長野市では、健康増進法と食育基本法に基づく「第三次長野市健康増進・食育推進計画」=「ながの健やかプラン21」を策定し、市民の健康増進に取り組んでいます。
こうした「健康づくり計画」を背骨にして、市行政の各分野の全ての計画と連動させ、健康づくりを横ぐしにして一体的・総合的な政策を展開、市民の健康づくり意識を高めていくために「健康づくり推進条例」の制定を提案しました。
健康長寿・健康増進に向け、市役所と市民の健康づくり意識を高める健康づくり推進条例の制定を
市長自身が「健康をテーマにした新たなまちづくりを進めたい」としていることから、会派で視察した宇部市の「健康づくり推進条例」の取り組みを参考に、健康寿命の延伸、がん検診受診率の向上による早期発見・早期治療、糖尿病予防をはじめとする生活習慣病対策、食の改善などをはじめ、健康をテーマにしたまちづくりを進めるスタートラインとして、健康づくりと人づくり、まちづくりを一体的に推進する包括的な「健康づくり推進条例」の制定を提案しました。
会派で視察した山口県宇部市の取り組みに学び、健康増進を背骨にした政策・施策展開を実現したいとの思いからです。
➡山口県宇部市「健康づくり推進条例」のページ
山口県宇部市では、市民全体の健康度を高めるためには、個人の努力だけではなく、社会共通の課題として個人を支える環境づくりを進めることが必要であるとし、「健康づくり」と「まちづくり」「ひとづくり」を一体化させ、「健康文化のあるまちづくり」を推進しています。
さらに、「健幸長寿のまち宇部」(健康の「康」が「幸」であることもミソ)を掲げ「宇部市健康都市宣言」を行っています。
➡宇部市健康都市宣言
「健『幸』長寿」の考え方も視野に
因みに、「健『幸』長寿」の考え方は、「健幸=健康で幸せ(身体面の健康だけでなく、人々が生きがいを感じ、安心安全で豊かな生活を送れること)」づくりへの支援が求められているとする筑波大学の研究=「スマートウェルネスシティ」構想によるもので、この考えを取り入れた取り組みを進める自治体が増え始めています。
健康づくりをまちづくりの柱に据えて政策に横ぐしを
宇部市の担当者は、条例を制定することにより、健康長寿のまちづくりの推進体制がより明確となり、「健康づくり」「まちづくり」「ひとづくり」を一体化させた具体的な方策を健康づくり計画に盛り込むことができたとします。
「宇部市健康づくり計画」を背骨にして、高齢者福祉計画や障害福祉プラン、子育てプラン、スポーツ振興計画、教育振興基本計画などの個別計画との連動を明確に位置づけている点が大きな特徴です。
健康づくりが全ての政策の横ぐしとして貫かれているということでしょう。
条例によって、健康づくりを行政・市民の共通の統一目標にし、全庁横断的な施策展開が具現化できるということであり、市民の健康づくり意識を高めることに有効に作用することがポイントです。
保健福祉部長…「健康づくりに向け部局横断的な体制を構築、条例と同様の効果」
保健福祉部長は「健康づくりをキーワードに、庁内の関係20課により、市健康増進・食育推進委員会を組織し、各分野を網羅する部局横断的な体制を構築し、計画の進捗状況の把握や施策の見直しを行っていくことから、提案の条例制定と同様の効果が得られている」とし、あえて条例は必要としない考え方を示しました。
そのうえで、「市健康増進・職員推進審議会において、進捗状況に対する評価・検証を行い、実効性の担保を図り、健康寿命のさらなる延伸をめざし取り組む」と答弁しました。
計画を実行していく上で全庁横断的な推進体制は必要不可欠ですが、やはり健康づくりの条例を制定すること、さらに宇部市のように「健康都市宣言」をセットで行うことで、市役所の皆さんの意識が変わり、市民の意識も大きく変わっていく効果を見据えて対応していくことが重要です。
スマートウェルネスシティの考え方の研究も含め、さらに検討していくことを求めました。
宇部市のがん検診受診率向上の取り組みは導入も検討
宇部市では、条例と計画のもとに、40歳以上の市民の健康づくりイベントや講座等への参加や、がん検診の受診に対してポイントを付与し、そのポイントを換金または寄付できる「はつらつポイント制度」が実施されています。さらに、世界中で実施されている住民参加型のスポーツイベントで自治体同士が参加率を競い合う「スポーツチャレンジデー」など、健康づくりに向けた多彩な取り組みを進めています。
また、がん検診受診率の向上に向けて、無料クーポン券の送付にあたり、市の通常の封筒で郵送していましたが、中身の確認もしてもらえずにそのままゴミ箱へということも多かったことから、封筒のデザインに「健康でいてほしいあなたへの特別なプレゼント」をあしらう少しの工夫でしっかり中身を確認してもらい受診率の向上につなげる取り組みが進められています。
部長は「導入できる部分は検討したい」と答弁しました。
関心をそそるちょっとした工夫が受診率向上につながります。どんどん取り入れてもらいたいものです。
健康づくりをキーワードにしたまちづくりに向けて引き続き提言へ
条例は自治体の法律です。特に政策条例については市理事者の側に「条例には縛られたくない。計画の策定と実行で十分対応できる」との認識があるのは事実。このハードルは結構高いものがありますが、健康づくりをキーワードにしたまちづくりの推進に向け、なお提案・提言を続けていきたいと考えます。