長野市の文化芸術振興の拠点である芸術館で、今、何が起きているのか?!
長野市芸術館を指定管理者として運営する文化芸術振興財団の混乱と、今後の正常化・再生の見通しについて質問しました。質問時間の残り5分のほとんどを芸術館の問題解明にあてました。
➡録画中継は下記のページでご覧いただけます。最後の5分が再質問場面です。
4日の代表質問に対する答弁、その後の顛末・動向について報告します。
芸術館総支配人の辞職、自主事業の大幅な縮減不可避の報道
久石譲芸術監督の突然の辞任、その後、新たに就任した山本克総支配人の「家庭の事情」を理由とする辞職、加えて今日、プロパー職員の相次ぐ離職による新年度自主事業の大幅な縮減が伝えられています。危機的な状況であると認識しています。
2019年から23年度の財団第2期運営方針では、「シーズン・プロデューサー制」を導入し、「日常に音楽を、芸術を」を掲げた第1期を基礎に、市民もホールも成長していく「ともに成長」を掲げ、地元アマチュア団体との協力などの「徹底した市民参加型の事業」、芸術館のジュニア合唱団や中高生の部活動を念頭に置いた「最高水準をめざした育成事業」を盛り込み、事業展開の途上にあります。長野・チェンバーオーケストラ(NCO)の活動継続は多額の経費を理由に断念されることになってしまいましたが、第2期における新たな事業展開に大いに期待してきた一人です。それだけに、今回の混乱は早期正常化が問われます。
総支配人の辞職、職員へのパワハラが原因か!離職相次ぐ
事業計画途中での総支配人の辞職は、職員へのパワハラ・モラハラが背景にあるとも伝えられています。財団では、これまでにプロパー職員12人が離職しており、今日段階でも6人が離職の意向にあるとされています。
財団としてのマネジメントに大きな課題があることが露呈しています。事業の継続性が担保されない同財団の芸術館運営は極めて深刻、憂慮すべき事態であり、市民の期待を裏切るものに他ならないと考えます。
継続性問われる芸術館運営…調査委員会を立ち上げ、財団正常化を求める
文化芸術振興の拠点である芸術館の運営には、事業総体としての継続性が保持され、蓄積されることを通して育まれる文化芸術の基盤づくりが不可欠であり、市の主体的な責任が問われます。財団に任せているからでは通用しません。
財団理事長である樋口副市長は「マネジメント専任の職員」を置く考えを記者会見では示してきていますが、果たしてそれで十分なのでしょうか。
財団の芸術館運営に関する混乱の原因を究明・把握し、抜本的な立て直しを図ることが喫緊の課題であるとの問題意識で、質問しました。
質問のポイントは、➊まず、この間の混乱の経緯、真相と原因、計画通りの事業展開の可否を含めた今日的な課題を明らかにすること。➋そのうえで、市として調査委員会を立ち上げ、課題を洗い出し財団運営の正常化を図る必要があること。➌また、情熱を持つ職員の皆さんの継続的な雇用の保証、情熱を共に形にしていくプロデュース、マネジメントの必要性の3点です。
まるで他人ごと…危機感なき市長の答弁
私の質問に対する市長の答弁は次の通り。ポイントを紹介します。
- 「総支配人の指導方法に関する問題は理事長が、財団事務局職員の離職に関しては事務局長が、それぞれ職員から事情聴取して対応してきていると伺っている」
- 「今日的な課題としては、直近で離職者が出てきており、芸術館の運営に支障をきたす懸念が生じてきているとの報告を受けている。キャリアアップなどの理由と聞いているが、一人一人の具体的な理由、事情などは承知していない」
- 「芸術館の運営においては、事業の継続性も大切であるが、芸術館の利用者の8割が貸館利用であることから貸館と技術業務も態勢であり、経理や職員管理棟の総務業務も大切。そのため、職員募集の強化や、財団事務局職員の人事配置等による計画通りの事業展開に向け、企画制作分野、総務・貸館分野の運営を確保できるよう、文化スポーツ振興部を中心に、市も全面的に協力し課題解決を図る中で、現在急ピッチで検討しているところであり、大分めどが立ってきた状況と聞く」
- 「財団で働くスタッフが、生き生きとした雰囲気の中で互いの信頼感を醸成できるようマネジメント強化に向けて支援する」
質問に正面から答えることなく、全く危機感のない他人事のような答弁と感じるのは私だけではありません。財団理事長を務める副市長が専任担当とはいえ、当事者意識が余りに欠落しています。
