26日、市議会6月定例会最終日、長野地区護憲連合などから提出されていた『「共謀罪」を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法の廃止を求める請願』を不採択とする総務委員会委員長報告に反対討論を行いました。
『「共謀罪」を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法の廃止を求める請願』を賛成少数で不採択とした総務委員会では、新友会所属議員から提出された議員発議の「改正組織的犯罪処罰法に関する意見書案」が議論の焦点となりました。
議論の末、改革ネットや共産党の議員の補強意見を半ば取り入れる形で全員一致でまとめられ、総務委員会委員長が議案として本会議に提出することになりました。
委員会において全員賛成で採択した「意見書案」は、本会議でも全会一致で採択されることを「常」としています。
欠陥だらけの悪法とはいえ、法が成立し7月に施行される段階では、法の運用の在り方がポイントとなります。
法の「丁寧な説明」は当たり前のことで、最低限、「慎重な運用」が求められるところです。
しかしながら、意見書案は「法の適切な運用」を求める内容であることから、会派内で改めて協議し、結果として、総務委員会・全会一致を尊重せざるを得ない事情も勘案し、残念ながら賛否は分かれることになりました。
会派内では、反対3、賛成2、退席1。全体では、反対9、賛成23、退席2(議長と欠席議員1人を除く34人中)で賛成多数で可決されました。
以下、私の反対討論です。実際の討論は、アドリブも入りましたが…。《》は後付けの見出しです。
16番、改革ながの市民ネットの布目裕喜雄です。
請願第16号『共謀罪と同趣旨のテロ等組織犯罪準備罪を創設した組織犯罪処罰法の廃止を求める請願』及び同趣旨の請願第15号『改正組織犯罪処罰法(共謀罪)の廃止を求める請願』を不採択すべきものとした総務委員会委員長報告に反対の立場で討論します。
《改正組織犯罪処罰法の問題点》
安倍政権は「共謀罪」を創設する組織犯罪処罰法の改正法案を6月15日早朝、徹夜明けの参議院本会議で強行採決して成立させました。
しかも、法務委員会の審査を打ち切り、“禁じ手”である「中間報告」という議会手法で、本会議採決に持ち込んだものです。ありえない議会運営です。
良識の府=参議院、議会制民主主義は既に「死語」と言わざるを得ません!
”一強多弱”とはいえ、数に胡坐をかく権力は腐敗する…、腐敗しきった権力構造を見せつけられていると感じるのは私一人ではないはずです。
「共謀罪」の成立により、「計画」「準備行為」の以前から権力による捜査が恣意的に行われ、内心の自由が侵害される監視社会が作り出されることになります。
政府に異議申し立てをする市民運動弾圧法として作用することは間違いありません。
安倍政権は、テロ対策やオリンピックを口実としてきましたが、実行行為を罰する我が国刑法の大原則を逸脱すること、刑罰の枠組みを一気に広げる「組織的犯罪集団」や「準備行為」の定義が曖昧で一般市民が捜査対象になる恐れがあること、そして市民運動において萎縮効果をもたらすこと、計画段階の動きを把握するため捜査当局による監視が拡大する懸念が拭えないこと、テロとは無関係と思われる犯罪も対象に多数含まれ本当にテロ対策になり得るのか疑わしいこと、公権力がプライバシーに踏み入り内心の自由や言論・表現の自由を侵す恐れが大きいこと等々、法案が持つ根源的な懸念や疑問は、参院審議を通じても何ら解消されないどころか深まるばかりでした。
《不採択すべきとの意見に対する反論》
ここで、委員会の審査において、不採択すべきものとされた意見に逐次反論します。
一つ、今まで廃案となった共謀罪とは違うという点。
確かに、改正法では共謀罪の取り締まり対象を277の犯罪に限定し、かつ、成立要件に「合意」に加えて実行のための「準備行為」が盛り込まれました。このことから、処罰対象は「組織的犯罪集団」に限定され、「一般人は対象にならない」と強弁してきました。
