市議3期目にして、初めて当初予算案に対する修正案を提出しました。共産党市議団5人と無所属の西村議員、そして市民ネット2人の共同提案です。
結果は賛成少数で否決。市民合意が不十分であるとの認識から、確かな市民の理解と合意を図るための提案だったのですが、議会の流れを変えることはできませんでした。
予算原案に対する修正案を提出した以上、予算原案には反対することになりました。修正部分以外は基本的に賛同するものですが(所属する総務委員会審議では、修正案に盛り込んでいない他の部局予算案には賛成しています)、多数決による議会の議決に基づき、予算の執行に対する評価と監視に責任を全うしていきたいと思います。ちょっ長いですが、修正案提出を振り返って…。あたため過ぎて今頃になってしまいました。
1.修正案のポイント
ポイントは、第一庁舎及び新市民会館の建設事業費と、急浮上しているエムウェーブ次世代エネルギーパークの整備事業費をそれぞれ減額する減額修正案です。
具体的には…
➊総務費の総務管理費中、財産管理費の市役所第一庁舎建設事業2億1,900万8千円のうち、旧市民会館解体に要する経費を除く1億8,784万4千円及び市民会館管理費の長野市民会館建設事業2億4,706万7千円のうち、旧市民会館解体に要する経費を除く2億403万1千円を減額する。
➋商工観光費中、観光費のうち、次世代ネルギーパーク整備事業2千50万円を減額する。
➌歳入において、国庫支出金や新市民会館に関する市債(借金)を減額、市制90周年記念文化施設建設基金繰入金を増額、庁舎整備基金繰入金を減額した上で財政調整基金繰入金の減額で収支バランスを図る。歳入歳出ともに4億1237万5千円の減額とする。
2.新市民会館建設に対する市民ネットのスタンスと考え方
(1)第一庁舎及び新市民会館の建て替えについて、両施設の建て替えを支持しつつも、3.11大震災を踏まえ、私は、耐震強度が不足している第一庁舎は早期に建て替えを、しかし新市民会館は市民合意が不十分であることから、合併特例債の期限延長を活用し、市民の声をしっかりと聴き、疑問を晴らし、見直すべきは見直す、このように主張してきました。
(2)そもそも第一庁舎・市民会館の建て替えは合併特例債を活用しH26年度末までに完成させるという枠組みでスタートしました。この制約のもとで、新市民会館の建設地は10カ所から長野駅前、権堂、現在地の3カ所に絞られ、まずは権堂を建設地とする案がまとめられました。この段階において、私は、新市民会館が権堂地区再生の起爆剤とはならないことから、現実的な案として「現在地での建設への転換」を提唱してきました。これが議会の大勢となり、結局、現在地での建設に転換したのがH23年12月、そしてH23年4月に建設基本計画がまとめられました。建設地の議論が先行し、新たな文化芸術施設の必要性、規模・機能、運営管理の議論が「二の次」になってきた議論経過は反省課題の一つです。
(3)両施設の基本設計委託料と旧市民会館の解体費を盛り込んだH23年度予算案には、より十分な市民合意の形成を条件に賛成してきました。議決責任を負うことは当然ですが、3.11大震災による復興財源の在り様を見据え、財源確保の見通しが不確実なこと、市民の間に見直しの機運が強まったことから、市民会館については基金積み立てを継続し、将来に備えるべきであるとの考えを表明してきました。
(4)この段階で浮上したのが、市民による住民投票条例の直接請求と合併特例債の活用期限の延長です。私は、合併特例債の期限延長を活用し、市民合意を図り直すこと、市民の直接請求を真摯に受け止め、住民投票は市長と議会の二元代表制を補完するものであり、議会として市民の政策決定への直接参画の機会を保障する責務があると考え、第一庁舎と市民会館のそれぞれの建て替えの賛否を問う住民投票条例案を議員提案してきました。
(5)昨年8月の議会で、条例案は僅差で否決となったものの、改選後の9月30日に開かれた議会による市民説明会では、すべての会派が温度差こそあれ、基本的に合併特例債の期限延長を活用し市民の理解を得ることが大事であるとの認識を示したのです。しかし、12月議会では、合併特例債の期限延長の活用を求める請願は否決となってしまいました。
(6)そして迎えた3月議会。この間に市長は「市民に十分説明してきた。建設基本計画通り、H26年度末の完成を目指す。現時点では合併特例債の期限延長を活用する考えはない」と強調し続け、議会前には概算で5億2千万を見込む運営管理計画案を示しました。
(7)今日、新市民会館の建て替えについて十分な市民合意が形成されているとは受け止めていません。むしろ、「何を言っても粛々と進むだけ」との諦め感が漂っています。だからこそ、一般質問で取り上げ、改めて市民合意を最優先させる取り組みを質したのです。しかし、市行政側は従来の姿勢を強調するにとどまりました。合併特例債の活用は最大で5年間延長することができます(法律改正はまだですが、被災地支援の趣旨から法改正は確実です)。5年間の猶予を考えると、「合併特例債の活用でH26年度末までの完成」の縛りから逃れ、新たな視点で建設地を含めて再検討できると仕切り直すことは無謀なのでしょうか。確かに利用者の皆さんには不便を強いることになりますが、将来に禍根を残さないための必要な時間とコストだと考えることはできます。いずれにせよ、二元代表制の1元を担う議員の一人として、「こんな不幸なことはない。市民参画による市政を取りもどしたい。建設事業の執行を一旦止めてでも、市民の理解と合意を優先すべき」と考え、減額修正案を共同提出しました。共産党市議団の皆さんが、私と全く意見の異なる人権同和政策の在り方などを持ち出さず、「合意できる点で」と柔軟に対応されたことには感謝したいと思います。
