市内小中学校のエアコン整備…民間のアイデア募り、2021年度までに完了

市内小中学校のエアコン整備について、3月議会で市教育委員会は、私の質問に対し「できるだけ早期に経済的かつ効率的な整備に向けて工夫し、現市長任期中(H33年度)の完了を目指したい」と答弁、初めて目標時限を明確にしてきました。

【関連】180309エアコン整備…「現市長任期中の完了めざす」【3月議会の質問より➌】

小中学校クール化プロジェクト…民間と知恵絞り、コスト削減へ

市教委は、「長野市立小中学校クール化プロジェクト」を立ち上げ、5月8日の議会・政策説明会で、最適な整備方針を決定するため、サウンディング型市場調査に取り組むことを明らかにするとともに、改めて「H33年度(2021)を機器整備完了目標年」とする整備計画を示しました。

➡「長野市立小中学校クール化プロジェクト」…市立小中学校の教室で、冷房設備整備を進めるとともに、既設の天井扇を活用しつつ、ソフト面からも夏季の室温適正化を図る取り組み。

対象教室は、小学校54校、中学校24校(市立長野中は除く、整備済み)の普通教室や音楽室・図書室などの特別教室など1,595室となります。

市は他自治体の導入事例などを参考に整備に約40億円という試算を発表してきていますが、整備費やランニングコストの大幅縮減を目指したいとしています。

5月9日の信濃毎日新聞は、一面トップで「長野の小中校、全教室に冷房」と報じました。
私的には3月段階で報道すべきところであったと思いますが…。

文部科学省が実施した全国の公立小中高校の冷房設置状況調査(昨年4月1日現在)によると、長野県内の小中学校の設置率は8.6%、高校は13.7%にとどまり、全国平均(小中学校41.7%、高校49.6%)を大幅に下回っている状況です。(信濃毎日新聞より)

「サウンディング型市場調査」とは?

「サウンディング」という言葉はもともと地質調査で使われるものなんだそうです。

「サウンディング型市場調査」は、事業案件の内容・公募条件等を決定する前段階で、公募により民間事業者の意向調査・直接対話を行い、当該案件のポテンシャルを最大限に高めるための諸条件の整理を行うもので、このことにより、民間事業者にとっても自らのノウハウと創意工夫を事業に反映し、参入しやすい環境(公募条件)とすることができるとされています。

民間事業者から広く意見や提案を求め、対話を通して市場性の有無や活用アイデアを把握しようというのがポイントです。

PPP(Public Private Partnership:公民連携)事業における一つの手法として、自治体での取り組みが広がっています。全国的には、公共施設建設あるいは跡地利用などの検討手法が一般的で、物品購入整備では「初めて」かもしれません。

長野市では初の試みとなります。

市の整備手法案に民間の意見求める

市が現在検討している整備手法は、単相200Vのハイパワー家庭用エアコンを整備するもので、物品購入とし、機器の稼働に必要な電気設備工事は別途発注し、H33年度までの整備完了(できる限り前倒し)をめざすというものです。

サウンディング型市場調査により、PFI方式やリース方式なども検討し、事業費を最小にする知恵を絞ることになります。

また、温暖化対策の観点から、ソフト的な取り組みのアイデアも取り入れたいとしています。

6月1日に事業者を対象とした事前説明会を行い、7月上旬に参加する事業者との対話を行ったうえで、9月ころを目途に対話の実施結果概要を公表する予定です。

小中学校クール化プロジェクトに関するサウンディング型市場調査実施要領

市長…「山間部の学校でも必要か、検討」「できるだけコスト抑える」

5月9日の定例記者会見で市長は、クール化プロジェクトについて「児童・生徒、先生も含めて、夏の暑さは厳しい状況である。全部の小中学校(の教室に冷房設備を導入する)ということではなく、全て調査をして、山間部の学校にも必要かということも含めて、必要の可否の調査をして検討していきたい。ただ、冷房は基本的には体に良くない。快適な状況でよい。寒い状況までする必要はない。(導入費用は)総額だと相当な金額になり、市の財政を圧迫していくことにもなるので、その兼ね合いも含めて考えていく」と述べるとともに、「担当が(導入例では)40億円、50億円と言ったが、とてもそんな金額は出せない。このサウンディング型市場調査をやることで、できるだけコストを抑えて、3分の1、4分の1になるような気持ちでやっていく」と強調しています。