再質問で、市としての責任、決意を質す
質問した「計画通りの事業展開の可否」については「目途がたってきている」との答弁があったものの、質問ポイントの➊「混乱の経緯、原因」、➋「調査委員会の立ち上げ、財団の正常化を図ること」については答弁がなかったことから再質問。
副市長…「人間関係、信頼関係の欠如が原因」
市長から答弁をふられた副市長(財団理事長)は、「原因については、全職員と面談する中で、人間関係、信頼関係の欠如であると考えている。指摘のあったパワハラについては、弁護士に確認し、そういう話にはならないとの判断が示され、私もそう考えている」と答弁。
「調査委員会については、担当する文化スポーツ振興部で課題の洗い出し、解決に向けた調整が図られ、いい段階にまで来ていると聞いているため、考えていない」
「財団は、業務を執行する理事会、それを管理する評議員会がある独立した組織。本件については、これらの機関で諮られることがスジで、そうなるよう指導する。円滑な運営、事業実施となるよう努力したい」
私は、財団の独立性を強調しながら、結果として財団任せとなっていることに危機感を持っています。文化芸術振興財団は、文化芸術に秀でた才能と情熱をもつプロパーの運営がカギであり、独立した権能を持っていることは承知の上での質問です。
改めて、本市の文化芸術の振興にかかる政策・施策の展開の責任は第一義的に長野市にあることを確認、強調しつつ、人間関係・信頼関係の欠如が原因とされる中、解決に向けて新たな手立てが必要であることを強く指摘しました。
「責任を持って対応する」と答弁されたものの…
副市長は最終的には「責任をもって対応する」と答弁しましたが、「総支配人の配置についてはこれから検討する」との答弁にとどまりました。責任をもってどのように正常化に向けた取り組みを進めるのか、その具体は判然としないままです。
翌日5日の質問で、「危機的な状況」との認識示す
私の質問の翌日、5日の共産党の佐藤議員の質問に対して、文化スポーツ振興部長は「危機的な状況」との認識を初めて示すとともに、「職員配置の目途が立ち、自主事業の展開も目途が立ちつつある。総支配人の配置は検討中。信頼関係の構築に努める」と答弁しました。
10日には「職員配置が整い、自主事業はすべて可能に」との認識示す
本日、10日に行われた議案質疑で、小泉一真議員の質疑に対し文化スポーツ振興部長は「自主事業の見通しは、職員配置が整ったことからすべて可能となった。4月からは適正な状態となる」と答弁。また、「(この間の混乱について)理事長名でお詫びしつつ説明する文書を発出する予定」としました。
山本総支配人への退職金は依願退職のため、52万8,000円の退職金が支払われることも明らかに。
今後の芸術館の運営について、「経験者の採用を重視してきたが、これからは新人育成の観点からの人材確保が必要」との考えも示しました。
所管する文化スポーツ振興部では、早期の課題解決に向け全力を尽くしている状況は察しますし、労をねぎらいたいとは思います。しかし…です。
これで一件落着なのか?!…11日の委員会でさらに審議を
「一件落着」を強調したい答弁のように聞こえますが、「一件落着」状態では決してないと受け止めています。
離職を表明していたスタッフ・職員は留まることになったのか、特に企画制作担当職員の十分な確保ができ、4月以降の人事において本当に正常化できているのか、明らかではありません。
ましてや、欠如していたとされる人間関係・信頼感池の再構築に向けた対策はどのように講じられるのか、肝心な点は曖昧なままです。
さらに、自主事業について、「一旦中止」をきめ、関係団との協議に入った事案があると伝えられていますが、その決定プロセスはいかなるものか、また、善後策はどのようにとられているのかも不明です。理事長名で発出される文書の具体も議会に明らかにされることが必要でしょう。
最大の問題は、今回の一連の事象で、芸術館の信頼が損なわれ、市民の期待も裏切ることになったことです。芸術関係者、そして市民の信頼回復に向けた対策と課題をどのように考えているのか、さらに質していくことが重要であると考えます。
明日、11日の経済文教委員会で、市文化芸術振興財団に対する3億8,000万円の指定管理料を盛り込んでいる予算案の妥当性を中心に、この間の問題が改めて議論されることになります。
傍聴し、改めて続報としたいと思います。