区内で専業主婦と2人暮らしのサラリーマンの場合、非課税になるのは年収が156万円以下の人に限られる。
年収700万円の人は350万円に半減しても対象にならない。
また、共働き世帯で一方が解雇されても、世帯主でなければ対象外だ。
公明党の会議では「世帯主以外の収入を頼りにしている家庭もある。世帯主の収入だけが基準でいいのか」との異論も出た。
受給申請方法にも批判が続出した。
市区町村への自己申告制とされることに関し、対策案は「可能な限り簡便な手続きとする」とするのみで具体的な手続きは固まっていない。
自民の政調全体会議では「市町村の窓口が混乱する」との指摘が相次ぎ、与党はオンライン申請の環境整備を政府に強く求めることにした。
経済対策が遅れたことには「タイミングが悪すぎた」(自民党の閣僚経験者)との声がくすぶり、地方自治体への交付金積み増しなどにも「緊急事態宣言に伴う不安を払拭(ふっしょく)できる内容にはなっていない」(閣僚経験者)と評価は芳しくない。
自民党の岸田文雄政調会長は6日の政調全体会議で「さらに深掘りした現金給付を検討するように」との条件を付け、今回の経済対策について一任を取り付けた。
二階俊博幹事長は同日の記者会見で「これで足りないということであれば、その次の手を打つことは当然だ」と強調した。【飼手勇介、立野将弘】
月収20万円が11万円に減っても対象外
今日8日付の朝日新聞でも、「30万円給対象「範囲狭い」…月収20万円が11万円に減っても対象外」と報じています。
目玉の一つである30万円の現金給付に対しては、早くも不満が続出している。
給付の対象は、今年2月~6月のいずれかの月の収入が減り、➀年間ベースで住民税非課税世帯の水準になる、➁収入が半減し、年間計算で住民税非課税世帯の水準の2倍以下まで落ち込む—という、どちらかの条件に当てはまる世帯だ。
住民税が非課税になる収入の水準は自治体によって多少異なるが、東京23区の場合、単身で年間収入100万円(月ベースで約8万3千円)となる。
これを今回の給付対象に当てはめると、➀は月収が約8万3千円以下になったケース、➁月収が半減し約16万6千円以下になったケースとなる。
月収が20万円以下だった人が11万円に減った世帯でも、支給対象から外れることになる。共産党の小池晃・書記局長は6日、「対象者が狭いし、必要な人に給付されない可能性が高い」と批判した。自民党内からも「やはり一律にすべきではないか」との声が部会などで相次いだ。
働き手の雇用を守るため、休業手当の一部を企業に助成する「雇用調整助成金」を拡充する対象についても、労組関係者からは「助成金を使っても生じる一部の負担を嫌って、雇用を打ち切る例がある」「申請手続きが複雑で、会社が申請をしない」などの指摘が出ている。休業手当は、企業の指示で仕事を休ませた労働者には平均賃金の6割以上を手当として支払う義務があるが、手当てを支払わないまま労働者を休ませていると間相談も相次いで労組や弁護士に寄せられている。
出典:朝日新聞4月8日
長野市の住民税非課税水準で考えると
長野市市民税課に「住民税非課税水準」を確認してみました。
単身サラリーマン…月8万400円に減収
単身サラリーマンの場合、住民税非課税となる年間所得は96万5,000円(月ベースで約8万400円)です。
給付条件に照らすと…
➊年間ベースで月収が8万400円以下になった場合と➋収入が半減し、年間計算で16万800円以下になった場合に給付されることになります。
子育て共働き世帯…月19万3,999円に減収
子育て中の標準4人世帯(夫婦共働き・妻は扶養範囲で子ども2人)の場合では、住民税非課税ラインは年間所得が232万7,999円(月ベースで19万3,999円)になります。
給付条件に照らすと…
➊年間ベースで夫婦合わせての月収が19万3,999円以下になった場合と➋収入が半減し、年間所得が約465万円以下になった場合に限られます。
➀の場合の対象者は、夫の減収と妻のパートの打ち切りなどを考えると十分にあり得ると思われますが、➁の収入が半減し465万円の世帯ってというのは、極めて限定的でしょう。
いくつかのモデルケースをより総合的に検討・精査する必要がありますが、子育て世帯には「支援」が行き届かないといっていいでしょう。
いずれの場合も、収入が半減しても、非課税ラインにより給付される人と給付されない人に分かれ、不公平が生じることになります。みんなが疲弊し困っているときに、分断と不公平が生まれる制度設計は見直されなければなりません。