昨年の東京都目黒区での女児虐待死事件、そして今年に入っての千葉県野田市の小4女子児童の両親からの虐待による死亡事件、なんとも痛ましい事件が続いています。児童虐待の未然防止、早期発見、迅速で的確な対応は、3月議会でも焦点の一つになっています。
「いじめ」もより深刻度を深めている中、いじめ問題を取り上げました。
私自身、長野市が初めて「いじめの重大事態」と判断した事案をはじめ、保護者から相談をいただき、少なからず、いじめ問題に直接関わってきました。
市教育委員会では、いじめ防止対策推進法に基づき、その法趣旨の徹底とガイドラインに基づく対応を進めるとともに、「さっと学援隊」を編成し迅速な対応方に努めているところですが、私なりの問題意識を市教委と共有し課題解決につなげたいとの思いで質問しました。
まず、導入として、➊「いじめ事案」の把握状況、➋「いじめ重大事態」と判断し対応している状況、➌それぞれのいじめ事案の教訓をどのように活かしているのかを問いました。
いじめ認知件数…今年度9月までに714件
長野市生徒指導調査によるいじめの認知件数は、H28年度は市立小・中学校合計で365件、H29年度は529件、今年度は9月までで714件と急増しています。
教育次長は、認知件数の増加について、「担任を中心に子どもたち一人一人に声をかけたり、その表情を見たりするなどして、その子の様子を把握することに加え、定期的ないじめアンケートや個人面談を実施するなど、いじめの問題への積極的な認知と、早期発見、早期対応に努めており、こうした取組がいじめの認知件数の増加にもつながっているものと考えている」としました。
いじめの重大事態は7件、内3件が調査終了
「いじめの重大事態と認定し、第三者を加えて調査組織を立ち上げた件数は合計7件で、そのうちの3件は調査が終了している」としました。残りの4件は調査継続中で、事案の詳細は明らかにできないが、文部科学省のいじめの重大事態の調査に関するガイドラインに基づき対応をしている」としました。
そのうえで、「被害児童・生徒への心のケアや加害児童・生徒への指導には、市教育委員会もかかわり、第三者委員会として、当該調査にかかわっている弁護士、医師、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどの助言をいただき、適切に対応するとともに、再発防止策を検討してきている」としました。
➡解決しているとされる3件について、調査報告書は公開されていません。文科省のガイドラインが「公開にあたっての保護者の同意」を規定していることから、実際に保護者の同意が得られず公開に至っていないものです。いじめの当事者である児童生徒の人権を守るという観点からは、いわば当然の措置なのですが、いじめの早期発見、迅速な対応、再発防止など学校側に求められる課題については、情報を開示し適切な対応を図っていることを市民に明らかにしていくことが必要であろうと考えます。
躊躇なく重大事態して認定し対応しているのか
「相当の期間不登校となっている児童については、市教育委員会では、各校からの長期欠席児童・生徒報告の内容にいじめにかかわる記述がある場合には、学校に問い合わせ、欠席している児童・生徒の状況を確認し、ガイドラインに沿って対応している」「議員指摘の躊躇なく重大事態と認識し、万全に対処していくということについては、重大事態の疑いがある段階から、教育委員会では、さっと学援隊の指導主事を学校に派遣し、事実関係、学校の対応などについて把握すると共に、指導助言し、ガイドラインに該当すると判断したものは、直ちに重大事態として対応していくこととしている」と答弁しました。
➡いじめ問題の解決にあたって重要なことは、学校現場における初動段階の対応です。学校内では、依然として閉鎖的な体質から脱却できておらず、市教委と問題を共有し解決にあたるという点では、市教委としての指導強化がなお求められるところでしょう。
第三者委員会からの提起…いじめ防止の基本方針に反映
重大事態等のいじめ事案からどのように教訓が活かされているのかとの問いに対し、教育次長は「教育委員会が調査主体となり対応するいじめの重大事態にかかわり、第三者委員会から当該事案に係る問題や課題が提起された場合には、市教育委員会と学校でその対策案について、条例で設置しているいじめ問題調査解決チームに諮り、専門家の視点から意見を伺った上で、長野市いじめ防止等のための基本的な方針に改善点等を反映させていくことになる」とし、「改定した基本方針は、市のホームページに掲載するとともに、校長会や教頭会、人権教育主任者会などでも周知し、併せて各校が策定するいじめ防止等のための基本的な方針にも反映するよう指示し、各校におけるいじめの未然防止、早期発見、早期対応などに向けた取り組みの充実につなげていく」としました。
➡いじめ防止の基本方針の改定状況や学校現場への徹底方については、個別具体的な事例に沿って、引き続き検証したいと考えます。
スクールロイヤーの早期配置を求める
学校現場では、いじめ、不登校、体罰、事故等、日々様々な問題が発生し、しかもますます深刻化・多様化しているのが実態です。さらに、保護者からの強い要求やクレーム等に対する対応の在り方も、学校や現場教員が苦慮している問題の一つとなっています。子どもたちのSOSに気づき、的確に対応できる教員の質の向上が求められる一方、教員だけの対応では困難な問題が増加していることを踏まえ、子どもの最善の利益の観点から、教育や福祉も子どもの権利等の視点を取り入れながら継続的に助言できる専門家、すなわちスクールロイヤーと称される弁護士を配置し対応していくことを強く求めました。
現在、市教育委員会では、いじめ問題に特化して2人の弁護士を委嘱し対応しています。しかしながら、複雑・多様化する学校問題への対応はなお課題を残しています。
スクールロイヤーの配置については、私の質問の前に複数の議員が取り上げ、市教委の答弁が「国の動向を注視し、研究する」という段階にとどまっていることから、対応を「研究」から「検討」に格上げし、早期配置を求めました。
問われる「子どもの権利条例」の制定
この問題については、これまでも質問で取り上げてきていますが、「条例の必要性も含め調査、検討する」との答弁の域を出ていません。
今議会では、塩入議員が代表質問で取り上げたところから、私自身は質問から割愛しましたが、市長答弁は「基本的に県条例を踏まえ対応したい。県の条例に上乗せする規定が必要かどうかを検討したい」とするもので、後退感が否めません。
長野県の「未来を担う子どもの支援に関する条例」は、そもそも「支援条例」であり、「権利条例」ではありません。県条例があるからと受け身になるのではなく、長野市の未来に担う子どもたちへの明確なメッセージとして、市独自の条例制定は不可欠だと考えます。
今日、児童虐待、育児放棄、いじめ、引きこもり、不登校、そして自殺など、子どもたちを取り巻く環境がますます厳しくなっています。自己肯定感の低下がその根底にある課題でしょう。自己肯定感は主体的に動く活動意欲と相関関係にあります。子どもの権利条例は、自己肯定感を高めるためにも、子ども自身の意思で、能動的に活動するのを手助けしていく条例です。
次の質問の機会に取り上げるつもりです。
➡長野市議会の「録画中継」サイトに質問がアップされていますので、ご覧ください。 http://www.nagano-city.stream.jfit.co.jp/?tpl=play_vod&inquiry_id=2604