松代大本営追悼碑建立22周年

8月10日、松代大本営朝鮮人犠牲者追悼平和祈念碑の建立22周年を記念する集いを象山地下壕入り口前で催しました。

追悼の言葉をのべる日朝県民会議会長の村山智彦氏

追悼の言葉をのべる日朝県民会議会長の村山智彦氏

松代大本営追悼碑を守る会(会長=塩入隆・県短大名誉教授)が主催するもので、県下から60人の皆さんに集まっていただき、犠牲者に黙とうを捧げ献花を行いました。

今年も、朝鮮小中級学校(松本市)の女子中学生の皆さんに参加いただきました。
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22周年の集いは、会長が体調を崩されたため、急遽、事務局次長を務める私が主催者代表あいさつをすることに…。
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私自身は、松代大本営地下壕工事における朝鮮人強制連行・強制労働の実態調査に関わるとともに保存・公開運動を経て、追悼碑建立運動にも事務局として携わってきています。

何とも力不足なのですが、次のような挨拶をさせていただきました。

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戦後50年の節目の年、1995年8月10日に松代大本営工事朝鮮人犠牲者追悼平和祈念碑を建立してから22年の歳月を経ました。

ここに、改めて、国策により強制連行・強制労働を強いられ、松代大本営工事で犠牲となった朝鮮人労働者に深く哀悼の意を表するとともに、過去の侵略と加害の歴史に向き合い、二度と同じ過ちを繰り返さないことを決意し合いたいと思います。

戦後72年、日本国憲法施行70年を迎えた今日、侵略と加害の歴史を真摯に顧みることなく、戦後史を大転換させる暴挙が続いています。

日本国憲法が禁ずる集団的自衛権を行使する安保法制=戦争法の成立、内心の自由を侵害し一億総監視社会をつくる「共謀罪」の成立、教育勅語の復活を図ろうとする動き、そしてさらには、戦力不保持、交戦権の放棄を規定した憲法第9条の明文改憲を目論むまでに至っています。平和国家・日本の戦後の歩みを全否定するかのような動きが顕在化しています。

さらに、在日の皆さんに対するヘイトスピーチが横行し、排外主義的な潮流が顕在化してきていることも看過できません。

被曝72年目の年に、国連では画期的な核兵器禁止条約が採択されました。この条約に反対し続ける日本政府の態度は、世界で唯一の戦争被爆国として果たすべき責務を放棄するもので、許されざる愚かな行為と言わなければなりません。

一方、朝鮮半島、北東アジアをめぐる緊張が強まっています。憂慮すべき事態となっています。対話と協調により緊張の糸をほぐすことが喫緊に求められていると考えます。

1950年に勃発した朝鮮戦争は、1953年7月27日に休戦協定が結ばれましたが、未だ終結はしていない情況にあります。休戦協定から平和協定へ前進させることが歴史が求める方向性です。

「平和的な方法による朝鮮半島の検証可能な非核化」と「北東アジア地域の永続的な平和と安定のための共同の努力」を約束した2005年の「6カ国共同声明」に立ち戻り、徹底した外交努力によって対話を開始すべきであり、相互の主権尊重、平和共存、国交正常化の措置をとるとした合意に基づき、関係国に対し6ケ国協議の再開に力を尽くすことを求めたいと思います。

そして、日本政府は、米国に追随し危機を煽るのではなく、歴史に対する謙虚な姿勢をもって、2002年の「日朝平壌宣言」の精神に立ち返り、冷静に粘り強い交渉と対話をリードすべきであることを強調したいと思います。

さて、この松代大本営地下壕の歴史を巡り、長野市行政によって歴史の真実が捻じ曲げられてしまいました。地下壕の案内看板の表記を巡る問題です。「強制的に」動員されたという表現を一旦削除した上で、最終的に「必ずしも全てが強制的ではなかった」とする見解を併記するものに改ざんされました。強制連行・強制労働の歴史に眼を瞑る歴史修正主義の現れと言わなければなりません。

新しい説明文の撤回をはじめ、粘り強く、侵略の歴史、朝鮮人強制連行・強制労働の歴史を直視し、正しく後世に伝えていく努力を怠ってはならないと考えます。

また、長野市行政においては、この大本営地下壕跡は観光振興課が所管する観光施設と位置付けられています。戦争史跡と明確に位置づけ、教育委員会の所管のもとに、歴史教育における生きた教科書として保存・公開、活用するよう転換させていくことも重要な課題となっています。

松代大本営地下壕建設の歴史は、犠牲者の発掘をはじめとして未だ全容は十分に解明できていません。しかし、強制連行・強制労働の歴史は変えようのない真実です。歴史の見方、考え方を変えてはなりません。

この松代大本営地下壕跡、そして朝鮮人犠牲者追悼碑を通して、加害の歴史を直視し、真摯に学び合い、在日朝鮮人・韓国人の皆さんと手を携え、平和と共生の未来を創造していくことを心から願い、あいさつに代えたいと思います。

ありがとうございました。

実は、今日の記念の集いに合わせ、追悼碑を守る会で、史実を正確に伝えるため、見学者用パンフレットの発行を準備してきましたが、残念ながら間に合いませんでした。

発行できた段階でお知らせしたいと思います。

風化する戦争体験…若い世代の皆さんに松代大本営地下壕の歴史を正しく語り継ぎ、平和・共生の未来を創造していくツールにしたいものです。

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