長野市は5月29日の政策説明会で、飯綱高原スキー場の運営から撤退、グリーンシーズンに特化し飯綱高原観光施設を再整備する方針を示しました。
信濃毎日新聞でも大きく取り上げられたニュースです。
グリーンシーズンに特化した飯綱高原一帯の再整備方針、4つのポイント
飯綱高原観光施設等の再整備のポイントは4点。【掲載資料は市の説明資料より抜粋】
➊市営スキー場としての運営は長くとも2019年度シーズンまでとし、H30(2018)年度中に民間譲渡・民営化の道を探りつつ、民間譲渡が困難な場合は閉鎖・廃止とする。
➋拠点施設として新たに「(仮称)山の駅・飯綱高原」を整備、地域・観光振興を図る。
➌飯綱高原キャンプ場や小天狗の森など既存施設のリニューアルを図る。
➍大座法師池や大谷地湿原の景観保全、飯綱山登山道の整備など地域資源の保全・活用を図る。
飯綱高原スキー場は市街地からのアクセスの良さからファミリースキー場として愛され、98年の長野冬季五輪ではフリースタイル・モーグル競技の会場ともなった施設です。
私も子どもが小さい頃はよく訪れた思い出深いスキー場です。飯綱町のいいづなリゾートスキー場もよく訪れましたけどね…。
ウィンターシーズン来訪者は全体の僅か15%、スキー場に毎年約1億円を補填
飯綱高原への来訪者約100万人のうち、グリーンシーズン(4月~10月)は85%、ウィンターシーズン(11月~3月)は15%で、既にグリーンシーズンの利用者がほとんどという状況となっています。数字で示されると「そこまでか!」との印象です。
長野市開発公社に委託している飯綱高原スキー場は、H28年度の利用者数が31,224人で、全国的なスキー人口の減少と雪不足による利用者の減により、経営状態は毎年赤字、H8年度からH28年度までの21年間の市一般会計からの繰出金は29億2,600万円余にのぼります。リフト等の維持管理費が利用者に追いつかず、赤字を市の一般財源から補填する状況が長く続いています。
地元検討会の提案を踏まえ方針化
市では、芋生地区住自協や飯綱高原観光協会、飯綱高原スキー場運営協議会などで作られた「飯綱高原観光施設活用検討会」(H28年10月設立)からの「ウィンターシーズンからグリーンシーズンへの転換」を内容とする提案を踏まえ、今後の在り方を方針化したものです。
改革ネット…H30年度予算要望で「スキー場廃止」を提言
昨年11月、改革ネットとしてのH30年度の予算要望において、戸隠・飯綱スキー場の今後について「引き続き一般会計に頼らない経営体質の向上に努めること。また、グリーンシーズンを含む一年を通しての観光資源・観光拠点として活用されるよう、早急に取り組むこと」を求めるとともに、飯綱高原一帯について「健康増進スポーツゾーンとして多様な観光資源が内在することから、地元住民と連携した上で、総合スポーツ公園として整備すること。また、飯綱スキー場については、地球温暖化による積雪量の減少を踏まえ、関係者と十分協議した上で廃止も含めて検討すること」を強く提言してきました。
また、この間、議会としても、「厳しい経営状況が続いていることから、地元住民等との検討を進める上では、営業縮小や廃止なども含め多角的検討を行い、今後の在り方について早急に検討を求める」(H29年12月議会・決算特別委員会委員長報告)と市側の対応を要請してきています。
ようやく、一定の方向性が示されたことになります。
民間譲渡の道険し…廃止への軟着陸
市は、まずは民間譲渡の道を探りたいとしていますが、私は極めて困難であると受け止めています。
地元の皆さんの期待をつなぐ想いには反しますが、ごめんなさい…。
因みに、隣接する飯綱リゾートスキー場について飯綱町は、2019年度以降の営業撤退方針を示し、民間譲渡の道を探っています。今年4月段階では「買収や経営に興味を示している企業が3社あり、町はいずれかと契約して、2018年度以降も営業できる可能性が高まっている」との見通しが町長から示されたと伝えられています。
その後の状況は未確認です。
飯綱高原スキー場といいづなリゾートスキー場は、経営難という意味では同じ環境にあります。
しかし、主要ゲレンデが一本の飯綱リゾートに比べ、飯綱高原は主要ゲレンデ3本で南斜面というインフラそのものの違いがありますから、そう簡単に引き受け手が現れるとは考えにくい状況にあると思われます。
民間譲渡先の募集は、スキー場廃止に軟着陸するためのプロセスという理解をしている一人です。
「山の駅」H33年4月オープンめざし、飯綱高原一帯の再整備でサウンディング型市場調査
再整備の「目玉」とされる「山の駅」は、グリーンシーズンの新たな産業と観光の拠点として、大座法師池周辺のバードライン沿い(キャンプ場周辺)に、地元農産物の直売所や観光情報の発信提供、交流広場、休憩所などを備えた施設として整備、H33年4月オープンをめざすとします。
そのため、「山の駅」の整備方針を含め、高原一帯のグリーンシーズンを中心とした高原一帯の在り方について、民間のアイデアを募るサウンディング型市場調査をH30年度に実施するとしました。
グリーンシーズンの拠点としての飯綱高原の再整備には大いに期待するところです。
私的にはキャンプ場の整備の在り方がカギであると考えます。
キャンピング愛好者としては、ディーキャンプ利用の整備、バンガロー等のリニューアル、グランピングの導入など、ファミリーユースに応えられる環境整備を進めることが重要だと思います。
「山の駅」と連動させ、地産地消のキャンピングが「売り」にできないかと思います。
いずれにせよ、民間譲渡先の出現や市場調査の動向を注視したいと考えます。
並行して問われる戸隠スキー場の今後の在り方
戸隠スキー場もまた、経営状況は厳しいものとなっています。
経営健全化を図るため、市からの借入金10億円の負債を帳消しにしたものの、毎年、一般財源から1億円余を補填し続けています。経営健全化が至上命題となっています。
標高1200~1750mに位置する戸隠スキー場は、雪質が良く、ここ数年は10万人の利用者となっています。
私は、市営戸隠スキー場の維持はまだ必要と考えています。しかし、ゲレンデ・リフト施設の大胆な見直しによる経営再建は不可欠です。
戸隠高原一帯も、戸隠キャンプ場の再整備によるグリーンシーズン対策が進められています。
飯綱高原スキー場からの撤退、飯綱高原一帯の再整備に伴い、戸隠スキー場と合わせ、戸隠高原との一体的な来訪を可能とする振興策も考える必要があります。
6月議会の一つの論点です。