コストを最小に抑えることは不可欠です。「緑のカーテン」などの組織的な取り組みによる温暖化対策も必要です。

鍋屋田小、吉田小、柳町中など3校でエアコン試験設置し検証へ

市教委では、今年度、各学校に温湿度計を設置し環境調査を行うとともに、上記3校の教室で単相200ボルトの機器を試験的に設置して、児童生徒や教職員の声などデータを収集、検証していくことしています。

説明会の折、「なぜ、市街地の学校のみなのか」との質問に、市教委は、「中山間地域の学校は、子どもプラザにエアコンを整備(今年度16施設で)することから、これにより声やデータを集約したい」としました。

すべての子どもたちに快適な教育環境を

私自身はエアコン整備の早期実現を求める立場ですが、エアコンによる温暖化の助長という問題も考える必要がありますし、子どもたちに環境変化に順応できる身体作りも必要であると考えています。したがって過度な環境整備は不要ですし、コストとの見合いも不可欠です。

記者会見の中で、教育委員会は「夏休みを延ばして冬休みを縮める考え方についても検討が必要」と答えていますが、こうした発想も必要でしょう。

今後、初めての試みとなる「サウンディング型市場調査」の効果を見極めるとともに、温湿度調査結果を踏まえつつも、すべての学校ですべての子どもたちに快適な教育環境が均等に保証されるようチェックしていきたいと考えます。


【参考】信濃毎日新聞5月9日付
◆長野の小中校全教室に冷房 市教委、1600室に整備検討 コスト抑制策、民間公募
 長野市教育委員会が市立小中学校の全教室への冷房整備を検討していることが8日、分かった。早ければ2021年度までに整備したい考え。対象は約1600室に上り、導入コストが課題となることから、本年度は整備方式や冷房方法について民間事業者にアイデアを募り、コスト抑制策を探る。近年、真夏日が増加傾向で、市議会などから早期整備を求める声が相次いでいた。
 県教委によると、県内では学校数の少ない一部町村で全教室への導入例があるが、市立小中学校の全教室に冷房を設置した市はこれまでない。
 長野市の小中学校の冷房設備はこれまで原則、保健室に限り、普通教室への設置は昨春開校した市立長野中などの計10室ほどだった。残り約1300室の普通教室は未整備で、特別教室や職員室も含めると計約1600室に冷房がない状況だ。
 市教委は「地域によって不公平にならないよう、できるだけ全校で一斉に整備したい」としている。
 約1400室で一斉整備した埼玉県越谷市では導入費用が50億円近くに上っており、長野市教委は、コスト抑制に向けて「あらゆる手法を検討する必要がある」と判断。民間事業者と対話しながら事業案を練る「サウンディング型市場調査」を実施する。公共施設整備のコスト抑制のため、全国の自治体で急速に広まっており、今月11日から事業者の提案を募る。
 整備方式については、民間事業者が設置から維持管理までを行い、市が使用料を払う「PFI方式」や、リース方式も選択肢に想定。市教委によると、いずれも県外で学校の冷房一斉整備への導入例があるとし、市が直接整備する通常方式より「市の費用負担を複数年に分散させたり、減らしたりできる可能性がある」とみている。
 文部科学省が実施した全国の公立小中高校の冷房設置状況調査(昨年4月1日現在)によると、長野県内の小中学校の設置率は8・6%、高校は13・7%にとどまり、全国平均(小中学校41・7%、高校49・6%)を大幅に下回っている。

【参考】信濃毎日新聞5月10日付
◆教室冷房「中山間地は慎重に」 長野市長、小中学校への整備検討表明 市教委「緑のカーテンも一案」
 長野市の加藤久雄市長は9日の定例記者会見で、市立小中学校の全教室への冷房整備の検討を進める「小中学校クール化プロジェクト」を始めると発表した。整備済みの市立長野中を除く78小中学校の計約1600教室を対象とするが、標高の高い中山間地域にある学校などでは、冷房の必要性を慎重に見極める考えを示した。市教育委員会は、植物で日差しを遮る「緑のカーテン」といった方策も含め、さまざまな手法を民間から募り、暑さ対策をする方針だ。
 早ければ2021年度までに対策を実施。加藤市長は「(教室を)冷やしすぎると体に良くない」とも述べ、各校の夏場の室温などを踏まえて検討するとした。市教委によると、長野市と同規模で冷房を一斉導入した関東地方などの市の事例だと初期費用は40億~50億円。市長は「(同規模の額は)とても出せない。できるだけコストは下げたい」と強調した。
 市教委は整備に向け、民間事業者との対話を通じて事業案を練る「サウンディング型市場調査」を本年度実施する。市教委の担当者は「地域によってはエアコンが不要な学校はあり得る」と説明。植物による対策なども「事業者の提案を基に検討したい」としている。

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