しかし、国会では「一般人は捜査対象にならない」と繰り返す金田法相に対し、盛山法務副大臣が「対象にならないことはない」とこれを打ち消しました。さらに過去の「共謀罪」法案との比較に関して林刑事局長が「限定した適用対象の範囲は同じ」と明言し、犯罪対象は限定されたものの、過去廃案となった共謀罪と同様、「一般市民も対象になる」と認めました。そして、「準備行為」がなくても任意捜査は可能と認めているのです。
改正法には、一般人と組織的犯罪集団を区別する規定はありません。
警察が判断すれば一般人も組織的犯罪集団にされてしまいます。恣意的な運用の余地を際限なく残しているのです。
適用対象となる「合意」も全く規定がなく、SNSや目配せでも共謀が成立してしまうのです。
一億総監視社会に道を開き民主主義を窒息させかねない「共謀罪」法の危険な本質が浮き彫りになっているのではないですか。
二つ目。国際組織犯罪防止条約(TOC条約)が締結できなければ、テロ対策が進まないという点。
そもそも、この国際条約は麻薬などマフィアによる経済犯罪への対策として作られたもので、しかも「自国の国内法の原則に従って、必要な措置をとる」とされていますから、日本国憲法及び刑法の範囲で対応すればよいのです。
テロ対策では13の主要テロ関連国際条約があり、これらに対応する国内法の整備はすべて終わっています。
「テロ対策のために必要」ということが煽られてきましたが、法案の当初原案には「テロ」という言葉は一つも入っていませんでした。慌てて「テロリズム集団その他」を入れ込みましたが、テロ対策のための条文は一つもありません。むしろ、「その他」の規定により、適法な団体も犯罪集団とされる危険性を増幅させているといわなければなりません。
テロ対策は市民の恐怖心をあおる方便で口実に過ぎません。
狙いは政府に異議申し立てをする市民を監視することにあるのではないですか。
三つめ。「これから277の罪種とか、準備行為だとか、組織的犯罪集団、これらの定義の明確化については求めていかなければならない」とする点。
法案審議で最大の焦点となっていた「組織的犯罪集団」、「準備行為」等々の規定の定義が定かでないことを図らずも認めた発言で、委員長報告を聞いて唖然としました。
不採択とされる議員の皆さんは、法治国家において、定義が明確でない法律の立法・制定行為を是とされるのですか。
市議会において、定義が不明確な条項が規定される条例も「定義が不明確だけれど仕方ない」と考えられるのでしょうか。
法治国家における立憲主義を危うくし、地方議会における国会の立法の監視を放棄するに等しい行為なのではないですか。
以上のことから、委員長報告に反対するものです。
《総務委員会発議の意見書案に対する反対意見》
なお、総務委員会では共謀罪法の廃止を求める二つの請願を不採択とした上で、改正組織犯罪処罰法に関して、「国においては改正法の施行にあたり、国民の疑問や懸念を真摯に受け止め、今後も具体的かつ丁寧な説明を行い、国民の理解を深めるとともに適切に運用することを強く求める」意見書案を全会一致でまとめ、本日提案されています。
「丁寧な説明」に重点を置いた意見書案で、「適切な法運用」を求めるものです。
3時間に及んだ委員会の審査、意見書案のとりまとめについては、その労を多とするものですが、かかる改正法において「適切な運用」とは、条項の定義が不明確なままに運用されるということであり、一般市民も処罰の対象とする法律として作用し、警察の捜査権限を恣意的に際限なく拡大してしまうことを容認することに繋がります。
少なくとも、長野市議会は「法の慎重な運用」を求めるスタンスに立つべきところではないでしょうか。
以上のことから、全会一致でまとめられた「意見書案」についても、これは一議員の立場ということになりますが、賛同できないことを表明するものです。
特定秘密保護法、集団的自衛権の行使を認める安保法制の立法化、そして「共謀罪」、さらにその先には憲法9条の明文改憲が待ち受けることになります。
「戦争をする普通の国」は、人権が封殺され、民主主義が死滅する暗黒の社会なのでしょうか。
そうした社会をつくらないために、今一度、立ち止まって考え直そう!このことを心から訴えて反対討論とします。