9月市議会定例会で「LGBTなど性の多様性を認め尊重する人権施策の実施に関する請願」が全会一致で採択されことは、これまでも複数回にわたり報告してきました。
11月6日の総務委員会・協議会で、9月市議会におけるLGBT、セクシュアルマイノリティの人権施策の展開を求める請願の全会一致での採択を受けた市の取り組み状況を問いました。
12月市議会定例会には、公式に請願採択を踏まえた市の取り組み方針等が示されることになります。
LGBTに関するアンケート実施、広報ながの12月号に特集掲載へ
市は、9月下旬から10月にかけてLGBTに対するイメージやLGBTの人たちにとって必要なことなどを聞くアンケートに取り組んでいることを明らかにするとともに、『広報ながの』12月号にLGBTの人権啓発に関する特集を掲載するとしました。
アンケートの詳細はまだ把握できていません。
LGBTに関する専門相談窓口の開設はについては、まずは現在の人権相談員にLGBTに関する研修に取り組み、相談体制を築きたいとのレベルにとどまりました。12月議会までには、もう少し肉付けしてもらいたいものです。
男女の性別表記…全庁的に調査中
また、性別表記の廃止に向けた問題意識と取り組み状況を問うたところ、「長野市としては要綱などがなく担当課に任せている状況にある」とした上で、「性別表記について全庁的に照会中」であるとしました。
実態を把握したうえで、性の多様性の受容をいかなる視点で徹底していくのか、課題はこれからです。
とはいえ、9月議会以降、少しずつですが、LGBTの人権に光をあてる取り組みが進められていることは評価したいと思います。
「当事者の声、想いが把握できない」とするのだが…
その一方で、担当課である「人権・男女共同参画課」課長は、「当事者の声を聴きながら施策の検討を図りたいと考えているが、なかなか当事者の生の声を掘り起こせないことが課題」とします。
「そりゃ、そうでしょう」と思いながら答弁を聞きました。
LGBTである人がカミングアウトできるような社会環境にないのですから。
全国的な取り組み状況を踏まえつつ、セクシュアルマイノリティであるLGBTの皆さんが声をあげられるような社会環境をつくるための施策展開が必要なのです。性の多様性を受容し尊重する人権感覚に支えられた豊かな想像力をもって行政が施策展開をリードすべき課題であると考えます。
長野市人権を尊び差別のない明るい長野市を築く条例に基づき設置されている「人権を尊び差別のない明るい長野市を築く審議会」において、専門分科会などを設け、専門的知見による施策の取りまとめを検討していくことも一つの手立てでしょう。
市内、県内では、LGBTに関する請願の採択と軌を一にしながら様々な取り組みが進んでいます。
いくつか紹介したいと思います。
更北中学校…先生が「LGBT ALLY」のピンバッジを着用
請願の採択後に、市内更北中学校の島田一生先生から連絡をいただき懇談しました。
人権同和教育などに取り組んできた先生は、自身で「LGBT ALLY」のピンバッヂを作成し、先生方に呼びかけ着用する取り組みを始めているとのことでした。
ALLYとは協力者、味方という意味です。LGBTに対する理解者でありたいとのメッセージを込めての取り組みです。
「先生、そのバッヂは何?」との生徒の問いかけから、LGBTへの理解を深めるきっかけにしたいのだと先生は強調されていました。
こうした取り組みが教育委員会を通じて広がることを期待したいと考えます。
市内七二会小中学校…LGBT当事者を招き講演会
11月8日付の信濃毎日新聞に、七二会小中の生徒を対象にしたLGBT当事者の話を聴く講演会の様子が報じられました。
LGBT理解深めて 長野市七二会小・中 松本の当事者が語る 「隣にいる―想像力持って」【11/8信毎】
長野市七二会中学校で7日、体は女性、心は男性でも女性でもないと感じている「X(エックス)ジェンダー」の当事者(35)=松本市=が講演した。性的少数者(LGBT)の声を直接聞き、性の多様性への理解を促そうと同中に隣接する七二会小学校が企画。小学5、6年と中学生計40人余が聞いた。
当事者は自身の思春期に、自然と異性を好きにならないことに悩み、それを誰にも打ち明けられず苦しんだと説明。大学時代、Xジェンダーだと仲のいい友人にカミングアウト(告白)して受け入れてもらえてうれしかった一方、別の友人とはそれを境に縁遠くなった―と振り返った。
LGBTは「社会に左利きの人と同じぐらいいる」と指摘。「性的少数者がいつも隣にいるかもしれないと、想像力を持ってほしい」と呼び掛けた。
この当事者は、教職員対象に講演した経験はあるものの、子ども向けに話すのは初めて。取材に「自分が子どもの時にこうした機会はなく、社会に仲間がいるんだと気付くまでに孤独でつらかった」とし、小中学生のうちに理解を深める意義を語った。
同小6年の太田安香(あこ)さん(11)は「同性を好きになるのはその人の自由」と気付いたといい、「LGBTの人が困っていたら助けてあげたい」と話していた。
塩尻市議会…性の多様性学ぶ研修会
6日付の紙面では、塩尻市議会が性の多様性を学ぶ研修会の取り組みも報じられています。
塩尻市議や職員、性の多様性学ぶ 市役所で研修会【11/6信毎】
塩尻市議会は5日、「性の多様性」をテーマとした議員研修会を市役所で開いた。議員と市職員計40人余が参加。女性学やジェンダー論が専門で、慶応大などで非常勤講師を務める西山千恵子さん(60)=東京=が性的少数者(LGBT)などについて解説し、自治体での課題を話した。
西山さんは「同性愛者と、(心と体の性が一致しない)性同一性障害は区別して考えないと誤解が生まれる」と強調。スカートの着用や化粧など、女性らしいとされる行動を拒否する女性が必ずしも自らを男性だと思っているわけではない、とも説明した。
全国183自治体で印鑑登録証明書の性別欄を削除するなど、各種書類から性別の欄を廃止する動きがあることを紹介。ただ、男女の不平等を把握する上で必要な統計が取れなくなる―とも指摘し、廃止に当たっては慎重な検討が必要だと述べた。
できること、しなければならないことはたくさんあります。
同性パートナーシップ認証制度の創設に向け、一つ一つステップをつくっていきたいと考えます。