(8)修正案を作成するにあたり、「第一庁舎と新市民会館を切り離して、旧市民会館の解体費を除く新市民会館の建設事業費分を削減し、その分を新たに基金に積み立てる」予算修正を検討しましたが、合築とされる基本計画にあって、切り離しは市長の提案権を侵害する恐れがあり切り離しが困難であること、建設事業費には国庫補助金や市債分が組み込まれ、基金に積み立てる場合の積算が複雑なこと、修正の提案には4人の議員が必要であり市民ネットだけでは修正案を提出できないことなどから、共同提出に至ったものです。修正案には市民ネットから池田議員が賛成討論をしました。市民ネットのホームページに掲載していますので、そちらもご覧ください。
3.エムウェーブ次世代エネルギーパークについての考え
(1)「期限にとらわれず十分に検討」
この問題は私も一般質問で取り上げましたが、3月予算議会の論点の一つです。メインテーマをはじめ、なぜエムウェーブなのか、不明確な収支予測、10万人とする過大な来館者予測などなどの疑義に対し、説得力のある答弁はありませんでした。市側は収支計画の詳細が確定しないことやエムウエーブから屋外に設ける施設の管理が困難である旨の意見もあることから、「今年度中に予定していたプロポーザルの実施時期については期限にとらわれず計画内容をつめたい」と軌道修正を図りましたが、計画を一旦白紙に戻し再検討するものではありません。
(2)「あってもいい」程度の施設
予算案の審議をした経済文教委員会で、所管の産業振興部長は「あってもいい施設。だから理解を」と述べたそうです。いろいろ弁明もされたようですが「あってもいい」ということは「なくてもいい」と同義語、その程度の施設に拙速に事業計画をまとめ3億円かける意味合いがあるのでしょうか。いったん白紙に戻し再検討することをしっかり担保するために、エムウエーブでの建設を前提とした基本計画の策定、実施設計に要する経費の削減を修正案に盛り込みました。
(3)ここでも問われる市民合意
次世代エネルギーパークの整備も、国庫補助金が見込めず断念した太陽光発電システム導入の呪縛から逃れることのないまま、エムウェーブありきで急浮上した事業です。3.11以降、市民の大きな関心事となっているエネルギー問題。原子力エネルギー依存から脱却し、再生可能なエネルギー=自然エネルギーに転換していくことは国民の8割が支持する政策転換です。であるからこそ、長野市の地域特性に合致した再生可能エネルギーの十分な調査検討を踏まえ、考えるべき課題です。市民はもっと先を考えています。「あってもいい程度の施設に3億円投入すること」に市民の合意はありません。
4.これからの課題
(1)修正案は否決されましたが、市民合意に向けた課題が残っていることは事実です。基本設計や新市民会館の運営管理計画について、広く市民に説明し、市民の理解と合意を再形成することが不可欠です。支所単位での説明会を求めてきましたが、前向きな姿勢は示されていません。「長野を象徴する文化芸術の拠点」が、「市民不在を象徴する施設」とならないよう、厳しく監視と提案を行っていかなければと考えています。
(2)基本設計の策定と合わせ、建設工事をどんな企業に発注していくのか、地元企業に依拠した発注が行われるのかということも課題となります。また、文化芸術振興の拠点とされる新市民会館の「育む・楽しむ・創る・つなぐ」の4つの役割が、運営管理計画の中で、どのように具体化されていくのか、将来につながる投資となるのかということも、これからの大きな課題です。
(3)市行政サイドからは、「建て替えそのものには賛成ですよね。どんな段階・局面で建設推進に舵を切るのですか」との秋波(?)が送られてきます。まずは、基本設計の具体、運営管理計画の確実性を見極め、市民合意にどれだけ心を砕くのかを見定めたいと思います。
(4)修正案を提出したのが16日、19日最終日の議決までに2カ所で区の総会があり、また議決後の1週間の間に6地区での総会、5カ所での地域の会合があり、挨拶の中で当初予算案のポイント(前進面は素直に評価しています)と修正案提出について報告しました。限られた時間ではありますが、懇親会の場でのやり取りを含め、概ね肯定的に受け止めていただいたと思っています。正直に言うと、共産党市議団と一緒の修正案には「どうして?」との疑問の声はありました。これについては「修正案には4人以上が必要なんです」と理解を求めました。ちょっと言い訳みたいですが…。
参考までに私の一般質問でのやりとりを再掲します。
3月7日ブログ:議会質問から➊…「長野を象徴する文化芸術拠点」、市民合意最優先で
3月7日ブログ:議会質問から➋…説得力に欠けるMウェーブ次世代エネルギーパーク